【本紙独自調査(2)】主食の安定 国の責任-JAの米担当者の声2021年10月1日
コロナ禍で外食需要が大きく減少するなど、主食用米の過剰在庫によって米価が大幅に下落する懸念が高まっているなか、JAの米担当者なかには在庫の市場隔離を求めるなど国の責任を問う声は多い。「現場は限界。離農が怖い」など、産地の作況見込みなどとともに聞いた実態と政策要望など寄せられた声をまとめた。
【北海道】
○今の価格が維持されれば持ちこたえられるが、下落するようであれば離農も考えられる。
○生産者が食べられるようにしてほしい。
○直接交付金は問題ないが産地交付金は協力すればするほど足りなくなる。産地交付金と飼料用米の仕組みを考てほしい。
○生産者は本質的には主食用米を作りたい。しかし仕方が無いので協力する。交付金等で考えてほしい。
○第一次産業が国の基本。生産調整は北海道は守っている。本州も守ってほしい。
○このままだと過剰在庫になる。農家は規模拡大して大型機械を導入しているので、赤字経営になる危険がある。助成金などの仕組みを考えてほしい。
【東北】
○生産者が安定して生産できるようにしてほしい。このままだと離農が進む。
○概算金が低下している中で品質を向上し価格を維持したい。生産者を守るための施策を考えてほしい。
○これ以上作付転換が求められると生産者の生活が安定しなくなる。生産者が安心して農業に励む対策を考えてほしい。
○大豆と備蓄米に取り組んでいる。ある程度の主食用米は必要だ。
○管内は中山間地で面積が少ないため、個人農家については作付けを減らしたり、転換はできない。
○2年産米の在庫を抱えており置く場所が無い。その先の出口が整っていない状況。こうした状況を含めて方針を決めてほしい。
○飼料用米への転換は専用カントリーの活用。
○備蓄米、加工用米の契約数量はほぼ上限に達している。さらなる作付転換が必要となった場合は、飼料用米を中心に考えていかなければならない。
○守れる農家と守れない農家が出てくる。
○加工用米をコロナの影響で増やせない。飼料用米を増やすほかない。
【関東・東山】
○農協では生産者のコントロールができない。国策として生産調整を進めなくてはいけない。
○生産者の手取り確保のため転換を推進。今後は国の制度を使いながらにはなるがさらに推進する必要性を感じる。
○飼料用米で米価下落対応はできたと農家も感じている。今後は生産者の方からも自ら進めていくのでは。
○過剰だから転換を行うというよりは、田んぼにできない土地を他の作物に利用するという意味で転換をしている。
○自家用米が多いので極端に作付けを減らすことができないが、転換を進めている農家では園芸作やWCSへの転換をおこなっている。
○米だけではなく、持続可能な農業には価格の安定が重要。実務はJAで担うが、大元となる対応策や方針は国主導で出してほしい。
○自民党総裁選で岸田さんが政策として挙げていた備蓄米の市場隔離策など進めてほしい。
【北陸】
○国の産地交付金の上乗せを含め、米価が下落しているので、国の補助金のアップを期待する。一定数量の国の買い入れ(備蓄米)も期待したい。
○作付転換が求められている中、輸出用米の価格も下がってきている。
○3年産の計画が比較的に順調で、米価が下がる中、仮渡金は前年同額を実現できた。
○生産者への仮渡金が1500円~2000円下がった。コシヒカリで1万2200円、反収7.5俵なので9万1500円であれば、生産者は飼料用米に取り組んだ方が有利になる。
○生産調整に従わない農家が全国的にいる中で、これ以上不公平感が募れば、使命感を持って稲作に取り組んでいる農家も減少していく。
○JAは以前から多様な需要に応じた生産・販売に取り組んできた。主食用米の減少傾向と飼料用米の増加は需給関係に応じたもの。仮渡金については全農提示より多少高い。
○現状、米余りや米価低迷という報道が先行している気がする。
○本年度、仮渡金が下がったことにより、規模の大きい農家ほど影響が出ている。
○今年は、割り振りも決まり、作付も決定した後に、急に県の方から「多用途米(飼料用米)を増やしてほしい」と言われ、何とか対応はしたが勘弁してほしい。
○農家の手取りも下がってくるので、資金繰りが大変になり、融資の問題も出てくるだろう。
○麦・大豆への転換は、見通しが立たない中、投資等の問題もあり難しい。飼料用米への転換が中心になっていくだろう。
【東海】
○管内では、昨年11月から意向調査をし作付け転換の話はしたが主食米が多かった。国が、11月よりもう少し早く方向性を示してくれていたら、変わったかもしれない。
○加工・飼料用米への転換を農家に勧めている。収入を考えると応じざるを得ないので増えていく見込まれる。転作は達成しているが、さらに増やしていくとなると施設の増設等、準備が必要になってくる。
【近畿】
○米価下落の底が見えない。米価下落と一口に言っても、豊作による下落とコロナによる下落では意味合いが全く違う。
○関東の米が入ってきて安く売られる状況、結局本当に困るのは生産者。
○国が率先して抜本的な対策を取ってもらいたい。その場しのぎのことをしても毎年同じことが起きる。
○転作に取り組まない地域には国がペナルティを課すなりしてほしい。他県(特に関東)産米がこちらに入ってきて安く売られる現状には困っている。
○米どころではないため、作付転換の動きは特にない。ただ、生産者の高齢化が進み自然現象的に作付は減ってきている。耕作放棄地等を活用し、減少を食い止める活動等を模索している。
○飼料米や加工米への関心が高まっているように感じる。ただし、転換に対する補助金を含めても、1反当たりの収入は主食用米を作付け・販売した時と変わらないため、それならば主食用米を作った方が申請書類等の事務作業がないので楽だという意見もある。
○需給調整は「青刈りのすき込み」が良い。取組農家へは10a当たり7万円程を支給し2~3年程実施すれば調整可能では? 作物として生産してしまうと「保管」「流通」他、様々な面から「物」の取扱いに苦慮してしまい、結果として余分な傷口が拡がる。
【中国】
○地域再生協が指定する目標生産面積要件を満たしているものの、昨今の異常気象や鳥獣害の影響により特定の品種への作付けが進むことで需給バランスが崩れている状況が見られる。
○酒米の生産が盛んな地域だがコロナで日本酒需要の低迷による飼料用米等非主食用への転換を余儀なくされている。実需を含めた抜本的な体制の構築が課題だ。
○生産地の多数を占める小規模な自給・兼業農家に対し、主食用米からの転換を求めることは困難である。また、米価が下落傾向にあるなか「平均価格」を基準とする各制度の設計が限界を迎えていると感じている。
【四国】
○米価の低下、天候不順等で品質が悪化...、生産意欲の低下を懸念。
○補助の助成金について単年(短期)ではなく,長期的な対策が必要。
【九州】
○消費県なので米の作付面積は減少しなかった。現場農家は大豆への転換を受け入れるようだが、JAとして共乾施設等の運営に危惧している。
○ここ数年不作で主食用米がまだまだ必要。
○昨年は凶作であり、主食用米を落とすわけにはいかない。カントリーエレベーターを使用しておりロット数がなければ運営も難しい。
○飼料用米にはかなりシフトしている。麦、大豆の転作は麦は伸びないが、大豆は生育が順調、来年も繋げていきたい。
○人口減少で米の消費量が減っているので九州も収益性の高いものに切り替えていく流れになる。
○耕作放棄地や担い手不足に対する品目がない。中山間地なので対策は難しい。米価が10000円を切るという話があるが、基本的に政府は価格安定に対する施策ができていない。
○主食用米から加工米への転換をきちんと進めているが、東北等では転換が進んでいないのが不満。大きい面積を持っている県がきちんと取り組まないと、小さい面積の県がいくら頑張っても進まない。
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