日本酒の酒米新品種「百万石乃白」「Hyogo Sake 85」登場 生研支援センター2021年11月1日
農林水産業や食品産業の分野で新産業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供する生研支援センターは、研究成果として酒米新品種の「百万石乃白」と「Hyogo Sake 85」を紹介している。
「石川酒68 号」(左)の背丈は「山田錦」より低い(左)
新品種「百万石乃白」を使って造られた石川県の各種の新酒(提供:石川県)
「百万石乃白」と「Hyogo Sake 85」は、「山田錦」の優れた特性を備えながら短所を克服し、生産者が作りやすいように改良された画期的な酒米新品種。
「百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)」は、石川県で育成された「石川酒68 号」の愛称。兵庫県で育成された「山田錦」は精米歩合を上げやすく大吟醸酒に適した酒米として全国に知られるが、草丈が高くて倒れやすく、収穫時期が遅いため石川県全域では栽培できなかった。そこで、石川県農林総合研究センターは、大吟醸酒に適していながら、倒伏しにくい酒米品種の育成を始め、11年の歳月をかけて、「山田錦」の性質を引き継ぎながら、収穫時期が早いなど石川県全域で栽培できる「石川酒68号」を生み出した。その特性を調べたところ、酒の雑味に関係するタンパク質が他の酒米に比べて少なく、さらに玄米の表面をたくさん削り取っても割れにくいため、50%以下まで削った米を使う大吟醸酒に適していることもわかった。すでに24の醸造メーカーが「百万石乃白」を使った新しい酒を製造・販売し、国際コンクールで入賞する商品も誕生している。
左から山名酒造の「Hyogo Sake No.85」、香住鶴の「Hyogo Sake 85」、
西山酒造の「干支ラベル2021」(提供:兵庫県立農林水産技術総合センター)
一方、兵庫県立農林水産技術総合センターで育成された「Hyogo Sake 85」は、全国で初めてローマ字表記された品種。大きな特徴は、酒造りに適した米に必要とされる「心白」が多く占めていること。心白は米粒の中心部にある白っぽい塊で、この部分は荒いデンプン構造のため、米麹が育ちやすく、糖になりやすく、アルコール発酵がバランスよく進む。さらに、「Hyogo Sake 85」は、いもち病に強く、多収で、高温への耐性も備えている。この酒米で造られた酒は、バナナの香りといわれる「酢酸イソアミル」、リンゴの香りといわれる「カプロン酸エ
チル」などかぐわしい香気成分に富むこともわかっており、酸度が低く、上品な口当たりで、のどごしがよいのが特色。
2018 年から兵庫県内の10の酒造メーカーが「Hyogo Sake 85」を使った酒を続々と販売し、2019年から山名酒造は香港へ、香住鶴は中国へ輸出開始。兵庫県内の居酒屋やレストランでも人気。栽培面積も8ヘクタールと目標の7ヘクタールを超え、生産者も6人に増えている。同センターの杉本琢真研究員は「将来は西欧などにも輸出を展開し、酒米や日本酒のファンを世界中に増やしていきたい」と話している。
「Hyogo Sake 85」を収穫する兵庫県丹波市の生産者、農協職員ら(提供:兵庫県立農林水産技術総合センター)
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