【全農 22年産米生産・集荷・販売基本方針】(1)需要に応じた生産を徹底2022年3月11日
JA全農はこのほど2022(令和4)年産米生産・集荷・販売基本方針を決めた。22年産では喫緊の課題である需給改善に向け、国の支援も活用しながら販売環境の整備と主食用米からの作付け転換の取り組みが引き続き重要になる。また、将来に向けて事業環境の変化に対応し米穀事業の拡大を図るため、生産者への提案力強化や、より付加価値の高い米加工品の取り扱い強化などに重点的に取り組む。米穀生産集荷対策部の金森正幸部長へのインタビューをもとに概要をまとめた。
【米をめぐる状況】21年産集荷実績は増加
米穀生産集荷対策部
金森部長
20(令和2)年産主食用米の昨年10月末の販売実績は174万t(前年比96%)で11月以降の持ち越し在庫は42万tとなった。この持ち越し在庫量は前年の約2倍。この要因は19年産の持ち越し在庫の後ろ倒しの影響、集荷量の増加による販売計画の増加、そして需要減など。21(令和3)年産主食用米の作付面積は前年比▲6・3万haの130・3万haで生産量は前年比▲22万tの701万tとなった。
21年12月末の集荷実績は206万tで前年より1・5万t増えている。前年より生産量が減少するなか、JA段階での集荷積み上げの成果が出ている。
一方、販売数量は同12月末で前年並みの35万tとなっている。ただ、コロナ禍前の19年12月は約40万tであり、コロナ禍で落ち込んだ業務用需要が回復しないことなどが影響している。
農水省が公表した21年産米の12月相対取引価格は1万1858円/60キロ(税別・裸)と前年同月差▲1781円となった。市中価格は出来秋より上昇基調にあるものの、依然として相対販売基準価格を大幅に下回る水準となっている。
全農の米穀事業としては、21年産では引き続き実需者ニーズに基づき作付け提案・契約栽培を行う生産提案型事業を展開するとともに、実需者直接販売、買い取り販売のさらなる拡大に取り組んだ。その結果、多収米等の契約栽培は10・2万tと目標(10万t)を達成する見込みとなっている。また、実需者直接販売は取り扱い数量の70%、買い取り販売は同50%と目標を達成すべく取り組んでいる。
一方、過去最大規模の主食用からの作付け転換に取り組んだものの、コロナ禍による需要減少も影響して需給は大幅に緩和している。
こうした状況のなか22(令和4)年産に向けた課題は、▽国の支援を最大限活用した販売環境の整備▽22年産の需給改善に向けた主食用米以外への作付け転換推進の徹底▽米穀事業拡大に向けて、将来の環境変化をふまえた米穀事業戦略の着実な実践――の三つを挙げた。
【22年産米の重点取り組み事項】水田活用米作付けを
喫緊の課題となっている需給改善に向けて国の支援も活用しながら販売環境の整備に取り組む。20年産米の持ち越し在庫42万tは、国の周年事業(特別枠を含む)を活用して22~23米穀年度で長期計画的に販売する。
計画生産の取り組みでは、コロナ禍の影響で需要見通しは慎重に判断する必要があると考えており、前年産よりも▲10万t減も想定し、県ごとに中央会・行政・再生協議会と連携し、販売見通しや在庫状況もふまえて、適正な生産目標の設定と作付転換の推進を徹底する。
需要に応じた生産と中長期的な転換作物の定着に向けて、水田活用米穀と麦、大豆、高収益作物への作付転換を推進する。水田活用米穀による作付転換については、加工用米16・0万t、米粉用3・4万tなど連合会取り扱い目標数量を設定する。
子実用コーンで実証試験
新年度からは事業環境の変化に対応した新たな取り組みも行う。
継続的な水田フル活用への政策支援の確保や、生産者の経営安定の観点から、新規作物も含め用途・作物別のバランスをとりながら、地域実態や需要に応じた生産に取り組む必要がある。その一環として21年産から、水田リノベーション事業も活用して子実用トウモロコシと大豆の輪作の実証試験を行う。
子実用トウモロコシ栽培には大豆用の機械を使うことができ(追加装備は必要)、輪作による土壌改善で大豆の栽培環境改善の効果も期待される。輸入とうもろこし代替として国産飼料を増産することにもなり、たい肥の活用で循環型農業の実現にもつながる。
品種開発と種子確保
実需者ニーズをふまえた新品種(オーダーメイド米)の開発は21年産から産地試験を開始している。22年産も試験栽培、実需者評価を継続し、23年産での品種登録をめざす。また、多収品種等の種子の安定的な生産・供給体制の整備のため、種子産地や種子生産法人に対して出資も含めて関係強化に取り組む。
業務用向けの契約栽培の拡大には引き続き取り組む。特にJA低利用・未利用者も含め、大規模生産者には、業務用や非主食用実需者からの安定調達ニーズに基づく生産提案を行い、複数年契約など長期安定的な取引の拡大を図る。
生産者への提案にあたっては、米販売に限らず総合的な提案が必要になるため、TACや資材部門などとの連携した対応に取り組む。
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