飼料用米 一般品種への支援 段階的に引き下げ 26年産に6.5万円 農水省2022年12月7日
農林水産省は専用品種に限定するとしていた飼料用米への支援について、一般品種も引き続き支援対象とするものの、2024年産からは多収品種への転換が進むよう支援水準を段階的に引き下げる方針を明らかにした。
10aあたり、現行8万円の標準単価を26年産に6.5万円とする。
農水省は7日に開かれた自民党の農業基本政策検討委員会などの合同会議で説明した。
飼料用米への支援について2023年産は従来どおり多収品種、一般品種とも数量に応じて10a5.5万円~10.5万円を交付する。標準単収の場合は8万円となる。従来どおりとする理由は22年産の飼料用米多収品種は、すでに籾摺りが終わっており、種子への転用ができず、23年産で多収品種に限定すると種子が不足するため。
そのうえで農水省は2024(令和6)年産からは、早期に種子への転用を行うことで基本的に多収品種での生産が可能になるとして転換を進める方針で一般品種への支援水準を段階的に引き下げる。
24年産では、数量に応じて5.5万円~9.5万円/10a、標準単価を7.5万円とする。25年産では5.5万円~8.5万円/10a、標準単価を7万円とする。さらに26年産では5.5万円~7.5万円に引き下げ、標準単価を6.5万円とする。
令和5年産以降の飼料用米(一般品種)への支援について
飼料用米の生産は22年産では14.2万haで約76万tとなっている。20年産では7.1万haだったが、その後の2年間で倍増したが、主食用米の需給環境を改善するために、作付け後も一般品種を飼料用米へと仕向け転換し、主食用米を減らす「深掘り」に産地が取り組んだ結果だ。
22年産での作付け割合は多収品種は37%、一般品種は63%となっている。農水省も一般品種は主食用米の需給緩和局面で「緊急的な作付け転換の役割を果たしてきた」として引く続き支援対象とする判断をした。一般品種を支援の対象としたことで、現行基本計画で2030年に70万tとする生産努力目標はすでに達成している。
ただし、麦・大豆から取り組みやすい飼料用米へ転換するなど、これまでの産地づくりの努力が後退している面もあるとして、農水省は一般品種への支援水準は引き下げ、多収品種への転換を図ることにした。
多収品種の作付けを拡大には種子の確保が課題となる。農水省は来年産で収穫された多収品種の籾を「種子転用」して確保する考え。農水省は円滑な種子転用に必要な話し合いや、発芽試験にかかる経費などの支援を検討するとしている。
農水省は当初、多収品種への転換が進むよう23年産から一般品種への支援水準を標準単価6.5万円とする考えを示し、2日の自民党会合で説明した。しかし、議員からは「専用品種での作付けは正しい方向かもしれないが、現場で(生産調整の)深掘りしてきた農家の努力を壊せば理想的な飼料用米生産にはならない」との指摘や、畜産農家とのマッチング、主食用米とのコンタミ防止対策、集落営農によるブロックローテーションの取り組みなど、さまざまな課題解決が必要で「1年でできるのか。いちばんの課題だ」として、多収品種への転換へのプロセスを示すべきだと意見も出た。
会合に出席したJA全中の馬場利彦専務は一般品種を飼料用米に仕向けることで主食用米の需給調整に柔軟に対応してきたことを強調し、24年産からの支援について「急激な変化はやめてもらいたい」と強調していた。 こうした指摘をふまえて24年産から26年産にかけて段階的に引き下げることにした。
なお、米粉用でも専用品種への導入を進めるが、飼料用米と同じように種子転用を行ったうえで転換を進める考え。一般品種への支援も継続する。ただ、23年産からは、今後、需要拡大が期待されるパン・麺用の専用品種については、23年度予算で新たに措置する「コメ新市場開拓等促進事業」で9万円/10aも活用できるようにする。
また、麦・大豆や多収品種の飼料用米などの作付け転換を定着させていくには、農地利用を団地化して生産性を高める必要があるとして、農水省は地域協議会を上限300万円で支援を行う考えも明らかにした。団地化に向けた関係者間での農地利用調整や、畑地化やブロックローテーションの実施に向けたほ場の調査、新たなブロックローテーション体系構築のための試験栽培などを支援する。
江藤拓総合農林政策調査会長は「米の需給を安定させ、農家の収入を安定させる。食料安全保障の基本は主食である米、水田の機能をしっかり維持しながら国民の負託に応えていく議論をしていきたい」と話した。
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