米の販売 高価格帯苦戦 業務用は回復 関係者が意見交換2023年6月1日
農林水産省は米の現物市場の開設に向けて関係者が情報を共有する「米産業活性化のための意見交換会の第2回会合を5月31日に開いた。最近の米の需要動向や23年産米の作付け動向など意見交換した。
第2回米産業活性化のための意見交換会
農水省のまとめでは直近1年間(2022年1月~12月)の米の販売数量の対前年比は、小売事業者向けで▲2%、中食・外食事業者向けは+4%となっており、販売数量合計では+1%となっている。
4月末の全国の民間在庫は▲19万tの219万tとなっている。農水省は業務用米の販売回復が要因となっているとみる。
3月に決めた米の需給見通しでは23年産米も22年産米と同程度の669万tの生産に向け作付け転換が必要だとしている。1月末時点での各県の作付け意向調査結果では、主食用米の作付けを「前年並み」としたのが35県、「前年より減少傾向」としたのが12県だった。前年より増やすという県はなく、この結果からは前年並み以上に生産量が抑制されることも考えられる。
会合でJA全中・JA全農からは、基本指針で示された需給見通しをふまえ、23年産作付けも概ね前年並みであり、需要に応じた生産にしっかり取り組むと報告された。ホクレンからも主食用は22年産実績と同様の取り組みが行われているほか、加工用米と輸出用米の作付けが増え、飼料用米は前年並みと報告された。
生産者委員からも一部で実需者への直接販売ルートで引き合いが強い銘柄の作付けをやや増やしたという報告はあったものの、概ね主食用作付け面積は昨年と同様と報告された。
一方でさまざまな作付け転換に向けた取り組みも報告された。
宮城県のライスサービスたかはし・髙橋文彦代表取締役は飼料用米の一部を子実トウモロコシ栽培に転換、労働時間が大幅に減るメリットを強調した。
滋賀県のフクハラファーム・福原悠平代表取締役は小麦の作付けを増やすとともに、秋冬にはキャベツ栽培も。今年からはニーズに応えて大豆栽培も復活させるという。
北海道の輝楽里・藤城正興常務は、今年から酪農家と提携し20haでWCS栽培をするほか、量販店向けの野菜、スイートコーン栽培なども展開しているという。
新潟県のファームフレッシュヤマザキ・山嵜哲志取締役は需要のある酒米の作付けと、多収品種による輸出もめざすなど話した。
一方で卸からは米の需要動向の見方が示された。
コロナ禍が一段落したことから外食・中食の業務用向けが徐々に回復している一方、家庭向け販売では高価格帯が苦戦しているという見方が相次いだ。
量販店などからは「5㎏1500円以下、1380円などバイヤーから要求されている」との実態など、「銘柄よりも価格重視。消費者の生活防衛意識が表れている」という。苦戦している高価格帯の米は「なるべく早く販売したい」との声があるなか、持ち越せば差損が出るとして「状況によっては早期処分しないと」という売り急ぎの動きを懸念する指摘も出た。
会合では米の需要喚起として、販売が伸びているパックご飯など「即食」、玄米食など「健康」がキーワードになるとの意見もあった。また、米粉については小麦の価格が落ち着けば、ニーズは小麦に戻るとして「それでは生産者も米粉を増産しようとはならない。目標値を立てて生産から販売まで取り組む必要がある」と指摘された。
そのほか、事前契約についても意見交換。フクハラファームの福原代表は精米販売以外はすべて価格も含めて事前契約しており「メリットがある」と話し、契約量だけ決めて価格は出来秋に決めるのでは「事前契約の意味が8割なくなる」と話した。
JA全農からも推進する方針が示され、収穫前契約も含めて23年産では事前契約70%を目標にしているという。価格については多くの契約で基準価格と一定の幅を決め、最終的にその幅のなかで契約を結ぶ方法をとっている。
次回は8月に開催される。
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