米の民間在庫量は4年ぶり200万トン下回る 米の基本指針 主食用米作付意向は24県が「減少傾向」2023年8月1日
農水省の食料・農業・農村政策審議会食糧部会が7月31日開かれ、米の需給や価格安定に向けた基本指針案が示され、了承された。2022年7月~23年6月の需要実績は約10万トン減の691万トン、23年6月末の民間在庫量は約21万トン減の197万トンで、4年ぶりに200万トンを下回った。会合では、猛暑の影響や備蓄のあり方などについて各委員から意見が出された。
22年7月~23年6月の主食用米等の需給実績については、昨年の民間在庫量と生産量を合わせた供給量が888万トンに上り、ここから今回示した需要量691万トンを差し引いた結果、6月末の民間在庫量は、197万トンとなった。民間在庫量が200万トンを下回るのは19年以来4年ぶり。
また、23年7月~24年6月の需要量は、1人当たり消費量(推計値)54.8キロと人口(推計値)1億2437万人から算出した結果、681万2000トンと推計された。米の需要量は2010年代に800万トン台を割り込んで以降、減少傾向が続き、2年連続で700万トンを割り込む見通しとなった。
一方、23年産の生産量は669万トンで、24年6月末の民間在庫量は今年6月よりさらに13万トン減って184万トンとの見通しが示された。23年産の生産量については、農水省は昨年並みの作付け面積と作柄を見越して算定したが、今後の作柄などによって変動する可能性があると説明した。
主食用米作付意向 24県が「減少傾向」
また、部会では、23年産米の各都道府県の6月末時点での作付意向が示された。主食用米については、24県が「減少傾向」、21県が「前年並み」、2県が「増加傾向」で、今年4月時点から「減少傾向」が7県増えた。「増加傾向」と答えたのは福島県と栃木県だった。
代わりに作付けする戦略作物については、加工用米や新市場開拓用米、WCS用稲(稲発酵飼料用稲)を増やす県が多く、特にWCS用稲は、「増加傾向」が44県に上り、4月時点の33県よりさらに増加した。この結果について農水省は「総じて主食用米の作付意向は減少傾向にあり、粗飼料の価格上昇なども踏まえ需要に応じた生産という考えが各産地で定着してきたと受け止めている」との見方を示した。
猛暑の影響や備蓄のあり方などで意見
農水省からの説明を受けて、食糧部会では各委員から質問や意見が述べられた。
JA全中の馬場利彦専務は「JAグループとして引き続き消費拡大ととともに需要に応じた生産に取り組み、需給や価格安定を図りたい。現時点で各産地の作柄は好調と聞いており、予期せぬ需給緩和となったときは政府として改善への支援の検討をお願いしたい」と述べた。
宮島香澄日本テレビ解説委員は備蓄に関して、「現代人は米があれば安全保障が足りるというわけにいかず、食料安保の別の要素に対してお金を使うという考え方も必要ではないか。予算確保が厳しくなる中、若い人も含めて納得感を得る形で時代の変化、中長期的な確実な予測に基づく形で進めてほしい」と意見を述べた。
また、今夏の猛暑による品質低下などの影響を心配する声が複数の委員から上がり、農水省の担当者は「消費にも影響することであり作柄とともに品質も含めて注視したい」と答えた。
部会長を務める大橋弘東京大学副学長は「米の数量や価格とともに品質やブランディングも重要であり、環境なども含めて議論をすることの重要性を感じた。備蓄に関しては需要に合わせて考えるべきであるが、他方で供給インフラを支えなければならず、中長期的な目線でしっかり分析していただき、国民に備蓄の考えを発信できるといいと感じた」と締めくくった。
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