飼料用米は水田守る要 「水活から除外」の財政審建議に怒り 飼料用米振興協会の意見交換2024年12月9日
12月5日、飼料用米振興協会がコメ政策と飼料用米に関する意見交換会を開き、農家、生活クラブ生協の代表らは飼料用米の重要性を訴えた。財務相の諮問機関・財政制度等審議会が建議で「水田活用の直接支払交付金」から飼料用米を外すよう求めたことには、怒りと批判があがった。
飼料用米振興協会が開いたコメ政策と飼料用米に関する意見交換会ではホットな議論が交わされた
(12月5日、食糧会館=東京都中央区)
12月5日、コメ政策と飼料用米に関する意見交換会が開かれた。主催は(一社)日本飼料用米振興協会。
飼料用米は安全装置
青森県で養豚を営み年3.5万頭出荷している木村牧場の木村洋文社長は、「12年ほど前から飼料用米を使っているが、肉の食味が改善される良い飼料だ。輸入トウモロコシと違ってカビ毒がほぼなく、為替に左右されず、輸送コストも安い。飼料用米が米農家の安全装置として機能した」と話した。
コンビニベンダーも「未だ不足」の異常
コメ専門ライターの熊野孝文氏(JAcomに「熊野孝文・米マーケット情報」連載中)は、「先日の農水省・米産業の意見交換会で、年間20万トン米を使う大手コンビニのベンダーが『未だに5万トン不足している』と言った。大変なことだ。このままでは今年もコメ不足が起こる」と警鐘を鳴らした。
「冷静な報道」にジレンマ
NHKの佐藤庸介解説委員は「コメ不足をテレビが煽ったのではないか」という問題を検証。「ニュースは全体として状況の後追いだった」と振り返り、「われわれは『煽りたくない』と思い農水省の見解も伝えたが、消費者からしたらスーパーにコメがなく、『報道は国の言い分を垂れ流しているだけ』と思ったのではないか。『冷静な報道』が実態と乖離するジレンマも感じた。当局や、系統も含めステークホルダーの情報の出し方にも課題があったのではないか」と述べた。
消費者にも買える限度
生活クラブ事業連合生協協同組合連合会の村上彰一会長は、「私たちは食料自給の旗を降ろすつもりはない。生活クラブの畜産生産者に飼料用米利用を呼びかけ、年間2.2~2.3万トン利用してきた」と取り組みを説明。主食用米については、「価格転嫁は必要と思うが、消費者にも(買える)限度がある。生産者と消費者とが話し合い、協力していきたい」と語った。
製販連携にも環境保全にも効果
会に参加していたJA全農・くみあい飼料の谷清司さんは、「飼料用米は今日までよく定着し、製造と販売の連携作りに役立った。新しいコメの品種開発も進んだ。コメは日本で一番作りやすい作物で、主食用だけでなく畜産の餌原料も全部賄えるだけの生産が国内でできるのではないか。(田んぼがあることで)環境保全も水の流域保全もできる。飼料用米がなくなると困るので、みんなで残していきたい」と発言した。
水田を水田として活かす
コーディネーターを務めた同協会の信岡誠治理事は、初めに、「財政審は水田活用の交付金から飼料用米を外せと言い、政府は2024年度から『手切れ金』を払う廃田政策に舵を切ったが、それでいいのか。水田を水田として活かして使う飼料用米増産こそ、食料安保の要となる」と力説した。
関連記事
このままでは今年もコメ不足に 政府備蓄米放出、検討を コメ専門ライター・熊野孝文さん
重要な記事
最新の記事
-
湯治【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第320回2024年12月12日
-
組合員の目線に立ち「つながり強化戦略」を実践 次期JAバンク中期戦略 農林中金2024年12月11日
-
原発再稼働は災禍をもたらす【小松泰信・地方の眼力】2024年12月11日
-
食料安保強化へ 「地域戦略推進交付金」の創設など政府・与党に要請 全中2024年12月11日
-
JAタウン「石川県 かが・のと味自慢」で「石川県 国消国産キャンペーン」開催2024年12月11日
-
乳製品を飲んで応援、食べて応援「酪農家応援キャンペーン」実施 JAタウン2024年12月11日
-
切り花マム 耐病害虫性「イントリンサ品種」で差別化促進 デュメンオレンジ2024年12月11日
-
香川県フジカワ果樹園「いしじみかん」予約販売開始 RAKUSAI2024年12月11日
-
宮崎県 15日開催「マイナビ農林水産FEST(大阪)」に出展2024年12月11日
-
「幻の卵屋さん」JR市ヶ谷駅、北千住マルイに出店 日本たまごかけごはん研究所2024年12月11日
-
機構変更及び人事異動 アース製薬2024年12月11日
-
【人事異動】アグロ カネショウ(1月1日付)2024年12月11日
-
尾崎牛とフードテックで切り拓く畜産業の未来『畜産王国みやざき』2024年12月11日
-
発売50周年「青首ダイコン」の代名詞『耐病総太り』の軌跡 タキイ種苗2024年12月11日
-
能登半島地震・豪雨災害を支援「マッハコーヒー」販売開始 グリーンコープ連合会2024年12月11日
-
特定外来生物ツヤハダゴマダラカミキリ 室内試験による樹種選好性の評価 農研機構2024年12月11日
-
炭化物施用深度の最適化が窒素溶脱の抑制に寄与 表層施用で窒素溶脱を抑制 国際農研2024年12月11日
-
大容量サイズ「パーティーサラダ」シリーズ 期間限定で新発売 サラダクラブ2024年12月11日
-
雪リスクをマップ上で一元把握「ウェザーニュースPro」降雪・積雪情報を提供開始2024年12月11日
-
鹿児島県全13JAの情報共有基盤に「desknet's NEO」採用 ネオジャパン2024年12月11日