米農家「倒産・廃業」過去最多 「予備軍は10倍」との見方も 実効的な支援が急務2025年1月15日
米農家の倒産や廃業が相次いでいることが、帝国データバンクの分析でわかった。金融政策の転換を背景に中小企業全体でも倒産は増えているが米農家を取り巻く経営環境は一段と厳しく、農家経営への実効的支援が求められている。
米農家の倒産・廃業の推移
米農家の倒産・廃業、前年比2割増
帝国データバンクは1月12日、レポート「『米作農家』の倒産・休廃業解散動向(2024年)」を公表した。2024年の1年間、負債1000万円以上の法的整理による倒産を集計したもので、倒産は6件、休廃業・解散(廃業)は36件、計42件が退出した。23年は35件だったので前年比約2割増で、年間の最多件数を更新した。
4分の1が「赤字」、過半が「経営悪化」
米農家の2023年度の業績は、最終損益で「赤字」が25.8%、「減益」が29.4%、合わせて「業績悪化」が55.2%にのぼった。帝国データバンクによると「主に法人成りした農家の経営状況をまとめたもの」である。
米農家の業績悪化
2024年産の相対取引価格は上がったものの、2023年産米まで60キロ1万円台で推移したなかで、肥料や農業薬剤など生産資材のコスト高で利益が残りにくい経営環境が続いてきた。「利益が残らないことから翌年の苗床やトラクターなど機材調達費用が捻出できないといった事業に加え、就農者の高齢化や離農が進むなかで次世代の担い手が見つからないといった深刻な後継者不足問題も、コメ農家の廃業を後押しする主な要因となっている」(同レポート)
「倒産予備軍は10倍いる」との見方も
法人経営で米作りをする石川県の佛田利弘さん(作付面積31ヘクタール)は「長く続いた米価低迷が経営余力を食いつぶし、近年の肥料高騰も響いた。人で不足で雇い負けが生じ、手が回らないので収量も伸びない。高温による不稔やカメムシ被害で、23、24年の作況が公表値より悪かったことがトリガーとなった。債務超過に陥り改善の見通しのない倒産予備軍はこの10倍、準予備軍はさらに10倍はいるのではないか」と話す。
「金利がある世界」で進む企業淘汰
倒産が増えているのは農業分野だけではない。東京商工リサーチによると、2024年の全国の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は11年ぶりに1万件を超えた。
コロナ禍の資金繰り支援で生じた過剰債務の返済が本格化するなか、原材料価格や人件費の上昇が重なり、コスト増を価格転嫁できない中小企業の経営を圧迫した。
日本銀行は金利引き上げに転換し、政府もゼロゼロ融資(実質無利子・無担保)による資金繰り支援から経営改善・再生支援に軸足を移すなか、今後も倒産が増え淘汰が進むとの見方が強い。
米作りが続けられるように
中小企業全体の景況感はプラスだが、農業はもう一段厳しい。帝国データバンクの農林水産業の景況感調査(2024年9月)では改善傾向がみられるものの、「悪い」が「良い」を上回った。
家族農業だけでなく法人も経営が厳しく、力尽きて倒産・廃業する経営体が増えている事実は、米作りの持続可能性に黄信号が点滅していることを意味する。実効性ある経営支援策が求められている。
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