新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
JA全農にいがたは2月28日、2025年産米のJAへの仮渡金(JA概算金)を県内JAに提示した。一般の「コシヒカリ」は1等60キロで2万3000円。前年当初より6000円高い。今回の提示額は最低保証だ。県内JAからは歓迎の声が上がるが、米の不足感を背景に商系業者との競争は厳しい。全農にいがたでは、政府米放出の効果などを見極めながら今後上積みも考える。
魚沼コシは2万5000円
例年は概算金は8月に示すが、激しい集荷競争を考慮し、最低保証額を早期に示した。一般コシ以外では、岩船・佐渡のコシヒカリも1等60キロあたり2万3000円(前年比+5700円)、魚沼地区のコシヒカリは2万5000円(+5500円)、「こしいぶき」2万円(+5500円)、「新之助」2万4000円(+6000円)である。
全農にいがたの担当者は、「令和6(2024)年産は集荷をかなり落とした。今年は早めに最低額をお示しし、集荷の足掛かりにしたい。産地としても、消費者に受け入れてもらえる価格でないといけないと考えている。令和7年産の作況、備蓄米放出の影響、輸入の推移などを8月に向けて見極めながら、最終的に決めたい」と話した。
早い提示も「良かった」
県内のJA役員は「(米価が)高いと言われますが、実際は30年前に戻ったということ。逆にいえば、その後30年間も米価が低迷してきた。消費者が買えないほどの価格は行き過ぎだが、生産資材も人件費も上がる中、集約化を進めながら米農家は何とか生き残ってきたことを理解してほしい」。
JA佐渡の松井和幸常務理事は「私も米農家だが、一昨年までの米価だと、使っているコンバインが壊れたら次は買えなかった。2.3万円という概算金は農家にとって、安心して農業経営ができると評価できる。これまでは、米価がわからないまま田植えをし収獲直前に概算金が示されたので不安もあった。今回は早く示されたことで、『農協はいくらで買うんで、農家のみなさん頑張って』という形になり良かった。再生産価格をこえる概算金が定着すれば、米作りに魅力を感じ若い人も入ってくると期待している」とした。
産地にも不足感、25年産米も集荷競争激化か
スーパーから米が消えた「令和の米騒動」以降、米の小売価格は上昇を続け、集荷競争が激化した。前出・JA役員は「見たことがない商系業者が現金を持って農家まで集荷に来た。農家が米を抱えているという見方もあるが、普通の農家の保冷庫は10俵くらいしか入らず、大量に抱えていることはない」と話す。
松井さんは「昨年、佐渡では7月と8月末という大事な時に日照が少なく、作況指数以上に反収が少なかった。うちも良くなかったし、周囲も『1、2俵少なかった』という人が多い」。JA役員も、農水省のいう「需給見通し」に疑問を漏らした。
松井さんは「『令和の米騒動』で貧乏くじを引いたのは、米が高くなって困った消費者と、値上がり分がほとんど還元されない生産者。米をマネーゲームの対象にした業者だけが潤うのはおかしい」と怒るが、政府備蓄米の放出が決まっても解消されない不足感を背景にスポット価格は高止まりが続く。「農協が概算金を2.3万円と示せば、商系業者は『うちは2.5万円で』と言って現金を持ってくる。25年産も集荷は容易ではない」(JA役員)。25年産米の集荷競争は、例年より半年早く、波乱含みで幕を開けた。
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