米の生産、流通 国の責任で実態把握を 端境期へ懸念の声も 食糧部会2025年3月26日
農水省は3月26日、食農審食糧部会を開き、「麦の需給に関する見通し」と米粉など「米穀の新用途への利用の促進に関する基本指針」などを諮問し部会は了承したが、会合では主食用米の生産量や流通の実態把握や、備蓄米放出の政策効果などについても多くの意見が出され、端境期にかけての需給が懸念されるとの声もあった。
3月26日の食糧部会
会合では農水省が米の収穫量調査と作況指数について改めて説明した。
2024年米の主食用の収穫量は679万2000tで前年産より18万2000t多かった。全国の作況指数は101。ところが農水省には「101はおかしい。そんなに穫れていないとの声が相当多く届いた」という。
水稲の収穫量はその年も10a当たり収量に主食用の作付面積をかけて算出する。
10a当たり収量は全国で8000筆を無作為に選定し実測調査で平均値を出す。調査する水田は耕作者や品種などで選んでいない。調査は専門調査員が対象水田の対角線3点を刈り取って行う。
1956年からこの方法で実施されているが、調査数は米の生産量の減少ともに減り1997年から1万筆、2024年から8000筆となった。
この収穫量調査は主食用として供給される可能性のある玄米の総量をつかむため1.7ミリ以上のふるい目で行う。これがまず生産者が実態と違うのではないかと感じる点にひとつ。今では生産者は1.8ミリ、1.85ミリ、1.9ミリなど大粒の米を出荷しようと網目の大きいものを使っており、さらにふるい下米や色彩選別機で弾かれた米は、くず米として扱うこともあるが、収穫量調査ではそれも収量に含めている。
実際、特定米穀業者がふるい下米を「中米」として業務用米に供給している。
一方、作況指数は、収穫量全体の多い少ないではなく、その年の10a当たり収量を平年収量と比べたもの。気象などが平年並みに推移した場合の仮定の収量として算定しており、栽培技術の進歩なども考慮して決められる。
作況指数は現場の実態をふまえて2015年から各地で使用されているふるい目幅で算定している。
農水省によると収穫量調査の結果は収量の多かった水田と少なかった水田の平均値。24年産米は10a当たり全国で540kg、9俵だったが、公表値より1俵以上少ない筆は29%あった。
調査対象8000筆は3分の1づつ選び直すことになっているため、6000筆は2年続けて調査をしている。その調査によると前年産から1俵以上減収した筆は3割だった。
作況指数は前年産収量との差ではなく、あらかじめ定められた平年収量との比較。しかも平均値であるため、平均値より下回った生産者は公表数値を高く感じ、実感と違うと思ってしまうのではないか、などと農水省は説明した。
こうした説明に対して多くの委員から情報発信に工夫が必要との意見があったほか、山波農場の山波剛社長は大規模化で品種構成が多くなり、収穫期も長期となるため品種によって作柄が異なることを指摘した。また、ドローン等による画像解析なども収穫量調査に活用すべきだとの意見もあった。
農水省は情報提供が大きな課題だとしたほか、ふるい目だけでなく、品種による収穫量の違いやさらに調査手法についても検討が必要との考えを示した。
流通面でも課題が指摘され米穀店シブヤの澁谷梨絵代表は「米の売れ行きは順調だが、このままでは端境期に米がなくなるとの気持ちから消費者多めに買っている感じ」として消費者への情報発信を求めた。
神明の藤尾益雄社長は集荷業者の民間在庫量が1月末で前年より48万t少ない180万tで4万t増の卸業者の在庫との差し引きでも44万t減となることから端境期の需給を懸念した。
これに対して農水省は毎月の調査対象となっていない小規模事業者の在庫調査などしているとして今後、流通構造の変化に対応して調査のあり方を検討していくとした。
全中の馬場利彦専務は「流通が多様化して流通、在庫など実態が見えづらくなっている。正確な情報を提供することは国の責任」として信頼確保のための情報収集と提供を求めた。
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