米:JA全農米穀事業
【JA全農米穀事業部】JAから連合会へ 出荷346万t以上を目標2014年3月27日
・農政転換と環境変化強み発揮し集荷販売
・「水田活用米穀」の取り組み強化
・鉄コーティング種子による直播等低コスト化も図る
・生産者・JAニーズに対応した多彩な集荷対策
・ふるい下米の集荷も積極化
・県域実態に合わせ精算手法を検討へ
・実需者と連携強化JAの結集力高め
・既存国での業務用向け拡大と新規国の開拓
JA全農はこのほど「26年産米生産・集荷・販売基本方針」を決めた。本紙2月25日号では25年産米の取り組み成果について紹介したが、今回は26年産米の取り組み基本方針を解説する。
26年産米では生産数量目標が大幅に削減されるなか、主食用米の適正生産と作付け拡大が見込まれる飼料用米など非主食用米の取扱い拡大が大きな柱だ。集荷目標も水田活用米穀を含めて設定、生産者からJAへの出荷目標を440万t(主食用等383万t、水田活用米穀57万t)、JAから連合会への出荷目標を346万t以上(主食用等300万t、水田活用米穀46万t)としている。
取引先・実需者と連携
有利販売と早期完売へ
【基本的考え方】
◆農政転換と環境変化 強み発揮し集荷販売
JA全農米穀部では「26年産米生産・集荷・販売基本方針」なかで、米穀事業を取り巻く環境と取り組むべき課題について、以下のような「基本的考え方」を示している。 26年産米の生産数量目標は25年産米より26万tと大幅に削減され765万tとされた。このため▽主食用米の適正な生産、▽主食用以外の米の生産・集荷・販売の取り組み強化が重要になる。
さらに農地中間管理機構が創設されるなど農政の転換にともない、担い手への農地集積がさらに進展することが考えられるため、担い手ニーズをふまえた取り組みを一層強化していく必要がある。 また、大手商社や大手卸などによる産地と実需者の囲い込みがさらに進行するとともに、生産者直売の増加、中食・外食へのシフト、インターネット販売の増加など、流通の複線化の進展が加速すると想定されるため、連合会が自らの機能を発揮するためには「大手実需者ニーズへの直接的な関与を深め、生産現場への結びつけを行う取り組みの拡大が一層重要」だとしている。
このため26年産米は冒頭でも触れたように飼料用米・米粉用米など非主食用への作付け転換を進めるとともに、これらを「水田活用米穀」として集荷目標を設定。生産者からJA出荷440万t、JAから連合会出荷346万t以上を目標とし、25年産で取り組んだ大規模生産者への集荷対策や実需者と結びつきを強化する播種前・収穫前・複数年契約などの取り組みを「深化」させることが必要だとしている。
こうした環境と流通実態をふまえ、とくに26年産米は、これまで以上に柔軟な集荷条件と販売価格の設定によって、取引先・実需者と連携した有利販売・早期完売に取り組む、としている。そのうえで以下のような具体策を打ち出し、各県連・県農協・全農県本部は、早期にJAと協議を進めて26年産米の生産・集荷・販売方針を策定していくことにしている。
【生産対策】
◆「水田活用米穀」の取り組み強化
米の助成体系が見直され、生産数量目標が大幅に削減されるなか、過剰作付けを解消し、生産数量目標を確実に達成する必要がある。
そのため主食用米の生産数量目標の削減にともない、飼料用米・米粉用米など非主食用米を「水田活用米穀」とし、地域で作成する「水田フル活用ビジョン」に盛り込んで、数量払いの仕組みや産地交付金を活用して中長期的な目標を設定、本作化を行うことが重要な生産対策となる。
ただ、26年産ではこうした非主食用米の生産量が急増することも見込まれる。水田フル活用による生産力維持の観点からは望ましい取り組みだが、加工用米、備蓄米、飼料用米、米粉用米等の品目別需給にミスマッチが生じた場合には価格下落による生産者手取りの減少も想定される。
そこで生産者が安心して非主食用米の生産ができるよう、JA全農ではこれまでと同様、確実な需要先の確保と生産流通環境の整備を図っていくほか、非主食用米を「水田活用米穀」として一括して取り扱うスキームの構築をあわせて検討していく。これによって品目別需給バランスの調整や、安定需要の確保、JA段階での事務手続きの軽減などにつなげたい考えだ。 水田活用米穀の取扱い拡大に向けては、特に飼料用米への対応が重要となることから、全農本所に新たに飼料用米専門部署を設置し、産地での生産集荷体制の整備、物流や飼料会社の搬入・製造体制の構築に向けた検討を進めることにしている。
◆鉄コーティング種子による直播等低コスト化も図る
生産コスト低減に向けた対策は、営農・TAC部門、肥料農薬部門、生産資材部門などと連携し、実証ほ場での検証を行いながら、▽鉄コーティング種子による直播栽培、▽疎植栽培などの技術面、また、▽省力施肥(「PKセーブ」など)・防除(「MY-100」、「AVH-301」)、▽省力資材(育苗マット軽量化)など資材面での提案を強化する。
また、外食・中食事業者からニーズの高い低価格米に対応するため、多収性品種(萌みのり、あきだわらなど)への作付誘導も産地に提案する。これらの品種は作期が異なることから生産者にとっては作業時期が分散できるが、同時に手取りを確保するため、生産者と外食・中食など実需者との協議に基づく面積契約(10aあたり農家手取りを事前決定して作付けする方式)を提案する。
【集荷対策】
◆生産者・JAニーズに対応した多彩な集荷対策
大規模生産者からの集荷拡大に向けて25年産でも取り組んだ▽JAとの連携による集荷目標数量の設定、▽県域TAC部門とも連携した同行推進による積み上げの実施、▽フレコン利用助成や検査・集荷態勢の構築による庭先集荷も含めたフレコン集荷の拡大などに力を入れる。また、買い取りや個別取引条件の設定など、より柔軟な集荷方法への転換も図る。
また、JAからの出荷を促進するために、県域実態に応じた買い取り、JA個別精算(委託非共計)などの拡充や、大手実需者との播種前・収穫前・複数年契約などの取り組み強化と連動させて、JAに対しても販売先を明確化することを通じ安定取引を推進していく。 さらに業務用を中心とした実需者のニーズをふまえ、前述した多収性品種の生産提案のほか、カントリー・エレベーターのサイロ瓶契約提案など、実需者と生産者・JAをより結びつける契約手法にも取り組む方針だ。
JA全農ではこうしたJAとの連携について徹底した議論を行って課題と事業化の共有化を図っていく。
◆ふるい下米の集荷も積極化
ふるい下米の主食用への環流による米価への影響を軽減し、取扱高の増大による事業拡大のためふるい下米の積極的な集荷に取り組む。JA全農の推定では、主食用収穫量としては25年産米は24年産米より2万9000t少なかったが、ふるい下は8万t多い。こうしたふるい下に対して26年産米では、既存の調製施設を活用するなど、大規模生産者などが生産した米穀をふるい下も含めて、一括して受け入れる体制を整備することも検討していく。また、集荷したふるい下米は特定米穀業者へ販売するほか、選別を行ったうえで米菓用・味噌用・ビール用など用途に合わせた販売に取り組む。
◆県域実態に合わせ精算手法を検討へ
概算金の設定手法では現行の一律的な設定を見直し、多様な精算方法について各県の実態に応じて県域ごとに検討・導入する。
概算金の設定・精算手法には▽出荷契約金プラス追加払い方式、▽集荷時期別概算金、▽JA結び付き播種前契約の概算金格差設定のほか、販売期間を区切った全額精算方式などがある。この手法には米以外のリンゴなどの作物の精算方式も参考にする。
そのほか、集荷ピークを過ぎた追加出荷に対して概算金に格差を設定することや、播種前契約などで取引先と事前契約ができたものは、事前買取を検討する。
概算金水準については、連合会はJA段階へ提示、JAは生産者に提示するよう見直しを進めることなども含めた検討を実施している。
【販売対策】
◆実需者と連携強化 JAの結集力高め
販売先対応の強化に向けては、パールライス卸とパートナー卸との連携のもと、大手実需者とJAを結びつけた播種前・収穫前・複数年契約で140万tの契約数量を目標とする。また、実需者を明確にする卸との特定契約も拡大する。
そのほか、実需者・取引先との直接交渉を強化し、実勢相場をふまえた競争力のある価格設定により連合会出荷米の有利販売を進め、早期全量販売に取り組み、徹底した流通コストの削減で生産者手取りの最大化をめざす。取引情報については、取引先との意見交換などを通じて卸と密接な情報交換を行って、産地へフィードバックする取り組みも強化する。
大手実需者や食品メーカー対応も強化する。
直接商談を拡充し大手実需者に合わせた取引スキームを構築するほか、大手実需者とJAを結びつける3者・4者契約を中心に播種前・収穫前・複数年契約を拡大、集荷に連動する事前安定契約を拡大する。また、消費者や小口業務用実需者直接販売の仕組みを構築しモデル的な取り組みも進めることにしている。
精米販売の強化に向けては、東西パールライス会社を統合し、消費地卸機能の強化と積極的な事業展開で新規取引先などを獲得する。また、大手実需者との対応強化策と連携した取り組みや、グループ卸間、他の流通業者との連携強化による精米販売拡大もめざすことにしているほか、品質管理向上、製造コスト削減を目的に精米工場の整備も促進する。
【輸出用米対策】
◆既存国での業務用向け拡大と新規国の開拓
米輸出の拡大は、新規需要米による対応を基本に、シンガポール・香港・中国など既存国での業務用向け販売を重視し、あわせて東南アジアや欧州等の新規国開拓に取り組む。
原料米調達から製造、貿易取引、輸入業者と連携した現地営業までJA全農による一貫した事業方式を基本とし、合わせて青果物・畜産物、加工品などとの品目連携で総合推進を図る方針だ。
【消費拡大策】
これまでの県産米の推進だけではなく、米消費全体の拡大に向け組織全体で取り組むとともに、若い女性や子育て世代などターゲットを明確にした情報発信や、異業種との連携も視野に入れた消費拡大策も検討していく。
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