米:緊急調査・米主産地130JA
飼料米 増産へ着々 目標達成へさらに一歩2015年6月24日
本紙は6月初旬、米主産地JAに対してアンケート「緊急調査・27年主食用米と飼料用米の取り組み状況」を実施、150JAを対象に依頼し130を超えるJAから回答を得た。集計の結果、27年産飼料用米の取り組み目標の達成率は「北海道・東北」、「北陸」、「九州」で100%を超え、全国ベースで97.5%となった。米主産地を中心に全体として飼料用米増産に向け着々と取り組みは進んでいることがうかがえる一方、調査時点での6月初旬段階では目標を達成できていないJAもあるが「申請期限も延長されたことから飼料用米追加推進を行う」(関東のJA)など、目標達成に向けて積み重ねが続けられている。調査結果の概要を紹介する。
◆申請期限は7月末 上積みの推進を
調査はJA管内の水田面積の多い順に、150JAを対象として6月初めに依頼、15日にまでに寄せられた133JAの回答を集計分析した。
133JAの管内水田面積合計は88万4000ha。全国水田面積(26年耕地面積統計=245万8000ha)に対して約36%を占める。また、26年産主食用作付面積は133JA計で約52万7000ha。全国の26年産主食用作付面積(147万4000ha)に対しても約36%を占める。飼料用米の26年産作付実績は1万4266ha。全国作付実績(3万3800ha)に対しては約42%を占める。
(写真)分けつ期に入った飼料用米
27年産に向けてJAグループは主食用米の需給改善の取り組みが最大の課題だとして、飼料用米の生産拡大を主軸に各地で取り組んでいる。
調査結果から、飼料用米の取り組みに関する各データ集計が可能な130JAを基本にまとめたところ、27年産での作付目標面積に対する現時点での達成率は全国ベースで97.5%となった(表1)。
表1 飼料用米作付面積
ブロック別では100%を超えたのは北海道・東北、北陸、九州となったが、あくまで130JAベース。まだ取り組みは必要だ。
JA別に達成率(図1)をみると、目標達成率「200%以上」JAが8・7%、「100?199%」JAが57.1%で合わせて目標達成JAは65.8%となった。35%程度が目標に達しておらず、達成率50%未満のJAは8.7%となった。
図1 飼料用米作付 目標達成率別JAの割合【全国】
図2 移植栽培と直播栽培の割合
ただし、26年産の飼料用米作付面積とくらべると27年産見込み面積は全国で205%となった。ブロック別では▽北海道・東北=235%、▽関東・甲信=282%、▽北陸=313%、▽東海・近畿=109%、▽中国・四国=94%、▽九州=137%となっている。関東・甲信では3倍近く増え、北陸は3倍を超える見込みとなっている。
図3 飼料用米増産で病害虫防除、生産資材は?
飼料用米生産拡大にはコスト削減も課題になる。JAとしてコスト削減対策を「すでに実施している」との回答は22%、「実施する」との回答は40%で6割のJAが何らかの対策を実施していくとした(図4)。具体策では「低価格資材の提供」、「出荷時のフレコン貸し出し」、「施設利用料金の別設定」など利用料見直しやサービス向上などの対策のほか、「防除回数削減」、「疎植栽培」「立毛乾燥の検証と導入」など栽培面での取り組みも回答として寄せられた。
図4 飼料用米生産拡大のためのコスト削減対策は?
専用品種の導入も課題となっているが、今回の調査では主食用品種が65.5%で専用品種は34.5%だった。また、一部でも直播栽培しているJAは48%だった。
飼料用米の増産に向けてJA独自の取り組みをしているかどうも聞いた。結果は「飼料用米の所得試算を独自に作成」が39%、「栽培指導の実施」37%が上位を占めた。全農の直接買取スキームの利用のほか地元の畜産農家との連携など「JA独自の飼料用米販売ルートの開拓」も33%の回答率があり、地域実態に合わせた生産拡大への取り組みに力を入れていることも示された(表2)。
表2 飼料用米増産に向けてのJA独自の取組み(複数回答 %)
増産に向けたJA独自の取り組み状況をブロック別に集計すると、たとえば北陸では「飼料用米の所得試算の独自作成」60%、「栽培指導」40%、「独自の販売ルート開拓」45%など他ブロックにくらべて回答率が高く、多くの取り組みが積極的に進められていることが示された。やはりこうした現場の実践が着実に飼料用米の増産につながっているともいえる。
飼料用米等の新規需要米の取組計画書の提出期限は「7月末日」まで延長された。「飼料用米の追加推進を行う」との回答もあり目標達成に向けた取り組みが期待される。 一方、今後の課題として現場からの声でもっとも多かったのは「助成金の継続」。3月に閣議決定した今後の10年間を見通した新たな食料・農業・農村基本計画では平成37年の飼料用米の生産努力目標を110万トンと位置づけ、この目標達成に向けて必要な支援を行うと明記された。生産現場で増産取り組みへの将来不安を払しょくするためにも、国の説明や着実な政策実践が求められる。
そのほか、流通・保管などの課題についての指摘も多く引き続き関係機関が一体となって飼料用米増産と主食用の需給改善に取り組む必要がある。
【生産コスト削減の具体的取り組み事例】
○直播栽培拡大、低コスト肥料導入。
○立毛乾燥、堆肥散布により減肥。
○疎植栽培、大豆後作指導。
○多収性品種は安価な化成肥料と単肥を使用し多収を目指す。
○施設利用料金の別設定。
○独自で専用品種種子の増産を行い生産者に販売。
○カントリー荷受の実施。
○籾集荷、出穂期以降は防除しない。
○出荷時にフレコン貸対応。
○防除回数を減らす。一般4回、飼料用米3回。
【独自の販売ルートの具体例】
○地元養豚農家(法人)との連携。
○全量買取、独自販売。
○地元畜産業者との契約。
○市内畜産農家に供給し地域内循環を実施。
○養鶏組合とのマッチング。
【保管物流の工夫具体例】
○フレコン出荷または、カントリー利用。
○飼料メーカー受入体制に合せ純バラ出荷。
○全量共乾施設扱い。
○生産者に水分15%以下出荷をお願い。
○一時保管倉庫の確保。
【コンタミの防止対策具体例】
○飼料用米の受入、調整は主食用米が終了してから行う。
○実施ほ場への立札の掲示。
○個人での乾燥調製でなく専用CEを活用。
○主食米との切替時、機械の清掃の徹底周知。
○圃場設置証明のため看板を設置、刈取時期をずらす。
【課題や工夫―現場からの声】
○課題は保管施設の確保と収量の向上。
○急激な面積拡大による集荷・保管体制の再構築。
○交付金が減額、廃止となった場合。飼料米作付後に主食用米を作付した場合のコンタミ対策。
○コスト削減により病害虫防除を実施しないことなどでの周辺圃場とのトラブルへの対応。
○需要と供給のマッチング。
○今後増産された場合の保管施設の確保。
○直播栽培に適した専用品種の導入。
○生産者の理解。
○増産のための取り組み=産地交付金の活用。県設定に準じて10アール5000円以内加算。市独自助成金として生産調整実施者に10アール1万円以内加算。
○課題=倉庫事情による保管場所の確保、ライスセンターではコンタミ防止のため主食用品種のみの扱い。
○区分管理の飼料用米にはふるい下米も入っているので害虫の発生が懸念。長期保管はできず流通が課題。
○純バラ出庫で対応。ただし純バラ対応できるトラックが少なくて困っている。飼料用米の制度はいい制度だが、流通面での助成や対策の検討を。
○共同乾燥施設扱いとしているため主食用でサイロがふさがってしまう場合、飼料用米出荷前に乾燥の終わっているモミをサイロから移し他倉庫へ移す計画をしている。
○共乾施設利用としているが、能力に限界があり機械・施設等の増強が要求される。
○都市近郊という条件もあって主食用米は学校給食用など販路は多様。ただ、米価下落基調のなか、経営を考え主食用米と比較した手取り計算をして各農家が判断している。今後の状況に応じ増産を検討したい。
○コンタミ防止対策が課題。
○畜産農家が減少するなか需要量の確保を図る必要。
○JA施設で受け入れているため主食用米との関係で大幅に増やすことは難しい。
○実需者への運搬、保管経費がネック。
○飼料用米倉庫新設にかかる補助金が必要。
○専用品種の雑草稲化を懸念。
○中山間地域は収量が基準収量を下回るケースが多く飼料用米に取り組みにくい。
○WCSの取り組み強化→価格面も含め実需とのマッチングが課題。
○説明会の開催は年2回。飼料用米出荷へのチラシ作成・配布。経営所得安定対策各書類の手伝いもしている。
○課題は、
▽助成金単価の継続
▽直播での異品種混入
▽飼料用米の主食用米への利用が懸念
▽供給過多による価格下落
○集荷・販売業者に対する支援と耕種農家への支援を一体的に講じる必要がある。
○区分管理方式で取り組む場合、ほ場の特定が必要であるため、ほ場整備され農地台帳にしっかり明記された地域に限定される。
○不作付地を解消することが目的。専用品種の導入とそれにともなう受け入れ体制の整備。
○県内の他JAからも飼料用米を集約しており、そのうち保管数量に限度がくる。
○産地としては大豆を主体として推進している。今後の水はけの悪いほ場や中山間地に飼料用米を推進していきたい。
○飼料用米は条件不利地で作付けされることが多く地域の標準単収に達しないことが多いため、交付金単価が低くなりがち。10アール8万円が念頭にある農家から標準単収が高すぎるとの苦情も。
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