米:CE品質事故防止強化月間
【現地ルポ】5Sを徹底 習慣化と見える化 JA西三河南部CE・愛知県2019年8月9日
米のカントリーエレベーター品質事故防止強化月間(2019年8月1日~10月31日)
米穀事業の集荷・販売の拠点施設であるカントリーエレベーター(CE)では、1年で最も多忙な米の収穫期が始まろうとしている。全国の大規模乾燥調製貯蔵施設の管理・運営改善に取り組む全国農協カントリーエレベーター協議会、JA全農、公益財団法人農業倉庫基金の3団体は、毎年8月1日から10月31日までの3か月間を「米のカントリーエレベーター品質事故防止強化月間」に定め、事故防止の徹底を呼びかけている。今回は、最近注目されているCEの衛生環境の整備を重点項目の一つとして取り組み、昨年度愛知県内のCE環境美化コンクールで最優秀賞を受賞したJA西三河の南部CEの取り組みを取材した。
―JAグループ愛知CE環境美化コンクールで最優秀賞受賞―
南部CEは300t(乾籾)のサイロが12基。貯蔵能力は3600t
◆3か所のCEが連携 担い手を支える力に
JA西三河は、愛知県南部・三河湾に面した西尾市にある。2000年4月に愛知県内、南西部の旧西尾市など1市3町の5JAが合併して発足した。19年3月末の正組合員数(個人)は8804人、法人12、准組合員数(個人)は2万1314人、農事組合法人13、その他団体27である。
西尾市は、温暖な気候と矢作川のもたらす豊かな大地に恵まれ、抹茶の原料となるてん茶の生産や施設園芸が盛んで、キュウリ、トマト、ナス、イチゴなどが秋から翌年の初夏にかけて生産されている。また多くの水田で米・麦・大豆のブロックローテーションが行われている。さらに梨やイチジクなどの果樹、バラ・菊・洋ランなどの花き類の生産、酪農・畜産などがあり多様な農畜産物が生産されている。
18年度の販売品販売総取扱高は、農産販売は、米10億3917万円、麦1億7925万円、その他米穀2億7875万円、園芸販売は51億4091万円、畜産販売は11億9123万円、産直販売は9億420万円で、合計87億3352万円である。
現在、CEは今回取材した南部CE(03年3月完成)のほかに東部CE(13年5月改修工事完了)と西部(さいぶ)CEの3施設ある。うち西部CEはライスセンターを小麦乾燥貯蔵出荷施設に増強し17年4月に完成したもの。それまでは西部管内で収穫した小麦は南部CEが荷受けしていたが、西部CE稼働後は、担い手農家は「荷受けのための待ち時間や圃場での手持ち時間が減り、コンバインを効率よく動かせるようになった」と評価されている。運搬するトラックの台数と人件費が削減でき、労働時間を短縮し短期間で刈り取りを終えることが可能になったからだ。
西尾市は、愛知県内ナンバーワンの小麦産地。多収性小麦「きぬあかり」への品種転換が進んでおり、大規模担い手農家の高い生産技術で単収が米より高くなり、近年の年間生産量は約6500t(近年の平均値)。なお、17年度は小麦が大豊作だったことからもし西部CEがなかったら「南部CEはパンクしていた」(佐竹俊亮係長)という。CEが3か所あると、連携することで麦と米の受入れでうまく流れをつくることができるわけだ。
さらに共有ファイルシステムを使って3つのCEと本店営農部は各CEの荷受状況などをリアルタイムで共有し、前年の日別実績との比較もできる。万が一過剰荷受けのおそれが生じたら、直ちに他のCEに連絡して回すことができる。営農部の黒野善久部長、農産課の伊藤英雄課長もアクセスしている。3CEの連携が担い手を支える力になっている。
◆全員に利用要領徹底 品質事故未然に防ぐ
南部CEには300tのサイロが12基ある。総処理量が、乾麦で2791t、乾籾で2205tである。取材した7月下旬は、麦の出荷が終わり、米の荷受けの準備が急ピッチで進んでいた。
南部CEでは、2019年産の小麦の荷受けは6月4日~20日に行われた。利用人数は担い手農家19人だ。品種別の荷受数量は、「きぬあかり」(主な用途=麺)3462t、「ゆめあかり」(主な用途=中華麺、パン)344tで、荷受数量の合計は3806tとなった。
また、これから始まる19年産の米の荷受けは、「コシヒカリ」8月25日~9月15日、「あさひの夢」9月20日~10月5日、「あいちのかおり」10月1日~10月20日を予定。なお、18年産の米は、利用人数は184人で、荷受数量を見ると、「コシヒカリ」1264t、「あさひの夢」289t、「ゆめまつり」33t、「あきだわら」455t、「あいちのかおり」948tで、合計は2989tとなった。
なお、品質事故防止のために、利用要領を利用者に徹底し全員が順守している。主な内容は次の通り。
【米】
▽荷受時間は、午前8時~10時は乾燥籾(水分14・5~15・0%)、午前10時~午後6時は生籾(水分15・1~28・0%。28・1%以上は持ち込まない)
▽コンバインで刈り取った籾は4時間で発酵が始まるので午前中に収穫した籾は午前中に、午後収穫した籾は当日中に必ず搬入、など。
【麦】
▽荷受時間は、乾燥麦(水分11・0%以下)午前8時~9時30分、午後6時~7時。半乾麦(水分15・0%以下)午後5時~6時、生麦(水分11・1~28・0%まで。28・1%以上は持込禁止。)午前9時30分~午後6時▽登熟むらを無くすため、28%以上での刈り取りはしない。
▽刈り取り前に、赤かび病・なまぐさ黒穂病の発病がないことを確認、など。
◆自ら改善目標を設定 メンバー5人が動く
JA西三河営農部農産課の伊藤英雄課長(右から3人目)と、南部CEを現場で支える佐竹俊亮係長(左から3人目)と頼れるスタッフたち
南部CEは、2018年度に愛知県低温農業倉庫CE協議会が主催した第2回JAグループ愛知カントリーエレベーター環境美化コンクールで最優秀賞を受賞した。同コンクールでは、環境美化と運営管理を採点項目としているが、満点での受賞であった。
佐竹係長はコンクールがきっかけで「保育園や小学校の給食のお米はこのCEから出荷されており、自分の子どもにきれいなCEから出荷されたおいしいものを食べてもらいたい」という思いに気づいたという。CEで働くメンバーにも小学校や保育園に通う子どもやお孫さんがおり、具体的に食べる人がイメージできたことが、モチベーションにつながった。
「5S」の整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(習慣化)で、「難しかったのは習慣化することだった」(佐竹係長)。メンバー5人がお互いに「あそこ掃除した?」などと言いあえる仲になるまで時間がかかったという。整理・整頓では、工具類の管理簿を作成し常時把握し、掃除道具は所定位置と数量の確認を写真で「見える化」。清掃・清潔では、集塵装置は、稼働時に手が空けば5人のうち2~3人は清掃するので、稼働後は軽い清掃ですむ。床、機械、どんな所も意識して清掃することが習慣化している。
床も機械もどんなところも清掃されている/荷受ホッパーにはネズミなどの侵入防止のため、カバーがかけられ目貼りが施されている
佐竹係長は「これまで気づかないところも見えてきた。みんなが言いあえ、チーム一丸となりまとまった。これまでも清掃し清潔なCEだったが、意識が一段高くなった」とコンクール参加の意義を語ってくれた。自ら改善目標を設定し、その達成度が評価されるのもこのコンクールの特徴だ。雨樋の清掃やハトの侵入防止が徹底できたのもその成果だ。
また、CEで荷受けが集中する時期には本店の営農部から交代で2人の応援が来る。職員の応援だけでなく、「先日は専務が激励に来てくれた。顔を出してもらえるだけでうれしい。大変さを見て分かってもらえるから」と佐竹係長。CEの現場の人たちは品質事故防止のために奮闘している。それをJAのトップが分かってくれていることが、現場で働く人たちのモチベーションを高めている。
最後に、南部CEの将来見通しを伺った。「担い手の方には30代・40代の後継者が多数おり衰退ということはない」(佐竹係長)。ただ、主要道路付近に巨大な物流センターができ優良農地が減少している。「今後、担い手であっても農地集積ができなくなる可能性もあるけれど、このCEが担い手を支え続ける役割に変わりはない」と伊藤課長は言い切った。
整頓された掃除用具、個数も管理されている
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CE品質事故防止強化月間
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