米:特集
【JA全農米穀事業】21年産米生産・集荷・販売方針 生産現場への情報正確に(下)2021年3月12日
契約栽培や直販拡大
――21年産米の取り組み基本方針のポイントは何でしょうか。
事業連としての目標数量としては多収米など契約栽培・取扱いを10万tとしています。生産者と実需者をマッチングしていく取り組みで20年産では7・9万tの見込みとなっており、これを拡大していきます。また、買取も20年産では取扱数量の40%の見込みですが、50%に拡大します。実需者直接販売も20年産では取扱数量の65%の見込みですが、70%に拡大します。(下表)
令和3年産米取り組み目標
全体の取り組み方針ですが、今回は▽需給環境をふまえた喫緊の取り組み、と▽将来を見据えた中長期的な取り組みに分けています。
喫緊の取り組みでは繰り返し申し上げているように、JAを通じた生産現場への正確な情報伝達です。やはり手取り試算をしっかりと示していくということが重要です。(図4)
(図4)JAを通じた生産現場への正確な状況の伝達
飼料用米は潜在需要が120万tあると推定していますが、大幅な拡大に向けては生産者が安心して生産拡大ができるように、円滑な供給体制となるよう農水省や飼料メーカーと協議して対応していきたいと考えています。具体的には、飼料用米産地から遠隔地への輸送、保管体制などです。
中長期計画で安定販売 米の輸出拡大10年後10万t
輸出用米の拡大については国も輸出拡大実行戦略を掲げており、コメ・コメ加工品を2025年に125億円まで拡大していくとしています。輸出産地も育成するということですから、JA全農も10年後には10万tを輸出することを目標に段階的な取り扱い拡大を図ります。(図5)
今はコロナ禍で非常に厳しいですが、国内の需要が減っていくなか、長期的な視点で輸出に取り組もうということです。
出荷契約の複数年化にも取り組みます。これまで取引先とは複数年の販売契約をしていますが、生産者との間では単年ばかりでした。それを出荷契約も一部は複数年化して、その部分についてしっかり実需者と結びつけてしっかりと需要に応じた生産を図ることで、JAグループの取扱数量の安定的確保にもつなげていきたいと考えています。
20年産の需給対策としてJAグループとして全国20万t規模の長期計画的販売に取り組んでいますが、今後の販売動向をふまえ必要に応じて数量を積み上げるほか、万が一、需給改善されないとなれば、21年産でも国の周年供給事業を活用した長期的な計画販売に取り組みます。
それから価格下落への備えも必要で、万が一、価格が大幅に下落した場合は共同計算の繰り越しによる財源の確保や、21年産の概算金については、超過数量などに対して一定の格差を設定することに生産者に合意してもらうことや、複数年共計の準備などの対策も講じなければなりません。
特定米穀の扱い強化 事業連携で集荷柔軟に
――将来を見据えた中長期的な取り組みのポイントは何でしょうか。
1つ目は柔軟な集荷対応と特定米穀など副産物の取り扱い強化による事業拡大です。(図6)
(図6)柔軟な集荷対応や特定米穀など副産物の取り扱い強化
柔軟な集荷対応とは、担い手の作業の省力化や、物流コストの削減をはかるため、物流会社や輸送手段を確保している業者と連携して、庭先から集出荷施設や実需者へ直送するなどの仕組みをモデル的に構築し、それによってJA・連合会の出荷拡大につなげるということです。
また、今まで扱っていなかった特定米穀などの取り扱いも強化し、品ぞろえの拡充による販売力の強化を生産者所得の向上につなげたいということです。
担い手への生産提案推進
それからJA未利用者、低利用者への契約栽培の積極的な推進です。既存の生産者も重要ですが、これに加えて大規模担い手であるJA未利用者などニーズに応えつつ、多収米生産や複数年契約などを生産提案してJAに出荷してもらい、生産者と実需者を結びつける取り組みの拡大が必要だということです。
また、多収品種種子の安定的な生産・供給体制の整備のためにも、種子産地や種子生産法人などに対して、出資等も含めて関係強化にも取り組みます。つまり、多収品種の取り組みは、種子の生産、供給から実需者販売の段階まで一貫して取り組む仕組みを構築しようということです。(図7)それから無菌米飯や米加工品の商品開発・販売拡大にも取り組みます。とくにパックご飯市場に自ら事業参入します。
(図7)JA未・低利用者への積極的推進による契約栽培の拡大と種子の確保
物流の効率化や買い取り拡大も
物流面では10年後の全農統一フレコンの実現と、6年後に紙袋輸送の80%をパレチゼーション輸送とすることをめざします。パールライス事業については、流通コストの削減と精米取扱数量の拡大を通じて競争力の強化を図るため体制整備をすすめます。
今後はデジタルトランスフォーメーション拡大に対応し、ITを活用した担い手・JA・連合会を結ぶシステム構築の取り組みも進めます。
実需者直接販売は21年産で取扱数量の70%を目標としましたが、将来的は90%をめざします。また、買い取りも21年産は取扱数量の50%を目標としましたが、将来的には70%をめざします。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日