米:2021年 農協協会 JAの米実態調査から
【JAの米づくり実態調査結果】(1)需要に合った生産 なお途上 省力化技術が課題2021年9月13日
(一社)農協協会では、毎年、全国のJAの協力を得て「JAの安心・安全な米づくりと防除対策について」と題した実態調査を実施している。このほど今年2月~5月にかけて実施した2021年調査結果がまとまり、その主要な部分を紹介する。
【調査の概要】
この調査は、水稲作付面積100ha以上の全国547JAを対象に、各JAの水稲関係担当者(営農・購買)に回答してもらった。調査方式は郵送による自記入式アンケート。調査期間は2021年2月15日~5月31日で回答数は481件(回収率87・9%)だった。
地区別の回答数は次の通り。
○北海道=46件(回収率95・8%)
○東日本地区(東北6県、関東7都県、甲信越3県、北陸3県)=205件(同89・5%)
○西日本地区(東海4県、近畿6府県、中国5県、四国4県)=150件(同83・3%)
○九州地区(九州7県、沖縄1県)=80件(88・9%)
担い手への農地集積4割
最初に回答があった対象JAの2020年度の水田面積平均や、集荷率など本調査のバックグラウンドとなるデータを紹介しておきたい。
JA管内の平均水田面積は3421ha。北海道は3475ha、東日本は4525ha、西日本は2388ha、九州は2442haとなっている。
2020年産の作況指数回答を集計したところ、全国では「97」で北海道「106」、東日本「101」、西日本「94」、九州「86」となった。
JAの集荷率の全国平均は54%で北海道は80%、東日本は62%、西日本は37%、九州は48%だった。
担い手への農地集積率も回答してもらっている。全国平均では38%となった。地区別にみると北海道69%、東日本41%、西日本30%、九州30%だった。政府は2023年までに担い手への農地集積率を8割とする目標を立てているが、今回の調査で2025年度の見通しについての回答は全国平均で46%。もっとも高い北海道でも72%との見通しで、東日本は49%、西日本は37%、九州は38%にとどまった。
現場では担い手への集積は進むものの、政府の目標とはほど遠い見通しだ。
主食用米の生産動向
主食用米の作付面積は、2020年度の全国平均が1920ha。単純に平均水田面積(3421ha)とくらべてみると、作付け率は56・5%でJA管内の水田の約4割を転作していることになる(図1)。
5年後の2025年の作付面積の見通しは1871haで▲3・2%となる。
一方、生産量の5年後見通しは▲1・1%にとどまる。主食用米の需要は毎年10万tの減少が最近のトレンドで毎年の生産量で1・4%程度の減少に匹敵する。本調査のJAの回答集計では、主食用の生産量は大きく変わらない見通しだが、今後の需要動向によって産地がどう対応しようとしているのか、注目される。
ただ、地域による違いは明らかになった。
主食用米の作付面積見通しを地域別にみると、北海道は▲0・7%、東日本は▲4・4%、西日本は▲1・6%、九州は▲0・3%となっている。東北、関東、北陸の米主産県を含む東日本が主食用作付けを減らす割合がもっとも多く、逆に九州を含む西日本では、現時点では主食用米生産の維持を図る方向が示された。
輸出用 飼料用米が鍵
主食用米の需要が減少する傾向が続くなか、少なくとも国内市場向けの主食用生産は需要に合わせた生産が求められ、水田を主食用以外の他用途の米や、麦・大豆などの作付けに転換していくことがこれまで以上に産地に求められている。
今回の調査結果から加工用米(図2)は全国ベースでは平均152haから5年後に164haと増やす見通しが見られた。ただし、地域差があり北海道(158ha→165ha)、東日本(195ha→220ha)は増やす意向が見られるのに対して、西日本や九州はほぼ横ばいとなっている。
米粉用についても(図3)全国ベースでは平均35haから5年後に40haに増やすという見通しが見られた。地域別では東日本(53ha→62ha)が増加傾向を示したが、その他は横ばいとなった。
加工用米は用途によって需給に変動がある。最近の動向ではコロナ禍で日本酒の需要が減少した。ただし、今年上半期の輸出実績では日本酒は昨年同期比で91%増と2倍近い伸びを示した。
また、冷凍米飯の需要も増加傾向から横ばいとなり、加工用米の需要全体としては減少傾向が指摘されている。ただし、今年上半期のパックご飯の輸出実績は50%以上となった。
米粉についても国内外を問わず需要は拡大している。ノングルテン米粉の第三者認証制度が整備されたことから海外での需要が伸びると見られている。
今後、海外市場も含めた需要動向を捉えてJAが産地にいかに反映させていくかが注目される。
飼料用米への転換も水田フル活用のために重要となっている(図4)
飼料用米の作付面積は全国ベースで平均173haだった。5年後には195haと増える見込みだ。生産量は平均888tが同1014tとなるという結果だ。
一方、WCS用稲の作付けは165haが5年後には166haとほぼ横ばいという結果となった。北海道、東日本では若干増える傾向が見られたが、九州では減少傾向が示された。
飼料用米の単収は全国平均で536kg。北海道は594kg、東日本は558kg、西日本は503kg、九州は500kgとなった。
ちなみに主食用米の単収は全国平均で488kg。北海道は505kg、東日本は514kg、西日本は478kg、九州は428kgだった。
飼料用米は主食用米にくらべて単収は多く、水田活用の直接支払い交付金の全国ベースの標準単収(530kg)とほぼ同水準との結果となった。ただ、地域によっては標準単収を下回る地域も想定される。
飼料用米も含めて畜産・酪農の生産基盤の強化と持続可能な畜産生産に向け自給飼料の転換への需要は今後高まっていくと見られることから、水田の作付けをどう誘導していくかが課題となる。
増加見込みの輸出用
新市場開拓米として政策的にも助成金で支援する輸出用米は作付面積の全国平均が5ha。5年後には45haの見通しで約30%の増加が見込まれている(図5)。
地域別にみると北海道が39haから48haへ、東日本は38haから52haへと増える。九州も18haから35haへと倍増に近い見通しだ。西日本は横ばいという結果だった。
農林水産物の輸出では米も重点品目の1つで政府は輸出産地育成にも力を入れる。1000t以上の輸出をめざす産地を対象にしているが、農水省によるとこれまでにJAを含む40近い産地が手を挙げたという。コスト削減を図りながら生産振興に取り組むことが求められている。
国内産への需要が増えている麦・大豆の作付けも期待される。
ただし、調査結果からはほぼ横ばいで推移する見込みだ(図6)。大豆は平均322haが334ha、小麦は419haが425haへと推移する見通しが示された。
コシに人気 密苗普及へ
5年後の主食用米の品種の見込みを聞いたのが図7。全国で作付けがもっとも多いと見込まれるのは「コシヒカリ」、次いで「ヒノヒカリ」、「ななつぼし」の順になった。
地域別の第1位は北海道は「ななつぼし」、東日本が「コシヒカリ」、西日本が「コシヒカリ」、九州は「ヒノヒカリ」となった。
今後、普及すると見られる栽培技術でもっとも多かったのは「密苗」で、ついで「疎植栽培」、「密播」となった(図8)。
水田農業の大規模が進むなか労働力の確保が課題で作業負担の軽減が求められている。それぞれ技術が普及していく理由として挙げられたのは「作業負担の軽減」が多い。また、当然、育苗費の削減にもつながることが期待されている(図9)。
大規模化が進むなか、JAにとっては集荷も含め大型法人などへの対応も課題となる。
今回の調査で農業法人や大型生産者への対策強化の必要性を聞いたところ「必要あり」との回答は85%だった。
(次回は防除対策についての調査結果を紹介します)
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