米:特集
【米のCE品質事故・火災防止強化月間】現地ルポ・JAあいち豊田 豊田CE(下)2022年8月10日
全国の大規模乾燥調製貯蔵施設の管理・運営改善に取り組む全国農協カントリーエレベーター協議会、JA全農、公益財団法人農業倉庫基金の3団体は、毎年8月1日から10月31日までの3カ月間を「米のカントリーエレベーター品質事故・火災強化防止月間」に定め、事故防止の徹底を呼びかけている。今回は「整理」「整頓」「清掃」「清潔」の4Sの徹底はもちろん、現場職員の創意工夫でそのレベルを向上させているJAあいち豊田の豊田CEを訪ねた。
4S(整理・整頓・清掃・清潔)モデル 常に刷新
JAあいち豊田の豊田カントリーエレベーター
米の荷受の時期は生産者への連絡も欠かせない。CEでは約200人の利用者の作付け品種と刈り取り時期などの一覧表を作成し、荷受が終わったかどうかをチェックしていく。その日の荷受がない生産者に電話をして状況を確認し、刈り取りを促すといった地道な作業も怠らない。
池田頼紀主幹(前豊田CE勤務。現在は高岡営農センター勤務)は「生産者が作った米の品質を一定に保つためにも、予定していた荷受期間内に終わらせるようにしています。そのため生産者への連絡など連携が必要です」と話す。
「カイゼン」に学ぶ
食品を扱うCEとの意識のもと、同JAは8年ほど前に環境美化や作業安全をめざして4Sの徹底などに取り組んだ。そのモデル施設となったのが豊田CEだ。
各CEの担当者まかせになっていた管理、運用を見直し、安全できれいなCEのために取り組むべきことを整理し、モデル施設から他CEへ波及させ、全体の高位平準化を図ろうというのが狙いだった。
取り組んでみて気がついたのは、不要なものの多さ。補修工事などで余った部材など、担当者はいつかは役に立つと思って保管しているものの、結局は使わないものが目立った。
また、掃除用具や工具類を誰もが使いやすいように整理することが必要ということも現場の点検で分かったことだった。それは工具類の数をきちんとチェックする意識にもつながった。
事務所内に棚を移動し工具などの管理徹底
実はこうした取り組みには外部の目が生かされている。
豊田CEは永田主幹と池田主幹のほか、6人のパート職員が働いているが、そのなかにはトヨタ自動車のОBもいるという。彼らにはトヨタの「カイゼン」の意識が身についていて、どうすれば整理、整頓され安全で衛生管理も徹底した職場になるか、これまでにいろいろな提案があった。「たとえば、道具類を一カ所に整理して、誰でも見えるようにする、といった提案はトヨタのОBのパート職員からありました。外部の目で分かったことです」と永田主幹は話す。
意識の共有を大切に
管理簿できっちり管理
豊田CEはJAあいち経済連主催の2021年度カントリーエレベーター環境美化コンクールで優秀賞を受賞したが、参加の理由は8年前からの取り組みをコンクール参加を機にもう一度見直してみようということだった。
見直しのために、休憩時間を利用してスタッフに作業安全への注意を促すとともに「もう一度、現場を見直して問題点を洗い出そう」と池田主幹は呼びかけた。もともと午前10時から10時30分までは、事故が起きやすいとして休憩時間とし、危険な業務を確認していたが、その時間を利用して認識の共有を図ったという。
その結果、不用品の整理と工具・用具棚の移動を実施した。使いやすいからと荷受場にあった棚はほこりを被ることもあるため、事務所内に移した。以前は工具が乱雑に並ぶこともあったが、今は置くべき位置にラベルを貼っていつも整然と並べられているようした。
また、以前は持ち出した工具をCE内のどこかにうっかり置き忘れて、別の作業に移ってしまうこともあり、次にその工具を必要としている人が困るということもあった。そのため今回は工具の「持出管理簿」を作成した。持ち出した日付け、工具名、返却日を使用者が記名する。管理簿は月ごとに管理する。
パレット置き場をテーピングで分かりやすく
清掃道具は2カ所に整然と並べられている。CE内には台車やパレットの置き場などの位置を示すテーピングを行っているほか、設備への入口など開閉されるふたは色の違うテープで囲んでいる。そのほかはしごの置き場には、安全な置き方を写真で示している。
「火災防止」については、消火器の位置が把握できるよう配置図を作り事務所内に貼り出して、火災に備えている。
消火器の配置図を事務所内に掲示(写真左上)
ほ場巡回で「備え」万全
そのほか現場にはユニークな工夫もある。
何本のもレーンが走る選果場などで「頭上注意」のステッカーはよく目にするが、ここでは写真のように短冊状の紙をぶら下げている。頭上注意のステッカーがあっても頭をぶつける人が後を絶たなかったので、ある職員が考えた。この短冊をガイドに、そこをめがけてヘルメットをぶつけるように進めば、安全に潜り抜けられる。実際に体験してみたが、目からうろこ、だった。こうした創意工夫の努力を重ねてきている。
短冊をガイドに安全管理
8月には米の収穫と荷受が始まるが、永田主幹たちCEの職員は営農指導員などとともに稲作部会のほ場巡回に参加する。今年の生育状況を見て、いつごろから荷受が始まりそうかなど確認する。それをもとに荷受に備える。CE職員がほ場巡回に参加するというのはあまり聞かない。
「生産現場と情報を共有することが品質向上になり、しっかりと荷受体制を組めることになります」と永田主幹。ニーズに合わせた生産者の米づくりをしっかり支え、消費者とつなぐCEとして着実な実践がそこにある。
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