【クローズアップ】業界一体で家族酪農の後継者確保 Jミルク、地域の経営継承へ新メニュー 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年5月6日
Jミルクは、生乳生産の半分を担う家族酪農の後継者づくりへ特別対策に着手した。酪農団体と共に、乳業メーカーも支援し、持続名可能な地域酪農を維持する他作目にはない取り組みに注目が集まる。
都府県の中小経営に着目
Jミルクは生産者団体、乳業メーカー、牛乳販売業者の生処販による、酪農乳業の発展、情報発信を担う組織だ。10年後の業界の発展のため長期展望を描いた「提言」もまとめ、具体化を進めている。
今回の家族経営の後継者確保後押しは、その一環だ。2020年度から乳業メーカー自らが拠出した5カ年の生産基盤強化特別事業をスタートしている。後継者づくりは、この中の新メニューを追加した。特に生産基盤沈下が著しい都府県の中小家族経営に注目した。申請期間は6月30日まで。
「後継者難」を救え
酪農は、他作目に比べ比較的後継者確保が進んでいる。だが内実は、規模の両極化が加速し、メガ、ギガと言われる大規模な企業的経営の生産割合が高まっている。だが生乳生産の半分近くは、中小規模の家族経営が担う。これらの経営を維持し、生産全体を底上げしていくことが急務だ。
そこでJミルクは、主に都府県の家族酪農を対象に後継者づくりを応援することにした。中央酪農会議の全国基礎調査(2017年度)でも経営者の平均年齢は、10年前に比べ北海道1.6歳上がったが都府県は3.1歳も上昇した。それだけ、高齢化が進んでいることを裏付ける。後継者への円滑な経営交代が進んでいないことも示す。同調査では50歳以上の「後継者なし」も増えている。このまま放置すれば、跡継ぎがなく経営離脱、酪農家の戸数減に拍車がかかりかねない。
第三者経営継承も視野に
今回の後継者支援の支援は、親子関係ばかりでなく中間を通じた第三者継承も対象としている。酪農は大型施設を有し、新規参入者が一から始めるのでは初期投資がかかりすぎる。そこで後継のいない酪農の経営を施設、乳牛など資産そのまま引く継ぐ仕組みも、地域酪農の維持には有効な手段だ。
そこで支援の対象者は、39歳以下の後継者、第三者継承予定者、酪農に従事して約10年以内の後継予定者、さらには40歳から49歳の後継者の4パターンに分けた。一牧場当たり50万円を助成するが、最後の40~49歳後継者のケースは同20万円とする。いずれにしても、後継者確保の背中を後押しする〈きっかけ〉としての資金支援を行いことが重要だ。一定の年齢を重ねても、経営承継の可能性があれば支援するため40代の後継者が経営を継続するケースでも支援する。
全体の助成の大前提は、家族労働力を基本として、経産牛500頭未満の家族経営だ。大規模経営は国の支援策なども充実し後継者確保が進んでいるため除外している。助成に際しては、具体的で中長期的な経営計画の策定を求める。
家族経営協定も促す
さらに家族経営協定締結も促す。家族協定は、女性を含め家族内の役割分担や責任の所在を明確にして、世代交代を着実に進める効果が期待される。いわば、協定締結と後継者育成、確保は"表裏一体"の関係にある。
そのため、新たに家族協定締結、加えて既存の協定見直しを対象に、一戸当たり5万円を助成する。
乳業者も基盤維持に助成
Jミルク特別事業の最大の特徴は、生産者ばかりでなく大手、中小問わず乳業メーカーも生産基盤の維持、拡大のため乳業増頭、酪農家の生産拡大の資金的に後押ししていることだ。こういった仕組みは、他の作目にはない。「国産生乳がなければ乳業メーカーも成り立たない」(川村和夫Jミルク会長・明治HD社長)中で、今回は大規模農家ばかりで、都府県の中小の家族酪農の経営系継続を視野に据えた。
先のJミルクの中長期の酪農乳業将来ビジョンを明記した「提言」に沿った"多様な酪農経営体の展開"の具体化の実践でもある。
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