【クローズアップ】畜酪価格決定下旬と大幅遅れ 生乳需給・補給金が焦点に 農政ジャーナリスト伊本克宜2021年12月6日
2022年度畜産・酪農政策価格・関連対策は、決定時期が大幅に遅れる。例年より2週間遅い12月20日の週となる見通しだ。加工原料乳価格はコスト高を踏まえ「現行水準以上」実現が最大焦点となる。乳製品過剰の国の支援策も課題だ。
■自民農林人事で2週間遅れ
畜酪対策は例年、12月上旬の木曜日が事実上の決定日となってきた。今年なら12月9日となる。だが、総選挙が衆院議員の任期満了4年を超え10月31日まで延び、その後に組閣、自民党役員人事などとなったため、農林幹部決定も遅れ、異例の下旬決定となる。
具体的には、6日の週から自民党内の議論を始め、23日木曜日の農水省が食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、政策価格・関連対策を示すと見られる。
岸田文雄首相は6日開催の臨時国会で2021年度補正予算案の与野党論戦を経て速やかに可決する。その後、22年度予算案の審議なども行う。この間に、畜酪関連で自民党農林関連合同会議での農水省「巡る情勢」説明や北海道や南九州の自民党農林幹部の現地ヒアリングなど、国会審議と並行した論議とならざるを得ない。つまりは、21日の週が極めて窮屈な日程となる。
■政治決着巡り大揺れか
やはり、記録的な乳製品在庫積み増しの酪農関連が大きな焦点だ。問題は生乳需給問題にとどまらず、生産抑制、円安で加速する燃油高、輸入飼料値上げ、物流コスト上昇などここに来て、課題が山積している。
ここで注目されるのが、農林新幹部の「突破力」だ。特に、トップの調査会長に就いた江藤拓元農相の言動に注目が集まる。11月30日の農林合同会議で江藤氏は自身の農林・食料戦略調査会を「総合農林政策調査会」に改名すると表明した。元々、調査会は総合農政調査会の名称が長く続き、農政の柱の一つに農畜産物輸出が位置付いたのも踏まえ「食料」の言葉が入った経過がある。それを以前に戻したとも受け取れ、自身の指導力を示した。
こうした中での、年末ぎりぎりの異例の畜酪決定を関係者は「加工補給金などは役所が言う算定通りにはいかないのではないか」との見方が出ている。畜酪論議は、総選挙での与党勝利、7カ月後の来夏の参院選も射程に置き、例年になく政治決着の様相を強めるのは間違いない。
■現地キャラバンで不満噴出
畜酪「大揺れ」の予兆は既にある。
政策決定が大幅遅れとなる中で、農水省畜産局は「露払い」とも言うべき11月下旬に調整官ら実務責任者が北海道の酪農主産地を訪れ意見交換を重ねた。
そこでJA組合長らから噴出したのは、「現在の乳製品過剰はコロナ禍の不可抗力だ」「酪農家自ら需給改善努力を行っている」「国の支援が欠かせない」などの現状への切実な声と、募る将来不安だ。こうした将来不安と国への不満は今後、国会議員を介して政府に跳ね返ってくる。農水省の現地キャラバンは、今年の畜酪対策の難しさを肌で感じたはずだ。
■北海道酪農家自ら90億円負担
道内の酪農家の不満は、身銭を切っての対応でも乳製品過剰が一向に改善しないいらだちがある。7月に20年ぶりに畜産局が復活して、畜酪日本一の北海道でも関係者の期待が高まった。しかし、足元の経営状況は悪化の一途をたどるばかり。勢い生産現場では「国は何をやっているのか」との不満が募る構図だ。
生乳需給改善へ全国最大の指定生乳生産者団体・ホクレンは2020年度以降、酪農家拠出による生乳販売対策を実施。21年度は当初予定の80億円(生乳キロ2円に相当)に加え、新たに10億円を加えた総額90億円で、輸入品との置き換えによる国内生乳の需要拡大を実施している。いわゆる「出口」対策だ。だが、400万トンある肝心の飲用牛乳の家庭内需要が伸び悩む半面で、生乳生産はなかなかブレーキがかからない。結果、需給ギャップが広がる。
■22年度は道内生産ブレーキ踏む
需給ギャップは、放置すれば結局は酪農家の経営に跳ね返ってくる。そこで、ホクレンが苦渋の選択として、22年度は生産自体を抑制する「入り口」対策にも踏み出す。
21年度生乳生産計画対比で101%と増産にブレーキをかける。うち1%分は新規参入などの枠で、実際は前年度計画と同量に抑えなければならない。実績対比としないのは、今年計画オーバーで多く搾乳した酪農家が有利にならないようにするためだ。つまり「正直者が馬鹿を見ない」措置とも言える。
■コスト高、加工急増対応が課題
飼料や燃油の価格が上がり、物流費アップも加わる。農水省は12月下旬の補給金算定時に直近のコスト高にどう対応するのか。
既に北海道農協酪農・畜産対策本部は、22年度補給金等要求で「現行水準(生乳キロ10円85銭)を上回る設定」を決めている。中でも、改正畜産経営安定法下の生乳流通自由化で指定団体に交付される同2円59銭の集送乳調整金の引き上げは大きな焦点となる。
さらに、年年末年始の生乳廃棄回避も念頭に加工向けの急増で345万トンある総交付対象数量オーバーへの特別支援策も課題だ。
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