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【Jミルク改訂版・戦略ビジョン】酪農基盤強化など7重要課題 「目標数値」は示さず2024年10月7日

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次期酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)の論議が本格化する中で、Jミルクは持続可能な酪農乳業の将来方向を示す改訂版・戦略ビジョンをまとめた。見直しは5年ぶり。根幹的課題として酪農生産基盤の維持・強化を掲げた。新たに7項目のマテリアリティ(重要課題)に再整理したのが特徴だ。環境調和型酪農・乳業も重視していく。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

■情勢激変、5年ぶり見直し

酪農乳業の将来方向を示す戦略ビジョンは2019年に策定した。通常、水田農業ビジョンや園芸振興計画など品目別で将来計画をまとめる場合は、行政や農業団体などが主体となるが、5年前のJミルク戦略ビジョンは農業団体と乳業メーカーなどミルクサプライチェーンを構成する生・処・販一体で策定したのが特徴だ。

今回は5年ぶりに見直した。改正食料・農業・農村基本法制定や来春の新たな基本計画、次期酪肉近策定などの動きを踏まえた。さらに、19年度の戦略ビジョン策定から酪農乳業を取り巻く環境が大きく激変したことがある。

改訂版は初めて、有識者の検討なども経て策定した。前ビジョンの29の取り組み事項は引き継ぐ。例えば、国内酪農の生産基盤強化では、就農者と経営移譲者とのマッチング、経験共有のための酪農家ネットワークへの支援などだ。

以下は改訂版・戦略ビジョンの七つの柱だ。
◎酪農・乳業7マテリアリティ
◇根幹的課題への対応
・日本酪農の生産基盤の維持・強化
・安全で安心される良質な牛乳乳製品の安定的な提供
・牛乳乳製品の消費拡大
◇社会的要求への対応
・温室効果ガス排出量の削減
・労働者の安全と権利の確保
・アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理
◇見(魅)せる化
・日本の酪農乳業の意義と持続可能な取り組みの見える化

■改正畜安法下で非系統拡大

さらに、前回のビジョン策定時と様変わりしたのは改正畜安法下で生乳流通自由化が加速したことだ。

2017年6月施行の改正畜安法は、加工原料乳補給金制度を柱とした酪農不足払い法を廃止し畜安法に酪農分野を組み込む形で成立した。畜産経営安定法とは名ばかりに当初から生乳需給混乱による酪農家の経営不安定を招かないか懸念が指摘されていた。これまでの酪農不足払い法に基づく指定生乳生産者団体による生乳全量委託、一元集荷、多元販売から転換し、部分委託が増えてきた。生乳流通自由化は、需給調整を難しくして〈畜産経営不安定法〉とまで言われている。

前回のビジョン策定時からの環境変化の中で、「強まる酪農経営の脆弱(ぜいじゃく)性と牛乳乳製品市場の不安定性」として購入飼料主体の経営の脆弱性が強まる」「畜安法の改正以降、生産の抑制等もあり自主流通が拡大」などと具体的に言及した。「自主流通拡大」とは、指定団体を通さない非系統の生乳流通が増えていることを指す。非系統業者はJミルクなどの需給調整、脱粉削減対策などに参加していないために、業界挙げた生乳需給調整が機能せず、飲用牛乳の市場価格二極化、生産現場での不公平感増大などが大きな課題となっている。

■前回提言の増産目標は消える

改訂版では目標数値を示さず、今後の酪肉近の具体的議論にゆだねるとした。

なぜ改訂版では目標数値が消えたのか。もともと当時の数値設定に肝心の需要(用途・価格等)が考慮されていないなどの問題点があった。現在は、国の支援を得ながらJミルク傘下の関係者挙げて脱粉過剰是正の最中で、需要確保が最重要課題となっている。改訂版でも、根幹的課題の一つに国産牛乳乳製品の消費拡大を掲げた。「需要なくして生産なし」で、需要創造型生産拡大を基本路線としたとも見られる。

需給変動に対応するため、弾力的な需給対応への仕組みの検討・構築も目指す。ただ実効性のある需給調整には結局、国の指導による非系統も含めた業界全体での取り組みが欠かせないとの見方も強い。

■「みどり戦略」踏まえ環境重視明記

「社会的要求への対応」として環境調和、気候変動の課題に備える点も改訂版の大きな特徴だ。

社会的改訂版公表時に大貫陽一Jミルク会長(森永乳業社長)は「持続可能な酪農乳業へ再スタートの位置づけ」と強調。隈部洋副会長(全酪連会長)は「食料安保の観点からも生乳生産力の維持・強化は喫緊の根幹的課題だ。国の『みどり戦略』も踏まえ環境問題などにも対応していく」とした。

そこで、酪農家が排出する温室効果ガスを算定できる簡易算定シートを作成する。排出量の実態を把握した後、削減目標や目標達成に向けたガイドラインもつくる。アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した飼養管理も明記した。

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