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【クローズアップ】生乳受託ついに1万戸大台割れ 中酪24年度上期生産は「下振れ」2024年10月18日

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厳しい酪農経営環境が続く中で、中央酪農会議の生乳受託数がついに1万戸の大台を割り込んだことが分かった。離農の高止まりが大きい。2024年度上期(4~9月)の生乳生産量は約342万トンで前年度対比98・3%。一方で飲用牛乳は需要低迷が続いている。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

大手乳業も含め牛乳価格のばらつきが目立ってきた。改正畜安法に伴う非系統の取扱量拡大は飲用牛乳の小売価格引き下げ圧力ともなっている(首都圏の食品スーパーで)

大手乳業も含め牛乳価格のばらつきが目立ってきた。
改正畜安法に伴う非系統の取扱量拡大は飲用牛乳の小売価格引き下げ圧力ともなっている(首都圏の食品スーパー)

■中酪傘下の受託酪農家9981戸に

離農が高止まりする中で、中酪傘下の生乳受託酪農家戸数がいつ1万戸の大台を割り込むか注目されていた。8月時点で北海道4353戸、都府県5628戸の9981戸まで減少したことが分かった。

主に地域内で生乳流通をしている沖縄48戸(中酪会員外)を加え、かろうじて1万29戸となっている。沖縄を含めた24年度上期の受託戸数は10月末にまとまるが、最終的にも1万戸割れの可能性もある。

8月時点の酪農離農率は都府県が6・5%と高止まり。北海道も4・5%と高い水準だ。数度にわたる乳価引き上げはあるが、飼料代など生産コスト高をカバーしきれず、先行き不安から小規模層ばかりでなく中堅の酪農家も経営中止のケースが各地で散見されており、大きな問題となっている。

■酪肉近主テーマに戸数維持対策を

受託戸数1万戸割れという国内酪農の大きな転換期の中で、食料安全保障確立の視点からあらためて生産基盤の維持・強化の議論が問われる事態となってきた。

農水省は現在、今後10年の畜産酪農の在り方を示す酪農肉用牛近代化基本方針(次期酪肉近)策定を目指し畜産部会で議論中だ。10月4日には酪農乳業をテーマに集中審議した。同省は11論点を示したが、特に議論になったのが安定的な生産を可能とする生乳需給調整の構築だ。

同省が詳細なデータを基に時間を割いたのが論点5に示した飼養頭数の今後の見通し。雌牛の確保状況は数年後の生乳生産動向を左右するだけに、飼養頭数を検証することは極めて重要だ。次期酪肉近では2035年度の生乳生産目標をどうするのかも大きな焦点で、生産者サイドからは現行780万トン維持の声が出ている。この場合、大きな障害は飲用牛乳、脱脂粉乳を中心に生乳需要の伸び悩み。同省の飼養頭数分析は今後、搾乳牛の先細りも裏付け、生産目標下方修正の一つの根拠とする狙いもあるのかもしれない。

こうした中で、受託1万戸割れは、生産基盤で重要な柱である酪農家そのものをどう維持していくかの視点を畜産部会で改めて論議を深め、次期酪肉近に反映させていくことが欠かせない、持続可能な酪農は、生乳生産の担い手酪農家の持続可能性がなければ成り立たない。

■9月に4カ月ぶり増産に

中酪がまとめた上期の用途別販売乳量は、全国で341万8175トン(前年度対比99・5%)、うち約6割を示す北海道198万3506トン(100・2%)、都府県が143万4668トン(98・6%)となった。

◎24年度上期指定団体別生乳生産
・全国 341万8175(99・5)
・北海道198万3506(100・2)
・都府県143万4668(98・6)
うち都府県指定団体別
・東北 22万5570(95・8)
・関東 50万5861(99・9)
・北陸  3万2263(95・5)
・東海 14万2929(97・7)
・近畿  6万8462(99・6)
・中国 14万2297(100・6)
・四国  4万9291(96・6)
・九州 26万7992(98・7) 
※単位トン、カッコ内は前年度対比%

上期全体を見ると、年度当初予測からやや「下振れ」の結果となった。

北海道は、脱脂粉乳在庫削減のため22、23年度の2年間続けた減産計画から転じ、24年度は微増の増産計画を立てた。上期では前年度比0・2%増にとどまった。

ただ直近の9月を見ると、同2・4%増と生産拡大ペースを上げてきた。生産抑制からの脱却に加え、前年の猛暑の反動、分娩時期のずれなどが要因だ。半面、都府県は9月同2・7%減と引き続き前年を下回ったまま。全体では前年度比0・3%増の53万5551トンと、4カ月ぶりに前年度実績を上回った。

■飲用低迷の複合要因

24年度上期の用途別販売実績は、主力となる飲用牛乳等向けが前年度同期比3・1%減と低迷が続く。脱粉過剰削減につながるヨーグルトなどの発酵乳も同1・1%減だ。Jミルクが17日に発表した最新需給短信でも、牛乳類販売個数は前年比95%台と苦戦を強いられている。

用途月販売のうち、北海道の9月飲用牛乳を見ると前年同期比2・7%減と落ち込んでいる。夏場の7~9月は生乳最需要期で、特に9月は夏休みが明け学校給食向け牛乳供給から、需給ひっ迫となる。都府県の不足分を北海道から運ぶ道外移出量が増える。この時期のマイナスは、結果的に道内処理で脱粉・バターの乳製品仕向けが増えることを意味する。

中酪では夏場の北海道からの飲用向け減少を「さまざまな複合要因が重なっている」と見る。改正畜安法に伴う、非系統の北海道からの大量生乳移出も要因の一つだ。生乳需給調整機能を弱め、飲用牛乳市場の価格低下にもつながっている。

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