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【酪肉近見直し】需給緩和で肉牛増頭抑制 繁殖「後継者なし」7割、経営基盤維持に課題2024年10月24日

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農水省は23日、今後10年間の酪農肉用牛近代化基本方針(次期酪肉近)見直しで、肉牛で論点整理を示し集中論議した。和牛肉の需給緩和から当面、増頭の抑制を継続するとした。一方で3万戸割れが目前の繁殖経営は7割が「後継者なし」で、生産基盤の維持が大きな課題となる。肉牛は過度の輸入飼料依存、高コストの構造問題をどう是正するかが焦点だ。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

畜産部会肉牛・食肉_2.jpg

■アキレス腱・飼料問題

次期酪肉近策定に向けた畜産部会は、最大の焦点の酪農問題に続いて、肉牛関連で農水省が需給関連、生産基盤、経営問題、消費者ニーズ、輸出など論点を示し多角的に議論した。次期酪肉近策定のスケジュールは11月中旬飼料・その他の議論を経て2025年1月構成案、2月骨子案、3月中旬本文案・下旬答申となる。
 
酪農、肉牛ともキーワードは「持続可能性」。国内畜酪農家戸数が急速に減る中で生産基盤と経営基盤をどう維持・強化し国産畜産物を安定的に供給していくかが大きな課題だ。

畜酪で共通課題として出たのが需要拡大と輸入飼料依存への対応だ。23日の畜産部会でも「コストを考えた収益性から自給飼料を一層拡大すべきだ」などの指摘が生産者から出た。同省は「栄養分の高い青刈りトウモロコシを出来る限り増やしていきたい」などと応じた。自給飼料促進に農水省は2025年度農業予算概算要求で新規に「飼料生産基盤立脚型酪農・肉用牛産地支援」61億円を見込んでいる。

ただ国内畜産は、年間1200万トンを超す輸入トウモロコシに過度に依存した加工型畜産となっており、持続可能性には自給飼料の割合を高めることが不可欠だ。

今後、11月中旬に予定されている畜産部会は飼料問題をテーマとするが、課題の濃厚飼料の自給率アップは、輸入飼料とのコスト格差が大きく、具体的に、国産自給飼料振興で同省がどういった具体策を出すか注目が集まる。輸入飼料価格が高止まりする中で、配合飼料価格安定制度の持続可能な在り方も意見が交わされる見込みだ。

■国産需要拡大と輸出の「二刀流」

肉牛を巡る情勢は、生産から加工・流通、販売まで多岐にわたり課題山積で、零細家族経営も多い子牛生産の繁殖経営と、大規模経営が着実に増える肥育経営とは全く違う政策課題対応が迫られる。畜産部会で農水省が示した主な論点は次の通り。

【肉牛振興の主な論点】
◇需給関連
・国産肉の需要を増やしつつ輸出を拡大
・需要に応じた牛肉の供給能力維持
・当面は和牛需給緩和改善へ増頭対策の中止を継続。新規需要開拓を促進

◇生産基盤
・高齢繁殖雌牛から優良な若い雌牛への更新
・近交係数上昇を踏まえ希少血統など遺伝的多様性の確保

◇経営関連
・生産コスト低減へ肥育牛の早期出荷検討
・国産飼料の生産・調達可能量に見合った繁殖経営
・放牧・青刈りトウモロコシ・稲わら等国産飼料の利用促進
・外部支援組織の活用、スマート農業による生産性向上

和牛枝肉の価格低迷が続く見通しの中で、当面は増頭の抑制を続けるとした。畜産クラスター事業をテコに畜酪基盤の強化を進めてきたが、同省は昨年、増頭から質の向上へ重点を移す方針を示しており、同部会でも国産消費拡大、需給改善を最優先とする考えを改めて示した。

和牛肉の輸出拡大にも大きな期待が高まっている。畜産部会では「中国への輸入解禁の働きかけを引き続き強めてほしい」との要望も出た。

■コスト低減へ放牧、早期出荷

持続可能な肉牛経営へコストの5割近くを占める飼料費の割合をどう下げるかも大きな課題だ。

飼料費が舎飼いに比べ約3割低い放牧や粗飼料多給型経営のメリットが事例とともに示された。

脂肪交雑を高める改良が進み、A5等級が和牛去勢で6割を超す現状を踏まえた問題点の指摘も相次いだ。脂肪交雑を抑えた値ごろ感のある牛肉生産、若者は赤身肉を好む傾向などの意見も出た。サシ重視のため慣行の肥育期間約30カ月と同26カ月の早期出荷を比べ、収益性で早期出荷が有利だとのモデル事例の紹介もあった。

■繁殖経営の3万戸割れ目前

喫緊の課題は国産和牛肉の需要拡大と輸出の拡大だが、中長期的には過度の輸入飼料依存畜産からの脱却で持続可能な国内生産基盤の維持・強化だ。

畜産部会で馬場利彦JA全中専務は意見書を提出し次期酪肉近で「多様な消費者ニーズへの対応と持続的経営の両立が最重要課題」と指摘した。

国産牛肉供給の源、肝心の国内の肉牛農家の弱体化が進めば生産振興や輸出での需要活路も空論となりかねない。深刻なのは中小農家が多い繁殖経営だ。3万戸の大台割れが目前で、規模別に見ると「後継者がいない」と答えた農家が平均で67%、50頭以上層でも50%が「後継者がいない」とした。

次期酪肉近では、中小家族経営を含めた持続的な生産基盤確立を目指し、生産現場が希望と意欲を持つ計画策定が問われている。

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