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【クローズアップ】25年度全中畜酪政策提案 生産意欲損なわぬ酪肉近目標を 国産飼料拡大と生乳需給強化も2024年11月13日

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JA全中は次期食料・農業・農村基本計画策定、農業予算編成を前に、2025年度の畜産酪農政策要求を決めた。次期酪肉近では、生産意欲維持を大前提とした生乳生産目標、生乳需給調整機能強化、多様な牛肉生産と持続可能な経営の両立などを明記。12月下旬決定の25年度畜酪対策の政策要求も具体化した。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

水田地帯でも飼料用トウモロコシの生産拡大が徐々に広がってきた(宮城県東松島市の農業生産者法人・アグリードなるせで)

水田地帯でも飼料用トウモロコシの生産拡大が徐々に広がってきた
(宮城県東松島市の農業生産者法人・アグリードなるせで)

■11月22日農政全国大会で決議

全中の政策提案のキーワードは、特に、大規模経営ばかりでなく、中小・家族農業を含む多様な担い手を支援し、地域ぐるみで農業を発展させる視点を前面に出した。

◇次期酪肉近関連の政策提案

・食料安保の確保へ国産畜産物の供給能力の維持に向け、規模の大小に関わらず持続的な畜酪経営の実現
・適正な価格形成や経営安定対策を通じ、中小・家族経営を含め畜酪経営安定に万全を期す
・生産現場の意欲を損なわない生産数量目標の設定
・国産飼料基盤に立脚した畜酪の実現、それに必要な施策を次期酪肉近に明確に位置付ける
・国主導の生乳需給調整拡充へ畜安法運用上の規律強化、系統外も含め関係者一体となったセーフティーネット確立
・肉用牛は、消費者ニーズを踏まえた多様な牛肉生産と持続可能な経営両立を明記。その実現のため早期出荷などコスト低減技術の確立・普及
・環境負荷低減などの技術開発・普及の加速化

◇2025年度畜酪対策の政策提案

・和牛肉などの需給状況悪化を踏まえ和牛肉の需要拡大、優良子牛生産に向けた緊急対策
・生乳需給調整機能の強化へ系統外の全国的な需給調整機能に参画する仕組みの構築と畜安法運用上のさらなる規律の強化
・牛乳・乳製品の需要拡大、国産チーズ奨励金の継続
・配合飼料価格安定制度は現行の影響緩和機能を堅持するとともに、積立財源の安定確保に向けた環境整備を実施
・加工原料乳生産者補給金は生産コスト上昇を踏まえ酪農経営再生産を将来に向けた投資が可能となる単価水準に設定するとともに、十分な総交付対象数量の確保
・集送乳調整金は物流コストの上昇や条件不利地を含む地域からあまねく集乳を確実に行える単価水準に設定
・肉用牛繁殖経営の保証基準価格は生産コストの上昇を踏まえた子牛の再生産が確実に確保できる水準に設定
・飼料自給率向上対策の拡充。地域計画に基づく適地適作による飼料生産の推進。耕畜連携やコントラクターの強化、自給飼料の広域流通への取り組みに支援
・稲WCSや飼料用米、青刈り・子実用トウモロコシなどの国産飼料について、耕種経営の継続的な生産支援の拡充
・生産基盤対策の強化へ畜産クラスター事業の必要な予算の確保

政策提案は当面と今後の「2段ロケット」となっている。12月に決定する25年度畜酪政策価格・関連対策要求と25年3月に決定する次期酪肉近の2本柱だ。JAグループは11月22日、自公政権の与党政策責任者を招き25年度農業重点予算などを踏まえた基本農政確立全国大会を構えるが、この中でも畜酪政策重点の実現を求める。

■酪農家1万戸割れの危機意識

政策提案では、畜酪を巡る情勢を「生産現場は全国的に営農継続が危ぶまれるほどの甚大な影響を受けている」と危機感を表した。

今後10年間の畜酪の方向性を示す現在、検討中の次期酪肉近では「将来展望をもって営農継続の方向性を示すとともに、裏付けとなる予算確保、食料安保の確保に向けた着実な実践につなげる必要がある」として、政策提案理由を説明した。

畜酪農家の飼養戸数は急激に減少している。酪農家は指定団体の受託戸数はついに1万戸の大台を割り込む事態に陥っている。

■生乳目標は現行780万トン念頭

今後の大きな焦点の一つは10年後の生乳生産目標の扱いだ。

需要見通しを考慮しつつ「食料安保を確保するため生産現場の意欲を損なわないよう設定すること」と、現行水準780万トンを念頭に置いた。

11月7日の全中会長会見で、馬場利彦全中専務は「酪農家の生産意欲に配慮した目標設定が極めて重要だ」と強調した。

■系統外含む生乳需給どう確立

酪農は現在、脱脂粉乳の過剰在庫削減と飲用牛乳の需要低迷に直面し、実効性のある生乳需給対策実施が喫緊の課題だ。改正畜安法で、系統外の自主流通業者への「二股出荷」が可能となり、酪農家間の不公平感、生乳需給調整への支障が表面化している。

政策要求では国主導の需給調整機能強化のため、「畜安法運用上の規律強化」との表現で需給対策を伴う経営安定の法律の趣旨を実現すべきと迫った。

具体的には、指定団体傘下ではない系統外も含めた全国一体となった需給調整機能発揮によるセーフティーネットの確立を挙げた。

■和牛肉低迷に緊急対策

25年度畜酪対策で、畜産では和牛肉の価格低迷からの脱却が緊急課題となっている。

和牛肉需要拡大緊急対策として23年度補正予算で50億円を手当てして、食肉事業者が行う新規需要開拓をはじめ消費拡大に充てた。和牛肉低迷と連動し黒毛和種の子牛価格も下がっている。24年度限りの緊急支援事業として、和子牛のブロック別平均売買価格が下回った場合に、優良子牛生産に取り組む農家に対し1頭当たり3万円の奨励金を交付した。

現在も和牛肉枝肉相場、和子牛価格は厳しい状況が続いていることから、7年度対策をどうするかが大きな焦点となる。

■自給飼料に子実トウモロコシも明記

自給飼料確保は、輸入飼料が高止まりする中で持続可能な畜酪にとって欠かせない課題だ。財源不足が顕在化している今後の配合飼料価格安定制度の存続にも関わる。

自給飼料のポイントは、粗飼料に加え、年間1200万トンを超す輸入トウモロコシ代替の濃厚飼料をどう国産で自給するか。こうした中で全中政策提案では、稲WCS、飼料用米に加え、青刈り、子実用トウモロコシの自給率引き上げを挙げた。注目は子実トウモロコシの扱いだ。

濃厚飼料代替の栄養価の高い子実用トウモロコシは、輸入ものに比べ国産のコストは5割高など価格差が大きいとして振興には消極的とみられる。ただ濃厚飼料の自給率は13%と低い。これを底上げするには子実用トウモロコシ振興がカギを握るのも確かで、支援策の大幅拡充で着実な飼料自給率アップが問われている。

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