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【クローズアップ】畜酪政策価格・関連対策論議が本格化 酪農1万戸割れ、離農加速に危機感(2)2024年12月16日

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【クローズアップ】畜酪政策価格・関連対策論議が本格化 酪農1万戸割れ、離農加速に危機感(1)から続く

乳牛.jpg■「核心」突く改正畜安法の課題

1万戸の大台割れとなった酪農は、生乳流通自由化を促す改正畜安法が大きな難題となっている。2日の中酪会見でも、改正畜安法に伴う生乳需給調整の機能不全の課題と離農加速との関連が問われた。

こうした中で、13日の自民畜酪委での農水省の「めぐる情勢」で、松本平畜産局長が「改正畜安法施行後の需給調整の在り方等に関する検討状況」をテーマに3ページにわたる異例の説明を行った。同法は、流通自由化を促し条件付きで系統外も補給金対象に組み入れた。結果的に指定団体機能を弱め系統外の生乳販売業者の生乳取扱量が年々拡大し、50万トン突破も時間の問題と見られる。同省は生産現場の声として「需給調整が難しくなった」「酪農家間の不公平感が生じている」などを明記した。そのうえで系統外も含め全国的な生乳需給調整の重要性に理解を求めていくとした。

改正畜安法に絡み簗和生自民畜酪委員長は「系統外が生乳出荷を大きく増やしていることは憂慮すべき事態だ。規律の強化で強力に全国協調の参加を促す仕組みを検討したい」とした。さらに「まず現行法の規律強化を進めるが、法律には5年後の検討・見直し規定もある」と法改正も視野に今後、自民畜酪委でも議論を重ねたいとの考えを示した。

生乳需給は過不足を定期的に繰り返しており、需給コントロールは酪農経営の持続的生産にとどまらず、国産牛乳・乳製品の安定供給にも欠かせない。それが、流通自由化、酪農家の選択自由の幅を広げることで、需給リスクはホクレンなど指定団体傘下の酪農家に偏重している。需給調整、23年度までの減産は指定団体離れにもつながり将来不安から中堅層の離農決断につながった可能性もある。法律そのものに「需給調整」を明記し実効性を担保しなければ、結局は系統外の「いいとこ取り」や二股出荷の拡大につながりかねない。

■農業団体は生産基盤維持求める

25年度畜酪対策で農業団体も運動を活発化している。念頭にあるのは飼料価格をはじめコストの高止まりで離農加速が顕在化する中で、生産基盤を維持し持続可能な畜酪経営を目指すことだ。

JAグループは12日、江藤拓農相に酪農家の離農加速や和牛子牛価格の低迷など、経営環境の厳しさを強調。JAグループの政策提案を踏まえ畜酪農家の再生産を支える政策価格や関連対策の充実を求めた。地元・宮崎が屈指の畜産地帯でもあり畜酪制度に精通している江藤農相は「提案の内容を踏まえ努力したい」と応じた。

13日の自民畜酪委でも各農業団体から畜産の危機的状況の窮状と経営支援を訴える要請が相次いだ。全中酪農委員長の樽井功氏は「生産基盤の弱体化が続けば、消費者に国産牛乳・乳製品の安定供給ができなくなりかねない。さらに堆肥の供給が途絶するなど、地域の農業・社会に大きな影響を及ぼす」と強調。同畜産委員長の谷口俊二氏は「肉牛繁殖経営は急速に離農が進み、わが国が誇る和牛の生産基盤が危機的状況になっている」と訴えた。

また酪農政治連盟委員長の柴田輝男氏は改正畜安法の運用改善で「生乳緩和時の対応で生産者間に不公平感が生じている。また、飲用牛乳価格の乱れが生じているとの指摘もある」と生産現場の懸念を伝えた。国産生乳約730万トンのうち400万トン近い飲用牛乳等は、数度の飲用向け生産者価格引き上げで小売価格を値上げした一方で、割高感が出て消費低迷が続いている。スーパー店頭の牛乳小売価格は現在、中小メーカーの1リットル当たり190円台と大手乳業の同260円台以上に「二極化」しているのが実態だ。

大きな価格差の裏には、改正畜安法に伴い流通ルートが単線で経費が安い系統外の割安な原乳があるとの指摘が強い。農水省は、畜産部会などで公式的には原乳価格に差はあまりなく流通段階の対応が大きいとの見解を示すが、あくまで業者聞き取り結果に過ぎず、実態は不透明なままだ。価格両極化に伴い、非系統の原乳などを使った低価格牛乳に消費者購買が移るなどの流通上の課題も起きている。放置すれば、牛乳市場全体の価格水準引き下げにつながり、最終的に酪農家の乳価に跳ね返りかねない。

■酪肉近も「射程」に展望を

13日の自民畜酪委では現在、畜産部会で検討中の10年先の酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)も射程に置いた、長期的な議論も併せて進めるべきとの意見も出た。

簗自民畜酪委員長は「今回の畜酪論議は極めて重要な時期だ。基本計画、酪肉近なども議論されており、生産現場にいかに将来に展望を持ってもらうか」と、中長期展望も念頭に置いた議論を深める考えを示した。現在の畜産部会での議論は、テーマが広がり総花的な話に終始しているのが実態だ。今回の政府・与党の畜酪論議、特に改正畜安法の課題や生需給調整の在り方などが年明けの今後の畜産部会の論点整理などに反映される可能性もある。

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