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【クローズアップ 畜産・酪農対策】生乳需給参加が事業要件 「欠陥」改正畜安法是正へ農水省方針2025年1月31日

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農水省は29日、自民党畜産・酪農対策委員会で、生乳需給調整機能不全が指摘されてきた改正畜安法の新たな対応策を示した。これまで省令改正による規律強化にとどまっていたが、全国参加の生乳需給調整実現へ動き出した。「畜産クラスター事業」など主要8事業で需給調整を要件に加えた。ただ、どれだけ需給調整が効くのか先行きは不透明だ。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

需給調整が酪農安定のカギ。特に脱粉過剰解消へヨーグルト消費拡大が問題となる

需給調整が酪農安定のカギ。特に脱粉過剰解消へヨーグルト消費拡大が問題となる

■畜産部会で議論不完全

改正畜安法が生乳需給調整に支障となっていることは、畜産政策上も大きな課題だ。

本来、今後の畜酪の将来像を集中的に議論する農水省の食料・農業・農村政策審議会畜産部会で次期酪肉近と合わせ対応方向を具体化すべきだろう。だが、肝心の畜産部会は総花的な議論ばかりが先行して、核心の部分に踏み込んでいない。農業団体や乳業メーカー代表がたびたび改正畜安法の問題点を指摘してきたものの、農水省は規律強化を徐々に進めてきたにすぎない。

一方で改正畜安法の問題点を突いたのが、2025年度畜酪政策価格・関連対策を審議した自民党畜酪委だ。簗和生委員長は改正畜安法の問題点、是正を鋭く追及した。今回の需給調整実施者を補助事業採択要件とする原動力にもつながったと言っていい。

■流通自由化で指定団体に負担偏在

2018年施行の改正畜安法は、生乳流通の自由化が大きな特徴だ。酪農家にとって出荷先を自由に選択できるなど、対応によっては所得向上につながる。一方で、指定生乳生産者団体の結集率低下に伴う生乳需給調整機能の弱体化が当初から課題として指摘されてきた。

大きな問題となったのが、新型コロナ禍で外食需要が減少し生乳需給緩和、特に脱脂粉乳過剰在庫が深刻になってからだ。生乳需要の主力の飲用牛乳の消費低迷も重なり、酪農・乳業関係者挙げての対応が不可決となった。Jミルクによる生産者、乳業メーカー双方の拠出と国の支援で輸入から国産への切り替えなど脱粉在庫解消対策を実施してきた。

特に乳製品主力産地の北海道は、生乳需給改善へ脱粉在庫削減を加速するため22、23年度の2年間、指定団体ホクレン傘下の酪農家は減産を余儀なくされた。一方、改正畜産法で補給金対象ともなる非系統の自主流通業者出荷の酪農家は減産しないなど、生産現場で大きな不公平感が生じた。もともと需給調整の実効性に「欠陥」があるとされた改正畜産法で、指定団体に需給調整の負担が偏重した形だ。

■需給調整クロコン導入

農水省が示した今後の対応方向は、新たに酪農関連の主要8事業を対象に、25年度から生乳需給調整への協力を補助金支給の要件にする「クロスコンプライアンス」を導入する。酪農地帯に広く普及する施設整備を支援する「畜産クラスター事業」など主要8補助事業を明記した。

◇改正畜安法の需給調整対応状況
・指定団体が契約違反への対応を強化する
ための省令改正実施
① 期中の出荷先変更には契約違反を問えるよう運営を明確化
② そのうえで、契約違反を繰り返す生産者からの翌年度分の取引申し出は拒むことができるようにする
・生乳需給調整施設の整備支援(2024年度補正予算)→稼働率向上へ既存加工施設の融通についても議論
・全参加型の脱粉在庫対策など需給調整→新たに2025年度から全国需給調整の資金拠出を主要補助事業の申請要件とする「クロスコンプライアンス」を導入

■Jミルク脱粉対策基金に拠出

需給安定に向けた全国的な取り組みの負担を条件とする。生産者団体や乳業メーカーでつくるJミルクが実施する、脱粉在庫削減対策の基金への拠出を想定している。

生乳需給調整の「クロスコンプライアンス」は、今回の8事業に加え、25年度以降の対象拡大も検討する。

生乳出荷先にかかわらず、総出荷量を基準として相応の負担を求める。25年9月までは移行期間として、10月分から拠出実績を確認する方針だ。

■酪農安定のカギは「需給」

持続可能な酪農経営のカギは生乳需給の安定だ。改正畜安法は、もともと個人の自由選択の発想が大前提としてあり、共販を通じた全体参加とは相いれないことが大きな問題となっている。

需給ひっ迫時は酪農家個人の利益追求も理解するが、現在のような需給緩和時は全体で対応しなければ、経営環境は一向に改善されない。

改正畜安法施行時は需給ひっ迫時だった。だが生乳需給は歴史的に見ても不足と過剰を繰り返すミルク曲線を描く。問題は過剰時の対応なのだ。酪農家1万戸割れが大きな話題となったが、改正畜安法に伴う生産者間の不公平感拡大、系統傘下の酪農家に偏重した脱粉在庫解消の負担が、酪農家の離農を加速した可能性もある。

■改正畜安法は「農協つぶし」

1960年代半ばから半世紀続いた加工原料乳生産者補給金等暫定措置法(酪農不足払い制度)を廃止して、現在の改正畜安法に至る道筋は、2015年前後の安倍一強政治に由来する「官邸農政」と軌を一にする。

全中の農協法外し、全農の株式会社化の検討、さらには生乳一元集荷・多元販売を担保する現行指定団体制度の廃止は、指定団体を酪農家の単なる選択肢の一つとした。系統、非系統の「二股出荷」も可能で、需給調整をなおさら困難にしている。

当時の安倍晋三首相自ら、国会で改正畜安法の狙いを「自由選択による酪農家の手取り増加」と言明した。だが、裏の狙いは指定団体の弱体化による「農協つぶし」だったのではないかとの指摘も強い。

■拡大する非系統

農水省は改正畜安法施行後の、生乳取り扱いの指定団体、非系統の出荷割合も示した。非系統が着実にシェアを伸ばし、2023年で43万トンと50万トンの大台に迫っていることも分かった。

牛乳・乳製品の用途別過不足で臨機応変に生乳需給調整を実施する系統シェアは94%、改正畜安法に伴い補給金対象となった非系統・自主流通は22万トン、シェア3%、もともと補給金交付されていないアウトサイダーは21万トン、同3%。

指定団体の生乳共販率はかつて98%程度だったが、改正畜安法以降、年々割合を低めている。関係者は共販率9割が「デッドライン」とも見る。

現在、牛乳の末端小売価格が1リットル当たり中小メーカーの190円前後と、大手メーカーNB(ナショナル・ブランド)牛乳の同280円前後と両極化している。改正畜安法で非系統の安い原乳が低価格牛乳を拡大しているとの見方も強い。農水省は原乳価格にあまり差はみられないとしているが、このまま価格両極化を放置すれば全体の価格低下につながりかねない。結果的に生産者の飲用向け乳価にも波及していく。

今回の生乳需給参加を補助事業採択の要件としたことで、どれだけ系統に酪農家、生乳出荷が戻るのか。あるいは変化がないのか。その動向は、実効性ある需給調整を左右する。

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