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【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日

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次期酪肉近策定では、改正畜安法是正も問われている。こうした中で農水省は「畜安法改正以降の状況と課題」をまとめた。流通自由化を促す改正畜安法で非系統のシェアが拡大する中、全参加型の生乳需給調整が最大の課題と指摘。補助事業要件に需給調整を加えたが、どれほど実効性が上がるかが焦点だ。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)

■改正法の成果と課題

27日のJミルク持続可能な酪農の討論会でも改正畜安法の問題点が指摘された

27日のJミルク持続可能な酪農の討論会でも改正畜安法の問題点が指摘された

農水省がまとめた資料で、改正畜安法の要点、効果、課題を見よう。現状のとらえ方と問題意識が分かる。

◇改正畜安法の内容
・生産者補給金制度を暫定措置から恒久的な制度に新たに位置付け
・指定団体以外も乳製品仕向けにしやすく
・酪農家が創意工夫を生かせる環境整備
・指定団体を経由しない加工向けにも生産者補給金を交付
◇効果
・生産者補給金制度が安定的な制度となり、畜産経営の安定に寄与
・補給金の交付対象拡大で①出荷先の選択肢拡大し、創意工夫で所得向上の機会創出②指定団体は流通コストの削減や乳価交渉の努力促進③飲用出荷からバター等加工向け出荷促進
◇環境の変化
・コロナ禍、円安などで生乳需給悪化、酪農家のコスト増大
・乳製品在庫拡大、コスト増加を反映させる乳価交渉の環境悪化
・全国で協調した需給調整の取り組み創設
・改正後、系統外の生乳シェア拡大
◇現状
・在庫削減への負担は系統に偏重
◇課題
・全ての関係者で全国的な需給調整の必要性は共通
・需給調整機能の確保とその拡大が、改正畜安法の残された課題として、この数年間の需給緩和の中で顕在化

■自画自賛と「現実」

改正畜安法の最大ポイントは生乳流通の自由化だ。これまでの加工原料乳生産者補給金制度は、農協系統の指定生乳生産者団体による「一元集荷多元販売」で用途別需給をコントロールしてきた。季節別にも過不足が生じ、需給に応じ主力の飲用向けと加工乳製品向けの用途別販売が欠かせない。改正畜安法は現行指定団体制度を廃止し補給金対象を複数にした。

法改正の農水省の「自画自賛」は「効果」を列挙した箇所に典型だ。補給金制度は、暫定制度から恒久法となり畜産経営の安定に寄与。補給金の交付対象の拡大に伴い出荷先の選択肢広がり酪農家の所得向上の機会創出につながったとした。事実なら、酪農家にとってはメリットは大きい。だが、畜産部会のたびに生産者、乳業メーカー双方から課題、問題点が指摘され、抜本見直し要望が繰り返されるのは、制度欠陥の証しというほかない。

■「一部」の酪農家のみメリット

畜産経営安定に寄与、酪農家所得向上の機会創出の「現実」は、「一部の」と付け加えねばならない。

そして欠陥制度の問題は、乳製品過剰時に一気に噴出する。

■「一元集荷」明記と非系統50万トン

改正畜安法第1条、法の目的には「畜産物の需給の安定等を通じた畜産経営の安定を図り」、国内の畜産の健全な発展を促すとある。

問題は実効性のある需給調整の有無だ。改正畜安法は、経済学にある「合成の誤謬(ごびゅう)」が当てはまる。部分最適が全体ではうまく機能しないという理論だ。生乳過剰の中で、一部の酪農家が系統、系統外「二股出荷」も含め、増産と所得増加の果実を得ながら、全体の9割以上を占める指定団体傘下の酪農家が需給調整を担う。結果、非系統の生乳取り扱いは年間50万トンの大台に迫る。一方で系統共販率はかつての97%から9割ラインに近づいている。

それにしても矛盾しているのは、次期酪肉近骨子案11ページ「経営安定」に「一元集荷多元販売と相対交渉により乳価が安定している酪農」と明記したことだ。改正畜安法で指定団体「一元集荷」を廃止しながら、依然として農水省自ら必要性を認めている。

■国主導と全参加型需給調整

農水省は改正畜安法の「課題」を、「需給調整機能の確保とその拡大」を挙げ、具体的には「残された課題として、この数年間の需給緩和の中で顕在化」したとした。

これでは第1条法の目的の需給を通じた畜産経営の安定が大きく揺らいでいる。つまり自画自賛した「畜産経営の安定に寄与」にはつながらない。問題は、過剰時の全国的な需給調整を通じた畜産経営の安定、さらには国によるコスト負担軽減策など迅速な経営支援策の実施だ。

現状は、これまでの指定団体傘下の酪農家負担偏重から全国参加型の需給調整実施へ徐々に動き出している。今後は、農水省が打ち出した「需給調整」への拠出を補助事業要件とした「クロスコンプライアンス」の行方を注視したい。農水省は改正畜安法の規律強化との表現だが、もともとはこの改正法に内蔵されている規制緩和、流通自由化に起因している。その意味では、第1条に「需給調整への参加」明文化など法改正が必要だが、農水省にその動きはない。

■脱粉処理、直近は国負担減少

自民党畜産酪農委員会などでも非系統を含めた生乳需給調整実施に当たっては、あくまで国主導で対応すべきだとの指摘が相次いでいる。

そこで、農水省は「改正畜安法の現状と課題」の資料で、生乳需給全体に重くのしかかる過剰脱粉低減の実施状況データを示した。2020年から2024年までの5年間で、総額520億で輸入代替、飼料への転用を実施。国費は全体の4割、192億円に充てたと「国主導」を説明した。だが、在庫問題が深刻化し北海道で生乳生産抑制が始まった2022年からの直近3カ年に限ると、在庫対策300億円のうち、国は72億円と全体の4分の1にも満たない。残りはJミルク、ホクレンの民間負担だ。

生乳需給は数年単位で過不足を繰り返す傾向が強い。畜産経営の安定を担保するためにも、改めて「国主導」の需給調整の本気度が問われている。

■「これでは畜産不安定法だ」

改正畜安法に関連し、27日のJミルク主催による講演討論会で具体的な意見が出た。

2024年10月のパリ世界酪農サミットを踏まえ、「日本の持続可能な酪農をどう進めるか」をテーマとした討論会で、次期酪肉近と改正畜安法の課題質問に、小林信一静岡県立農林環境専門職大学名誉教授は「改正畜安法は国内酪農の経営安定に大きな問題だ。実質は経営不安定法と言っていい」とし、酪農直接支払いなど新たなセーフティーネット導入を求めた。司会の生源寺眞一東京大学・福島大学名誉教授も、改正畜安法を含む一連の官邸農政主導の農協改革を「誰がいつどこでどのように決めたかわからない。これでは農政は無責任となりかねない」と指摘した。小林氏は、当時の改正畜安法制定に関連し、反対の立場で国会での参考人として意見陳述した。

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