最優秀賞に秋田の柴田さん 全農酪農体験発表会2014年9月16日
第32回全農酪農経営体験発表会
最優秀賞に秋田の柴田さん 全農酪農体験発表会
創意工夫で未来につなぐ
地域に合わせ多様な酪農
◆長命連産を実現
この発表会は優れた酪農家が経営内容や技術を広く関係者に発表し、全国の酪農家の経営安定や発展に寄与することを目的に今年で32回を迎えた。農林水産祭にも参加している。
来賓の松島浩道・農水省生産局長は「先進的な実践の貴重な体験発表は意義深い。これらの取り組みが全国に広く普及し、環境に配慮しつつ足腰の強い酪農経営が確立されることを期待します」(代読)とあいさつした。
最優秀賞に選ばれた柴田瑞穂さんは、秋田県由利本荘市で父と夫と柴田牧場を経営している。「引き継がれていくことを願って」と題して発表した。
搾乳牛は70頭。「一頭一頭を大切に」が方針で、「早期発見・早期治療。作業中でも牛に目が届く範囲で管理。作業を面倒臭がらない」など、子牛から経産牛まで個体管理にこだわり、疾病も少ない。また、個体乳量よりも「長命連産」を追求。会場を驚かせたのは廃用時は平均9.2才で平均産次が6.3産という飼養実績だ。
39haの牧草地で自給飼料を生産しているが、さらに充実をめざし休耕地や耕作放棄地を積極的に借り入れている。その結果、乳飼比30.7%と非常に低い経営を実現している。
牧場から地域への発信をめざして平成21年には酪農教育ファームの認定を受ける。牧場での体験受け入れにとどまらず、移動式の「出前牧場」も実践し、乳製品消費拡大や食農教育にも貢献している。
家族とのコミュニケーションも重視。「搾乳作業中、家族はずっと話してます」。
人にとっても牛にとっても環境のいい牧場づくりをめざしている。
柴田さんは「表彰されたのは両親が今までがんばってくれて土台をつくってくれたから。草地更新など地味な作業が評価されたのではないかとうれしく思っています。これからもがんばります」と喜びと今後の決意を語った。
◆地域と家族が基本
審査の結果、今回は2人に特別賞が贈られた。
千葉県野田市の知久久利子さんは江戸川の河川敷を活用し自給飼料確保に努めるほか、子牛に乳のみを給与し育成するホワイトヴィールの生産や、チーズづくりにも挑戦している。また、フェイスブックを活用して飼養管理方法の相談やチーズづくりの仲間を増やすなど
広くコミュニケーションを実践。酪農家の新しい姿を切り開いていることが評価された。
もう一人は島根県雲南市の日登牧場。場長の定本秀敏さんが発表した。自然に根ざした酪農から生まれる牛乳を求めてブラウンスイスによる山地酪農を実践している。木次乳業と一体的な経営をしており、近隣農家支援のためのヘルパー組合の立ち上げや、生産した自給飼料の低価格供給など、地域の酪農支援システムの一翼を担っていることも評価された。
そのほか北海道中標津町の田中洋希さんは、土づくり、飼料づくり、牛づくりという原点を重視して計画的に草地更新を行い、1頭あたり乳量も非常に高い経営を実現した。また、酪農とは「絡」農だ、と地域のつながりのなかでの農業経営の持続をめざしている。
沖縄県の高宮城実一郎さんは米軍機の騒音が響く基地の隣接地が農場だ。発表では一日100回以上も響き渡る「爆音」を紹介した。それでも乳量1万klを達成。繁殖成績もよく、自家育成による後継牛の確保を基本としながら、和牛受精卵の積極的に導入するなど収益性確保に努力している。
栃木県茂木町の河又潤さんは、中山間地域に位置しながら農地を集積して粗飼料の確保に努め、イタリアンライグラス、デントコーン、エン麦などを作付け飼料自給率7割を達成している。急傾斜を利用して足腰の強い牛を自家育成。粗飼料の収穫作業の共同化や、堆肥センターの積極利用など地域を重視した循環型農業を実践している。
◆多様な経営が必要に
こうした発表について審査委員長の小林信一日大生物資源学部教授は「多様な経営の酪農が全国で営まれることが重要だ」と強調した。また、JA全農の小原良教常務は「主催者としてこの会をこれからも続けていきたいと思う今日の体験発表だった。各地域の酪農家はそれぞれ条件が違うなか創意工夫され日々努力されている。いちばん感動したのは家族が結集し地域、仲間と絆を深めながら営農されている姿だった。これからも酪農家を支える努力をしていきたい」と語った。
また、当日は若者たちが酪農への夢を綴った作品を表彰する第8回全農学生「酪農の夢」コンクール表彰式も行われた。
(写真)
最優秀賞に輝いた柴田瑞穂さんと夫の睦さん
受賞者はつぎの通り。
【最優秀賞】
「祖父が導いてくれた道」後藤田茜(北海道中標津農業高等学校食品ビジネス科3年)
【優秀賞】
▽碇谷のぞみ(日本獣医生命科学大学応用生命科学部動物科学科3年)
▽安部竜司(大分県立農業大学校総合畜産科2年)
▽安達萌花(岡山県立高松農業高等学校畜産科学科3年)
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