肉用牛・酪農の生産基盤の強化で論点整理-自民畜酪小委2016年5月16日
自民党の畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)は5月12日の会合でこれまでのヒアリングや議論をふまえ肉用牛・酪農の生産基盤の強化に向けた論点整理を行った。
酪農は過重な労働負担や多額の投資が求められることから、戸数と飼養頭数が減少し生乳生産量の減少を招いている。TPP合意を受け関税削減の影響に対処するにはコスト削減など体質強化を図る必要があるが、そのためには何よりも乳用牛の頭数増大が求められている。
その実現のための課題と対応方向を以下のようにまとめている。
▽乳用後継牛の確保・育成の推進=性判別技術の活用で計画的な生産を推進するとともに、自家育成や地域内育成体制を構築していく。
▽分業体制の構築・省力化の推進=搾乳ロボットの導入とそれに適合した飼養管理システムの普及と定着。協業化法人の設立で規模拡大と人材確保、生産性向上につなげる。
▽飼養管理の適正化=乳用牛の供用期間の延長、子牛の損耗防止などのため、獣医師等の地域関係者の間で生産管理データを共有し、衛生管理、暑熱対策など適正飼養管理方法を普及・定着させる取り組みを促進する。
▽流通の効率化=指定団体が持つ(1)乳価交渉の代行、(2)条件不利地域を含む集乳の引き受けや集送乳の効率化、(3)価格の高い飲用乳と低い加工原料乳の調整などの機能を維持しつつ、酪農家の所得向上を図る観点から中間コスト、物流コストの削減など生乳流通の合理化を進める必要。効率的な乳業工場への再編を進める必要もある。
これらは先進的な取り組みとして実践している地域もあり、今後はさらに普及していく必要があるとしている。
また、肉用牛経営も高齢化、後継者不足で飼養戸数が減少、とくに高齢で小規模な経営が多い繁殖経営で飼養頭数の減少が著しい。それが肉用子牛の価格高騰を招き肥育経営を圧迫させている。
このような現状に対しては以下の課題と対応方向を整理した。
▽地域的な規模拡大の推進・分業体制=中小家族経営が少しずつでも増頭していけるようにキャトルステーションなどの仕組みによって、地域的な支援体制を構築。分娩管理、子牛育成、飼料生産など生産工程を地域内で分業することで労働負担を軽減、生産性向上を図る。
▽受精卵移植技術の活用拡大=交雑種雌牛の肥育前に和牛受精卵を移植する、いわゆる一産取り肥育などで交雑種雌牛も活用して和子牛生産を拡大することが有効。
▽情報通信技術(ICT)の活用促進=分娩時の雌牛監視や子牛の個体管理などが大きな労働負担となっていることから、ICTを活用した発情発見機、分娩監視装置、哺乳ロボットなどの技術を活用することが有効。放牧や繁殖と肥育の一貫経営への移行もコスト削減や生産効率の向上に有効。
また、自給飼料生産についても以下のように論点を整理した。
▽耕畜連携の強化と国産飼料の広域流通体制の構築=土地条件の制約から自給飼料の生産拡大が困難な状況にある地域では耕畜連携により生産される国産飼料を調達できるような取り組みを推進するため、国産飼料の広域流通体制を整備することが有効。
▽公共牧場の活用拡大と機能強化=公共育成牧場は700以上あるが利用率が5割未満の牧場が約4分の1を占める。生産基盤の強化を図るために活用を図ることが有効。
▽日本型放牧モデルの推進=肉用牛放牧の取り組みは中山間地の耕作放棄地や転作田を活用することで生産コストの大幅な引き下げを図ることが可能。放牧酪農は草地基盤の豊富な地域では集約放牧技術の導入で乳量低下の抑制と生産コストの低減を図ることで所得向上を図ることが可能。とした。
これをもとに議論を進め秋に取りまとめる。
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