第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・山田保高(滋賀県)2016年9月22日
第34回全農酪農経営体験発表会が9月16日に東京都内で開かれた。北海道から沖縄まで6人の酪農家がこれまでの経験と将来への夢を語った。今回は優秀賞に選ばれた山田保高さんの体験を紹介する。
「牛乳消費拡大の最前線へ ~しぼり継ぐことを誇りと思える牧場を目指して~」
滋賀県甲賀市信楽町
山田保高さん
乳を搾る仕事を尊敬の念をこめて、しぼり人(びと)と呼んでいるという山田さん。
人が乳をしぼりはじめて約1万年になる、と『人とミルクの1万年』という本を読んで知ったと話し、祖父、曽祖父、そのずっと昔、400代から引き継いできたしぼり継ぐことをこれからもしていきたいということが夢。
経営概況は経産牛が96頭、育成牛が75頭。最近ジャージーとブラウンスイスが増えてきたという。従業員数はスイーツ関係に10人。販売品目は生乳、瓶詰め牛乳、ヨーグルト、バター、スイーツなどと種類は多い。ジャーキーやブラウンスイスはチーズ作りもしていくので使っていきたいという。
創業は大正14年、祖父が京都の百万遍で酪農を始めた。乳搾りの名人だった祖父に、山田さんも乳しぼりを教わったという。
◇ ◇
昭和49年に滋賀県に移った。しかし第1次オイルショックがあり、牧場を始めたことが遅れたため、借入金等の据え置き期間がなくなり、返済に苦労しながらやってきたという。
昭和63年に牛乳販売を始める。生産調整がはじまって、あまり搾ってはいけないといわれ、搾りすぎると罰金があるほどだった。しかし、それで経営維持ができるか考えたとき、「自分でしぼったものは自分で値段をつけて自分で売っていこう」と考えたと話す。
農業者が商業に手をだすのは難しいと思いながらも、「やるなら乳業メーカーの差別化したい」。そこで低温殺菌ノンホモ牛乳をつくった。最初は生クリームが浮いてくるので、お客さんに分かってもらえず苦労もあった。
独自の飼料配合を行いながら、トウモロコシに代わる飼料として、おから、飼料用米やWCSを使って高い餌代に耐えられるようにしている。
飼料用米増産は国の政策としても行われている。子孫に美田を残さないといけないという使命感もある。
◇ ◇
平成13年に教育ファーム認証を取得し、認証牧場として、酪農の事などを子供たちや消費者に伝える活動を行っている。
そのときの時流にあった話を選ぶようにしており、たとえば宮崎県で口蹄疫が発生し大変な事態になった時には、その話も踏まえて伝えるようになった。29万頭以上、人間の役に立たずに殺されていった家畜の悲しい事実。おびただしいという形容詞が似合うが、その数は、広島と長崎に原爆を落とされて亡くなった人とほぼ同数になる。「子どもに話しながら、私はこれを口蹄疫反戦論とよんでいる」と話す。そうすることで人間の役に立たずに死んでいった動物の霊が沈められるのではと思う。
また、子どもたちに、牛がどんな仕事をしているか話すこともある。子牛を産み、乳を出し、糞尿をするが、これは肥料になると伝える。肉になる事も伝える。牛の背中に子どもを乗せると、「お尻があったかい」など反応を見せる。命ある同じ動物と接触することで命の大切さも教えてくれると話す。
このほか、観光客(大人)向けの酪農紙芝居講演なども行っている。
酪膳料理「和伊(わい)の店」を9月3日にオープンし、イタリアのチーズと和食の組み合わせで、健康への提案していきたいとも話す。
「牛に願いをミルクに夢を」が牧場のキャッチフレーズ。酪農を取り上げたドラマや漫画、そういった酪農の本などを通して、若者が酪農に興味もってくれると嬉しい。
審査講評では、おからや飼料用米など地域資源を活用していることが評価された。
(関連記事)
・第34回全農酪農経営体験発表会 優秀賞・久保淳氏(岩手県) (16.09.21)
・第34回全農酪農経営体験発表会 最優秀賞 (16.09.21)
・最優秀賞に北海道の高橋守さん、真弓さん-全農酪農経営体験発表会 (16.09.16)
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