持続可能な「放牧」から学ぶセミナー実施 NZ北海道酪農協力プロジェクト2021年3月11日
ニュージーランド政府とフォンテラジャパン(株)、ファームエイジ(株)が主体となるニュージーランド北海道酪農協力プロジェクトは2月22日、放牧酪農に関するWEBセミナー「放牧酪農WEBセミナー Vol.01」を開催。当日は酪農家、関係団体など、北海道と全国から約60人が参加し、ニュージーランドで普及している一回搾乳や季節分娩、環境対策をメインに、NZコンサルタントからのアドバイスとディスカッションを行った。
ニュージーランドの放牧の様子
日本の酪農では年間を通して子牛を産ませて乳を搾り、搾乳は朝と夕方二回行う「二回搾乳」が常識。ニュージーランドでも約20年前は二回搾乳が主流だったが、牛を搾乳施設まで移動させる手間がかかり、脚の事故が起こるリスクが高かった。さらに、頭数が多い場合、一日のうちの大部分を搾乳に割くことになることに気づき一回搾乳に切り替えた。当初は、一時的に乳量は下がったが、事故の回避や従業員のライフスタイルにも余裕が生まれ、3年もすると経営的にはプラスになったという。これらの技術は、フランスなどでも週末だけは一回搾乳にして余暇を過ごせるようにするなど、世界各地で取り入れられている。
ニュージーランドの酪農家アンドリュー・ハーディーさんは、15年前から持続可能な酪農経営について考え、選択肢の一つが一回搾乳だったという。「私の牧場では、土地の起伏が多く、搾乳施設からの距離もあったことが理由。自分自身が持続可能な農場かを測る指標として、経費、動物の健康状態、従業員の環境を設けた」という。さらに「一回搾乳においてポイントは、1haあたりの頭数、草の生産量、これらを最大限にすること。生産性を高め、同時に穀物飼料のコストも減らすことができる。NZでも従業員の確保が難しくなってきており、改善手段として1週間の労働時間をどれだけ削減できるかという点でも一回搾乳を取り入れたことで、結果的に従業員に余裕が生まれた」と説明した。
また、2つ目のトピックとして、持続可能な未来への取り組みとして木を植えるNZ酪農家について説明した。
ニュージーランドでは、法律で河川や水場の周りにフェンスを張ってウシが入らないようにしなければならないことになっている。それは、河川に汚染物質が入り込めば海に流れ、環境汚染になってしまうからで、植樹はその一環で行われている。
植樹に関しては政府からの補助もあるが、酪農家は経済的にも成り立つ必要があることから、政府や企業、農家の団体とも協議を重ね、全員が実現可能な目標を作ることが重要となっているという。
持続可能な目標を達成できると、環境にとっても産業にとっても利益がある。地域に持続可能な産業ができることや、商品に環境や動物に配慮しているということ価値が付与できることから消費者にアピールできるメリットといえる。さらに、地域の人たちに対し、こんな人が農業をやっている、こんな人が作っている生産物なのだという認識を作るための活動として重要な取り組みとなっているという。
まとめとしてNZコンサルタントのキース・ベタリッジ氏は、持続可能なスタイルかどうかは「放牧をしている人もそうでない人も、すべての農業者に共通してくる課題だが、放牧を行っている人にとってはより環境に対する意識や、生産物の付加価値を上げるなど、Win-Winの効果が出てくる」とコメント。さらに「日本でも同様にこのような話はいずれ出てくるのではないか。これらを実現するためには、今回のようなディスカッショングループのように、農業者だけでなく関係企業や政府などが、一度に新しい情報の共有を行う機会が重要になってくる」と話した。
木を植えるニュージーランドの酪農家
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