夏季の餌不足と殺虫剤使用に伴う被害を解消へ 農研機構2021年4月1日
農研機構はこのほど、セイヨウミツバチのための餌が少なくなる夏季に養蜂場近くに花畑を用意することで、作物や農地周辺の雑草にハチが訪花して起こる殺虫剤使用に伴う被害を低減できることを明らかにした。夏季の餌不足も解消し、蜂蜜生産や花粉交配用ミツバチの増殖に役立てる。
シロガラシを訪花するミツバチ
蜂蜜生産や施設園芸作物の花粉交配に広く利用されるセイヨウミツバチは近年、病気や餌不足、農薬曝露など多くのストレスを受け、国内外を問わず飼育が困難になってきている。
国内では、北日本を中心に水田近くの養蜂場で、夏季に殺虫剤曝露の影響と思われる被害が報告されているが、夏は餌源の花が減少し、水田の害虫防除とも重なることで被害が大きくなると考えられている。
試験では、殺虫剤曝露が生じやすいと思われる水田近傍に実験用の養蜂場(10個の巣箱)を設置。そこから約300m離れた遊休地に、緑肥・景観作物としても使われるシロガラシを0.3ha栽培。シロガラシを訪花した働きバチの背中にはICタグ(2×3mm角、厚さ0.5mm、重さ3mg)を貼り付け識別し、巣箱の入り口に設置した読み取り装置で識別した働きバチの出入りを計測し、水田の害虫防除で散布される殺虫剤の影響を軽減できるのかを確かめる実験を行った。また、花畑の誘引効果と比較するため、水田で殺虫剤を散布する24時間のみ、働きバチが通り抜けられない約2mmメッシュ程度の防風ネットで巣箱を覆い、働きバチが採餌できない状況をつくり曝露しない試験も実施した。
働きバチの花畑の利用採餌程度と死虫程度を比較した結果、シロガラシを利用していた働きバチが多い巣箱ほど、殺虫剤散布日とその2日後までに確認できた各巣箱前の死虫数は少なかった。これは、ミツバチが花畑で採餌することで、水田近くでの採餌が減少し、殺虫剤曝露が一因と思われる死虫数が減ったためと推定される。
また、殺虫剤散布した水田周辺に飛来しないよう網で覆った巣箱でも死虫は少なく、網掛けなしでシロガラシをとくに多く利用していた巣箱の方が、死虫数が少ない結果となった。これにより網掛けした間、餌や冷却用の水を取りに行けないため、炎天下に設置した巣箱が熱などのストレスを受けた可能性が示唆された。
今回の試験では、セイヨウミツバチの巣箱一つに対し必要な花畑の面積は明らかになっておらず、今後も検証を継続していく。こうした検証試験を積み上げていくことで、セイヨウミツバチを殺虫剤曝露から守り、夏季の餌不足を解消できる効果的な花畑の確保をめざす。
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