【クローズアップ:生乳処理】大型連休乗り切る 生産ピークで家庭需要拡大重要に2021年5月12日
Jミルクは最新の生乳動向を示す需給短信(5月10日付)で、5月大型連休の生乳処理は混乱なく進んだと明らかにした。だが、6月の主産地・北海道生乳生産ピークとなることを踏まえ、「家庭内消費の一層の拡大が重要」と呼びかけている。
生乳廃棄は当面回避
心配されていた、学校給食牛乳が止まる大型連休中の生乳廃棄は避けられた。まずは当面の生乳処理問題は乗り切ったと言える。
ただ、その分、保存のきくバター、脱脂粉乳の乳製品在庫が積み上がったことを意味する。問題は、外食やホテル、レストランなど業務用需要の先行き。飲用牛乳は圧倒的に家庭用が多いが、乳製品は業務需要の動向が、生乳需給全体を左右する。
ホクレン80億円出口対策
ホクレンは、2021年度乳価据え置き決着と合わせ総額80億円の「出口対策」を措置した。大手乳業はこの対策を最大現有効活用し生処一体で乳製品処理を進めている。大型連休の生乳処理にも効果があった。
緊急事態延長で業務需要低迷に拍車
生乳需給でJミルクが懸念しているのは、コロナ禍が一段と深刻化していることだ。同短信でも緊急事態宣言の延長や12日から愛知、福岡に対象拡大、さらにはまん延防止等重点措置の適用拡大が相次ぎ、大型商業施設の時短営業などで「業務用需要はさらに低迷の可能性がある」とした。10日の全国知事会では、緊急事態宣言の全国的発動も視野にコロナ対策を強化すべきとの提言が相次いだ。一層の需要縮小も想定される事態だ。
ヨーグルト消費も一服感
もう一つの懸念材料は、好調だったヨーグルト需要の一服感が鮮明になってきたことだ。ヨーグルトは脱脂粉乳の需要に結びつく。同短信では、ドリンク、個食、大容量の3タイプとも前年同期比(4月26日の週)で90%以下となった。3タイプとも90%割れはこれまでにない。機能性など新商品投入や天候次第で盛り返す可能性もあるが、今後のヨーグルトの需要動向に注視が必要だ。
家庭需要〈一本足打法〉は限界
飲用牛乳は家庭内消費がポイント。巣ごもり需要から牛乳消費は順調だが、同短信では全ての品目で前年同期比(同)マイナスとなった。ただ前年がコロナ禍初年度目で消費が堅調に推移したことを踏まえると、比較的安定的な伸びとは言えよう。
そこでJミルクの同短信でも「家庭内消費のさらなる拡大が重要」と明示した。だがこれは、野球に例えれば〈一本足打法〉と同じ。家庭内需要に頼っては、生乳需給は早晩、バランスを崩すことは間違いない。やはり乳製品の業務需要が支えてこそ、生乳の用途別需給均衡が成り立つ。家庭、業務用の〈二本足打法〉に早く戻らないと、生乳需給は安定しない。
コメは家庭備蓄で需給一段と緩む
家庭内消費で、もう一つの主力であるコメ需要は一段と低迷が明らかになった。巣ごもり需要でコメを買い求め家庭内備蓄が増えているためだ。米穀機構の4月の主食用米需給の現状判断DI(動向指数、100に近づくほど逼迫)は17と、過去最低だった2014年9月の16に次ぐ低水準となった。
牛乳はコメと違い備蓄が効かない。そこで保存できる乳製品対応となり在庫がたまる構図となる。生乳需給も、コメ需給緩和を踏まえた効果的な需要拡大策を打たなければならない。
6月増産の足音
生乳需給も当面、二つの山を越える必要がある。まず学給牛乳が止まる5月大型連休、さらには6月上・中旬に生産の伸び率がピークを迎える北海道の生乳生産動向だ。大型連休はホクレンをはじめ、関係者の需給対応で生乳廃棄は避けられた。次は今後1カ月にわたる増産への対応だ。6月増産の足音が高まる。これが、コロナ禍の業務用需要の低迷とどうリンクしていくのか。乳製品在庫増大は、今後の生乳計画生産とも絡むだけに、これから1カ月の生乳需給動向から目は離せない。
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