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【クローズアップ:畜産】食料サミットでJミルク「低炭素酪農」を模索 増産と環境両立が難問2021年9月17日

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Jミルクは、23日からの国連食料システムサミット(FSS)を前に、国際情報の発信に力を入れる。FSSでは畜酪の環境負荷も焦点となる。「低炭素酪農」を模索するが、生産現場では増産と環境保全の両立が大きな難問となっているのが実態だ。

Jミルクは国際レポートの定期発行などを通じ国際情報発信にも力を入れるJミルクは国際レポートの定期発行などを通じ国際情報発信にも力を入れる

■国際リポートでFSS特集
酪農乳業で構成するJミルクは、気候変動や環境重視の動きが今後の生乳生産に大きな影響を及ぼすと見て、国際情報の収集、自らの取り組みなどの情報発信に力を入れる。中心となるのが定期的に出す国際リポートだ。新型コロナウイルスが世界中に猛威を振るった1年前から発行を開始した。

今年夏季号では「食料システムの持続性確保へ」と題し、23日からのFSSを念頭にした特集を組んだ。FSSは食料安全保障、食品ロス削減、環境と調和、女性・若者の雇用創出など多岐にわたる。特集では「ほぼ全てにわたり酪農乳業に関連する」と、今後の国際論議の動向を注視している。

■酪農は食料、栄養提供で不可欠
日本はFSSでアジア・モンスーン地帯の特殊性を配慮した農水省の「みどりのシステム食料戦略」を説明する。経済大国・日本の発言は国際公約として記され着実な実行義務を負う。

FSS開催を踏まえ、国際酪農乳業組織が今春に共同声明を出し、国内の酪農団体と乳業メーカーなどで構成するJミルクも支持を表明した。
声明の中では、酪農はSDGsに関連し「飢餓ゼロ」「貧困の緩和」「ジェンダー平等」の面で大きく貢献していると強調。世界の人々に安全で栄養価の高い食品を日々提供しているとした。牧畜業は途上国をはじめ地域経済の自立を担い、「ジェンダー平等」に関連しては世界で8000万人の女性が酪農セクターに従事していると明示した。

一方で酪農乳業の国際組織・GDP(グローバル・デーリー・プラットフォーム)の幹部は日本の酪農乳業界に向け、温室効果ガス(GHG)削減への取り組み加速を求めるメッセージを出した。この中で「日本はGHG削減の先進地域に該当するが、国内排出量を算出し、日本の酪農システムに見合った排出量削減の手段を開発してもらいたい」と述べた。つまりは、低炭素化への具体的な「見える化」を求めているのだ。

■日本型ローカーボン酪農
問題はSDGs実現や脱炭素社会を耕地の狭い日本の酪農で、環境保全と両立しながらどう実現するかという点だ。アジア・モンスーン地帯の中で、日本型の低炭素酪農をどう構築していくのか。

農水省は「みどり戦略」と並行して、「持続的な畜産物生産の在り方」も議論を進めた。だが、脱炭素へ農業分野でも難題の多い畜酪の課題を総花的に網羅したに過ぎない。具体的な打開策はこれからだ。

既にJミルクは持続可能な産業としての2030年目標の酪農乳業の長期戦略ビジョンを策定し、SDGs対応にも具体的に言及している。
ただ「総論賛成」の段階にとどまっているのが実態だ。2020年春にまとめた農水省の新酪肉近生産目標でも2030年生乳生産780万トンと現行より50万トン増産を明記した。
旺盛な国産牛乳乳製品の需要に応じるため、増産こそ問われているのだ。しかも、北海道偏重の生産を転換し、家族酪農中心の都府県の生産基盤維持、拡充を最大の課題として掲げた。あまりに環境保全を強調しすぎ、生乳生産にブレーキが掛かり、供給不足を輸入乳製品で賄うとなれば、まさに本末転倒となりかねない。飼育密度が問われるアニマル・ウエルフェア(動物福祉)でも、あくまで〈日本型〉があるべきだ。

■農業はコメと畜酪焦点
「みどり戦略」はFSSやSDGs目標も踏まえ、作目別の温暖化防止策、メタンガス発生の課題も挙げた。問題は稲作と畜酪だ。実は稲作は日本の農業分野で最大の温室効果ガス排出源だ。国内の農業分野の温室効果はガス排出量の4割近くが稲作由来だ。水田中心のアジア・モンスーン地帯でのメタンガス発生の問題点は国連食糧農業機関(FAO)などでも指摘している。
農水省は2025年までに低メタン稲品種の開発を進めるほか、中干し期間の延長、自動水管理システム導入などスマート農業も駆使し、稲作メタン抑制を行う。
家畜ふん尿によるメタンガス、水質汚染、牛のげっぷ、飼料効率、水消費など畜酪も大きな焦点だ。

■バイオマスに活路
低炭素酪農をどう実現していくのか。カギを握るのか全国生乳の6割近くを占める北海道の動向だ。
気候変動の対応が求められる中で、北海道の鈴木直道知事は2020年、「ゼロカーボン北海道」のキャッチフレーズの下で、再生可能エネルギー推進などを掲げた。焦点となるのが畜酪の取り組み。8月末の道経済部が開いたエネルギー地産地消セミナーでは畜産バイオマスの先進事例などを紹介した。
家畜ふん尿を利用するBP(バイオガスプラント)はコスト面が大きな課題だが、地域エネルギー施設のほか、雇用対策をはじめ酪農地域活性化に向け可能性も広がる。事例発表した十勝・上士幌町は行政、JA、BP、エネルギー関連会社が連携し、電力の地域内自給を進めている。同町内にある日本有数の乳牛頭数を有するギガ・ファーム「ドリームヒル」の取り組みも紹介した。同牧場は発生するバイオガスを牧場内のBPで熱として利用し、ビニールハウス内でイチゴを栽培。自家産生乳を原料とするジェラートの素材に使用するなど資源循環と地域活性化につなげている。

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