宮城子牛市場で新規就農者が最高値 ベテラン繁殖農家から受精卵譲り受け ノースブル2021年9月29日
みやぎ総合家畜市場で9月に開かれたせり市場で、七ヶ宿町の新規就農者、安藤直樹さん(25)が出品した雌の和牛子牛が1099頭中の最高値161万4000円で取引された。新規就農者が地域のベテラン繁殖農家から譲り受けた受精卵で、牛受精卵専門企業の株式会社ノースブル(宮城県仙台市)がつないだ。
宮城子牛市場のせりで最高値の子牛を育てた新規就農の安藤さん
せり当日の平均価格は、66万2000円で、安藤さんが育てた子牛は平均の2.4倍の価格となった。高額となった理由は「安福久ー勝忠平ー金幸」という血筋と母牛の過去の肥育実績が高評価となったとみられる。安藤さんは「今回の販売はとても自信になり嬉しい。この子牛の落札は宮城県内。購入していただいた方に感謝するとともに母牛として将来活躍してほしい」と語った。
安藤さんは宮城県内の農業大学校卒業後、県内の和牛繁殖農家で研修し、七ヶ宿町で和牛繁殖農家として新規就農した。近隣の先進的な酪農家やレベルの高いベテラン和牛農家との交流も多く、先進技術の受精卵移植にも就農当初から積極的に取り組んできた。
受精卵移植は、能力の高い雌牛から受精卵を複数取り出し、他の牛に移植することにより高能力牛から生まれる子牛の兄弟姉妹を増やす技術で、人間の不妊治療と同じ高度で安全な技術が利用されている。安藤さんは、2019年から2020年までに14頭の受精卵移植を行い、12頭の妊娠85.7%と高い成功率になっている。
黒毛和牛肉は過去5年で輸出が81億円から約3.6倍の296億円と右肩上がりで市場は拡大傾向にある。また、今後10年で12倍の3600億円に輸出が増加するとの農水省の予測もあり今後多くの需要が見込まれている。コロナ禍の影響もあり短期的な需給の変化はあるが、生まれた子牛が肉になるまでは約2年4か月、子牛が母親の体にいる期間も含めると3年以上と多くの準備期間が必要で、今後はコロナ禍後の長期的な経営プランが必要となる。
そこで注目されているのが受精卵移植技術で、黒毛和種の改良を目的として能力の高い兄弟姉妹の子牛を複数生産する利用方法。黒毛和牛から受精卵を生産保存し、乳牛に移植することで、乳牛から黒毛和牛を生産する利用方法で、それらを可能とする技術が受精卵移植の技術となる。既存の飼養頭数内でニーズの高い黒毛和牛の生産頭数だけを増やすことが可能になり、子牛素牛価格は交雑種の平均単価37万円から黒毛和種66万円と80%も売上が増加する。
畜産農家に収益向上の選択肢を提供することをめざすノースブルは、その受精卵の生産や凍結保存、移植など人間の不妊治療と同じ高度で安全な技術を提供。実績として2015年の農水省の統計データで全国4位の受精卵移植実績がある。既存の経営の中で取り組める受精卵移植は、家畜を増やす必要がなく様々な環境問題を引き起こしにくい。能力の高い牛を厳選するためより美味しい肉になるなど、現在の日本にマッチした技術といえるが、普及率は10%程度で技術者の不足が問題にもなっている。同社は、専門的な受精卵技術者の育成と働きやすさ、顧客サービスを両立させ持続可能な畜産の発展をめざしている。
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