「スマート畜産」普及に向けた無線通信環境の構築実証実験の開始 NTT東日本2022年2月14日
NTT東日本と神奈川県内で畜産業を営む有限会社臼井農産と株式会社長崎牧場は、NTTアクセスサービスシステム研究所(NTT AS研)の協力を得て、「スマート畜産」普及に向けた無線通信環境の通信品質に関する実証実験を開始した。
畜産経営においては、国産の牛豚肉・生乳に対する購買ニーズの高まりから、飼養規模拡大の経営意欲が高まる反面、家畜衛生対策、優良品種の確保による生産性の向上、担い手の確保などが新たな課題となっている。神奈川県内の畜産業者からも、「飼育環境管理」「飼育牛・豚の健康状態把握」等に対する課題感は顕在化しており、ICT技術を活用した「スマート畜産」普及に大きな期待が寄せられている。
従来のICTを活用した仕組みでは、大規模なシステムの導入や豚舎の建て替えが必要となるケースも多い。莫大な金額の投資が条件になると、中小規模の養豚農家への「スマート畜産」普及は非現実的であるため、NTT東日本では「スマート畜産」普及に向けて、既存設備でも容易に導入が可能なシステム構成を基本に、畜産現場での多様な実証実験を行っている。
しかし、畜産現場は広い土地の中に飼育舎が半屋内になっているケースも多く、雨風により土埃が巻き上がる事象や清掃により水が撒かれる事象、ねずみによるケーブル破損等も想定され、現地に設置する機器の耐久性・配置や配線ルートは重要な要素になっている。
そこでNTT東日本は、各種システムを運用するために必要不可欠となる通信領域を高品質で安定提供できるよう、NTTグループのアクセスネットワークに関する研究開発機関で、アクセス通信技術の専門ノウハウを持つNTT AS研の協力で、畜産現場でプラチナバンドのIoT向けWi-Fi 「IEEE 802.11ah」の活用有無を検証する実証実験を実施。神奈川県厚木市で「あつぎ豚」等を生産する臼井農産と同南足柄市で「相州牛」を生産する長崎牧場のフィールドを活用して実施する。
IEEE標準規格802.11ah(Wi-Fi HaLow)は、920MHz帯等1GHz以下の周波数を利用する通信手段のひとつで、特にIoTの通信システムとして様々な分野で活用が期待される新しいWi-Fi規格。実証実験では、IEEE 802.11ahを活用し、現在のLPWAよりもさらに大容量のデータ収集を実証する。また、サービス運用に必要なIEEE 802.11ahの特性を各ユースケースで獲得することをめざす。なお、IEEE802.11ahの導入や運用に当たっては、本規格の国内利用実現に向けて活動している、802.11ah推進協議会と連携する。
実証フィールドの機器設置場所イメージ臼井農産(左)、長崎牧場(右)
◎畜産現場におけるIEEE 802.11ahの導入効果
(1)広域かつ建屋が屋外に並ぶ環境で、最大距離が数100m~1kmのIEEE 802.11ahを使用することにより、カメラやセンサなどのモニタリング機材を設置できるエリアを大幅に広げることができる
(2)従来のWi-Fiと比べてIEEE 802.11ahはカバーエリアが広がるため、中継器や無線LAN親機を減らすことが可能。コスト低減に繋がる他、カメラやセンサの追加が容易になる
(3)従来のWi-Fiと同様にIPベースで動作するため、IP通信機器に対する親和性が高く、従来の機材をそのまま活用可能なので導入しやすい
(4)セキュリティは従来のWi-Fiと同様にWPA3を使用するため安心できる
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