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酪農存続の危機 9割が経営難 中央酪農会議調査 識者「国民の命の問題にも」2022年6月16日

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中央酪農会議は6月15日、日本の酪農経営の実態調査結果を発表した。酪農家の9割が経営難に陥っている実態が明らかになった。

酪農存続の危機 9割が経営難 中央酪農会議調査 識者「国民の命の問題にも」

全国の酪農家197人を対象に6月9日から14日にアンケートを実施した。

過去1年間「経営に困難を感じた」答えた酪農家は全体の92.4%で、現在「経営が悪化している」と感じているのは97.0%にのぼった。酪農家のほとんどが経営難を痛感しているということになる。

直近1か月間の経営状況について「赤字」と答えた酪農家は65.5%だった。

経営悪化の要因は「円安」89.8%、「ウクライナ情勢」85.3%、「原油高」84.3%、「コロナ禍」70.6%、「海運の混乱」68.0%などとなった。

また、現在、酪農経営で減少していると感じている収入は「牛販売の収入」67.0%、「生乳販売の収入」61.9%でこれが2大要因となっている。国際情勢や新型コロナウイルスのパンデミックなど経営努力では対処できない外的要因が酪農経営を大きく圧迫していることが示された。

経営悪化の影響については「貯金の切り崩し」66.5%、「家族の生活費の切り下げ」47.7%や「借入金の増加」45.2%などと生活にも影響が出ている。また、「将来に向けた牧場の投資の減少」との回答は67.0%となった。

日本の酪農家の多くが将来の見通しが立たないなか、生活費を切り詰め、貯金を切り崩しながら耐えている状況がうかがえる。

現在の環境が続いた場合、今後も酪農経営が続けられるかとの問いには55.8%が「続けられない」と答えた。

中央酪農会議は日本の酪農はまさに「存続の危機に直面している」と強調した。

【中央酪農会議のコメント】

「酪農家の経営をめぐる状況は深刻であることが調査の結果明らかとなった。このままでは酪農家の離農が加速し、今後、国産の牛乳・乳製品の安定的な供給に支障を来す恐れがあり、早急な対応が必要だと感じている」

鈴木宣弘東大大学院教授は今回の調査結果について次のように話している。

国民の命の問題

調査では65%が赤字との結果だが、もっとひどいというのが実感だ。経営が続かない、酪農を止める、という悲痛な声が毎日のように届く。

とくに十勝の大規模経営が非常に厳しく、国の政策に従って借金し、増産に取り組んできた酪農家が先に倒産してしまいかねない状況にある。つまり、6割が経営が厳しいというが乳量にするともっと多く、このままでは来年からは牛乳が飲めなくなることもありえるほどだ。

それでいいのかという事態にもかかわらず、在庫が積みあがっているからその処理が先だとして削減対策費として1㎏2.4円の負担金だけ要求されている。しかし、目先の在庫緩和対策をしている場合ではない。輸入の乳製品も入ってこなくなる事態もあり得る今の世界の情勢では、国内で牛乳乳製品の供給が一気に止まってしまうことも考えられる。

2008年の厳しい状況では加工原料乳生産者補給金単価の期中改定を行って補てんし、飲用乳価にも1kg2円程度の緊急補填を2回行い、この政策対応をシグナルとしてメーカー・小売・消費者も価格転嫁に同意し、取引乳価も1㎏15円引き上げることができた。

しかし、今回はまったく政策の動きがない。酪農家だけでなく、米農家も施設園芸も大規模経営から経営危機に直面している。これを放置することは国民の命に関わることである。

輸入小麦を使った食品は値上げされるが、農家が作った農産物だけコストが上がっても上がらない。その象徴が今回の調査結果が示す酪農の危機だ。政府もメーカーも量販店も、それから消費者も自身の命に関わる問題として危機に立ち向かわなければならない。(談)

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