「我慢の限界超えている」「酪農は壊滅の危機」 農水省前に子牛引き連れ緊急要請 農民連など2022年11月30日
飼料や燃料などの資材高騰で畜産農家がかつてない危機に直面しているにもかかわらず政府が機能していないとして、「農民運動全国連合会」(農民連)と「国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会」(全国食健連)は11月30日、東京・霞が関の農水省前で、子牛などを引き連れた生産者とともに畜産農家が経営を継続できる緊急対策の実施を訴えた。経営が成り立たず、廃業する農家などが相次いでいるとして、全国の生産者から集めた500人の署名を添えた緊急要望書を同省に提出した。
農水省前で行われた畜産の危機を訴える緊急行動の集会
「畜産危機突破 緊急中央行動」として農水省前で開かれた集会には、全国各地から畜産農家や農業関係者、それに政党関係者などが集まり、オンラインも含めて約300人が参加した。
農民連 長谷川敏郎会長
はじめに農民連の長谷川敏郎会長が「日本の畜産は最大の危機で、この状況が続けば崩壊が始まり、まさに正念場です。全国の農家を回ってその声を届けに来ました。餌代はコロナ前から1.5倍になり4000億円も負担が増えているのに政府は800億円の補助であとは農家に押し付けています。従来の対策の延長では全く不十分であり、農家への緊急支援を求めます。現場の叫びを聞いてください」と訴えた。
このあと畜産農家や農業関係者が相次いで厳しい現場の状況を訴えた。オンラインで参加した千葉県北部酪農農業協同組合の髙橋憲二組合長は「経営が成り立たず借金を重ねて取り組んでいるが、我慢の限界を超えてばかばかしい状況です。農業だけがコストに見合った価格で販売されないのはおかしく、今は緊急支援をお願いしているが、抜本的な仕組みが必要です」と述べた。
子牛を引き連れて酪農現場の厳しさを訴える金谷雅史さん
また、千葉市の酪農家、金谷雅史さんは、地元の仲間が連れてきた子牛をわきに引き連れ、「増え続ける借金を重ねながら365日、牛乳を搾っています。年を無事に越せない酪農家がほとんどで、希望が見えません。牛を飼って普通にご飯がたべたいだけですが限界に来ています。このまま1年たてばスーパーの棚から牛乳がなくなります。酪農は壊滅の危機です」と訴えた。
農水省に提出した緊急要望書の中では、生産コストの上昇で畜産農家はかつてない深刻な経営危機に直面しているにもかかわらず、現行の制度では高騰分の一部しか補てんされていないとして、コスト上昇分の全額補てんとともに、コスト上昇分を価格転嫁できるようメーカーなど実需者に強く働きかけるよう求めている。
署名を集めた農民連によると、経営が立ち行かず畜産農家が廃業や自死するケースも相次いでおり、このままで国内畜産物や乳製品を安定的に供給できなくなる恐れがあると指摘している。政府が補正予算に盛り込んだ生乳の需給対策のための低能力牛の早期淘汰への支援策も有効な対策とはいえず、経営が維持できる抜本的な支援策が必要だと強調している。
農民連などは今後も畜産農家への支援を求める緊急要望書への生産者の署名を集める活動を続け、年末に改めて農水省に提出することにしている。
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