「母牛の乳を1度も飲めず子牛が死ぬ現実」「98%の酪農家が赤字」 酪農家らが窮状と支援訴え 院内集会2023年2月15日
資材高騰や乳価低迷などで畜産農家がかつてない危機に直面しているとして、「農民運動全国連合会」(農民連)など4団体が2月14日、参議院議員会館で院内集会を開き、農家への緊急支援の必要性を訴えた。集会には各地の酪農家も参加し、北海道の酪農家は「生まれたばかりの子牛が1度も母牛のミルクを飲めず処分される現状がある」などと窮状を訴えた。同日、畜産農家から集めた緊急支援を求める約350人分の署名とともに緊急要望書が野村哲郎農相に渡された。
全国の酪農家や消費者団体の関係者らが参加した院内集会(参議院議員会館で)
参議院議員会館で開かれた院内集会には、各地の畜産農家や消費者団体の関係者など約200人が参加、オンラインでも多数の生産者などが参加した。
はじめに農民連の長谷川敏郎会長は「酪農畜産をめぐる状況は日々深刻さを増し、日本から酪農畜産の灯が消えるかどうかの瀬戸際です。生産現場と消費者がともに日本の農業を子や孫など未来世代に引き継ぐため頑張りましょう」と呼びかけた。
続いて「食料安全保障推進財団」理事長を務める鈴木宣弘東京大学大学院教授は酪農の現状について「生産資材の暴騰や農産物の販売価格低迷、副産物収入の激減など酪農家は7重苦の状況であり、放置すれば子どもたちに不可欠な牛乳が供給できなくなる状況が目の前に来ています。命の問題として何ができるかみんなで考えて行動することが必要です」と強調した。
また、酪農関係者でつくる「安全安心の国産牛乳を生産する会」の加藤博昭さんは、昨年12月に行ったアンケート調査で、98%の酪農家が赤字経営に直面しているとのデータを紹介し、「今の情勢は酪農の歴史が始まって以来の厳しい状態です。農家は貯金を崩しながら返すあてのない金を借りており、廃業や倒産、命に関わる状況が生まれてもおかしくありません。とにかく早く農家に現金を支出する支援が必要であり、消費者にも乳価が上がることへの協力をお願いします」と述べた。
集会には北海道や関東の酪農家6人が出席し、それぞれ現場の窮状を訴えた。北海道十勝地方から駆けつけた川口太一さんは「子牛の値段がごみのような価格になり、湯気を立てて生まれた子牛が親牛のミルクを1度も飲めずに薬殺されている現実があります。それでも国は助けてくれません。一杯の牛乳をあすも飲んで買い支えていただくことが酪農家を支える唯一の道です」と消費者に協力を訴えた。
また、同じく北海道の小椋幸男さんは「酪農家が乳製品の在庫処理で340億円も拠出する一方でカレントアクセスで乳製品が輸入される不合理な状況がずっと続いています。乳価を上げると消費が落ち込むというが、ぜひ消費者にも理解していただき、酪農の現場を下支えしていただきたい」と強調した。
このあと生協や消費者団体の代表などもスピーチに立ち、「きょうからすぐにできることは酪農家の方を買い支えることであり、広くみなさんに訴えていきたいと思います」と酪農家への支援を呼びかけた。
また、農民連などは同日、畜産農家から集めた約350人の署名とともに緊急要望書を野村農相に提出した。この中では、あらゆる生産資材が高騰し、畜産経営が深刻な経営危機に直面する中、コスト上昇分を全額補てんすることなどを求めている。農民連の署名提出は今回で5回目で、これまでに集めた署名は1369人に達した。
同団体は今後も酪農家からの署名を集めるとともに、近く消費者を対象にしたネットによる署名も集めることにしている。
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