低能力牛「淘汰」に1頭15万円交付の事業始まる 酪農家は「牛減らすより乳価引き上げを」2023年3月3日
農水省が、生乳の需給改善に向けて、乳量が少ないなどの低能力牛を早期に淘汰する場合、今年3月から9月まで1頭当たり15万円を交付する事業がスタートした。生産者団体や生産者の需給調整を後押しする事業としているが、酪農家からは「最も求めたいのは牛を減らすことではなく生乳価格の引き上げだ。需給状況の潮目の変化も感じており、このままでいいのか消費者も含めて考えてほしい」との声が上がっている。
農水省は生乳需給改善対策として、第二次補正予算で「酪農経営改善緊急支援事業」に50億円を計上した。乳量が少ないなどの低能力牛を淘汰する場合、今年3月から9月までは1頭当たり15万円を交付する。また、10月以降についても1頭当たり5万円を交付する。生産者が23、24年度の生乳生産量を抑制するための計画づくりや、淘汰する牛を食肉処理場に出荷することが要件となる。
農水省はこの事業で9月までに2万5000頭、10月以降は1万5000頭の計4万頭の淘汰を見込んでおり、中央酪農会議を通して申請の受け付けを進めている。野村農相は2月28日の閣議後会見で、「生乳余りと言われていることを踏まえて生産者団体や農家の皆さんが生産抑制に取り組む中、農水省としても需給改善を図る観点から後押しするということです」と、改めて事業の趣旨を述べた。
一方、酪農関係者からは事業が決まった時点から「家族同様に育てている牛を淘汰することに国が助成するのはどうか」「入口対策に予算がついたのはいいが、離農する農家が出てしまう厳しい状況なので早く成果を出してほしい」などとの声が上がっていた。
北海道十勝地方で約250頭を搾乳する牧場を営む川口太一さんは「この事業を聞いたときに北海道の酪農はいらないというメッセージと感じた」と話し、酪農家に寄り添った事業ではないと強調する。
また、このところ需給状況の潮目が変わってきていると感じるという。昨年は生まれた子牛が数百円でしか取り引きさない厳しい状況もあったが、最近は2~3万円から、高いもので6~7万円で取り引きされるようになったほか、インバウンドも増え始めてきていると話す。
「需給状況が変化する中で、生乳を廃棄する農家がいて離農する農家は増えている。足りなくなれば輸入すればいいと考えているかもしれないが4万頭も減産して本当にいいのか。われわれが本当に求めたいのは生乳価格への1キロいくらの支援であり、消費者も含めて政策の矛盾について考えてほしい」と話している。
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