気仙沼で持続可能な畜産「アニマルウェルフェア」に挑戦 小野寺ファーム2023年3月28日
宮城県気仙沼市で酪農を営む小野寺ファームは、畜産ブランド「幸せな牛の時代」をスタート。酪農と肉牛飼育の両面で、"アニマルウェルフェア"に配慮し、「牛の健康を重視した、持続可能な畜産」を推進する。
気仙沼の酪農家の小野寺ファーム
小野寺ファームは、東北で酪農が盛んだった気仙沼市の本吉地区で、耕作放棄地で育てたデントコーンや牧草を使い、輸入配合飼料に頼らない畜産を推進している。ストレスを軽らし、「アニマルウェルフェア」に配慮して家族のように育てた「規格外」の肉牛を販売している。
アニマルウェルフェアは、「動物福祉」の意味で、近年は日本でも使われるようになった言葉で、「動物が生まれてから死ぬまで幸せに暮らすことに配慮する」という考え方。酪農の家に生まれ育った同ファーム代表の小野寺佑友さんにとって、牛は家族や兄弟、仲間のようなもので、牛の健康は絶対であったことから、"アニマルウェルフェア"の価値と実際の肉の美味しさを知る人が増える時代を自分たちの手で作りたいと考え、同ブランドを立ち上げた。
小野寺さんは2019年、乳牛として飼育するブラウンスイスに黒毛和牛の種を付けて得た雄牛を育てた。「健康に育てた牛はきっと美味しい。そうであって欲しい」という信念のもと、自由に遊ばせて牧草を食べさせ、冬は牛舎に入れて自家栽培した穀物や配合飼料を与え、急がずに30か月かけて飼育した「きたろう」は人なつっこく、地元の子どもたちにも人気だった。
屠畜した直後は「本当にこれで良かったのか?」と自責の念ですべての動物の肉が食べられなくなった時期もあったが、「食べてこそ報われる」と思い直し、食べた「きたろう」の肉は弾力がありながら柔らかく強いうま味があった。小野寺さんは「悲しいけれど嬉しいその味を私は忘れません」と振り返る。
同ファームでは現在、「30ヶ月飼育したミックスの雄牛きたろう」と「60ヶ月飼育したブラウンスイスの未経産牛」をブロックの形で販売。交雑種で、A1~A5などの価値基準に合わない「規格外」の牛肉には価値がつかないが、その美味しさと価値を伝えるため、直接注文で受け付けている。
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