スマート酪農・畜産 2022年度の市場規模は115億9700万円と推計2023年7月18日
矢野経済研究所は、国内におけるスマート酪農・畜産市場を調査。2022年度のスマート酪農・畜産の国内市場規模は事業者売上高ベースで、115億9700万円と推計している。
スマート酪農・畜産国内市場規模推移・予測
同調査は2022年10月~2023年6月、スマート酪農・畜産参入事業者、農業法人(酪農畜産、養鶏)、関連団体・協会、管轄官庁等を対象に、同社専門研究員による直接面談、電話などによるヒアリングと文献調査の併用で行われた。
スマート酪農・畜産は、従来からの生産技術と情報通信技術(ICT)を連携させることで、更なる生産の効率化や畜産物の高付加価値化を目指すもので、酪農畜産の生産から販売まで情報通信技術を活用した高い生産性やコスト削減、食の安全性や労働の安全等を実現する。
スマート酪農・畜産が求められる背景には、後継者不足・高齢化に伴い、酪農畜産農家の戸数の減少が加速しており、作業の省力化や精密化が求められていることがある。また、管理技術や知見、経験等を情報通信技術でデジタル化し、次の担い手に継承する必要がある。加えて昨今の飼料価格高騰に伴い生産コストが上昇しており、コスト削減のための効率化が喫急の課題であることも挙げられる。こうしたなか、農林水産省の経営規模拡大を支援する施策も相まって、2022年度は酪農・畜産ロボットやスマート畜舎関連を中心に普及拡大した。
アニマルウェルフェアを支援するスマート畜舎や飼養センシング・モニタリング普及に期待
アニマルウェルフェア(Animal Welfare:動物福祉)は、欧米を起点として広まり、国内でも徐々に認知されてきている考え方。欧州委員会は2021年6月、畜産業でケージ使用を段階的になくす法令を2023年末までに提案し、2027年からEU全土でケージの段階的な撤廃と最終的な禁止に向けて進んでいる。酪農畜産業においてアニマルウェルフェアに配慮するよう求めるEUを中心とする動きは、今後世界のトレンドになる可能性がある。
アニマルウェルフェアは国内の酪農畜産においても、家畜を快適な環境下で飼養することで家畜のストレスや疾病を減らし、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながる。こうしたなか、AIを活用してアニマルウェルフェアへの配慮と効率的な畜産の両立を支援するスマート畜舎や飼養センシング・モニタリング技術の研究開発が進んでいる。
将来展望
同調査では、2023年度のスマート酪農・畜産の国内市場規模は事業者売上高ベースで94億5300万円の見込み、2024年度は90億2700万円を予測。スマート酪農・畜産に対する農水省の助成金対象から牛舎の新増設やロボット関連が対象外となったことに加え、飼料価格の高騰、電気代などのエネルギーコストの負担により、生産者(酪農畜産農家)の新規設備投資の減退が主な要因となる。
一方で酪農畜産農家の労働力不足、酪農畜産業に由来する温室効果ガス排出、アニマルウェルフェアへの対応などを取り巻く諸課題は多い。これらを解決するソリューションとして、スマート酪農・畜産の普及は不可欠であることから、2025年度以降、市場は再び拡大基調に転じ、2027年度には2022年度比114.3%の132億5000万円に拡大すると予測している。
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