「牛の顔認証」で防疫対策強化や飼育管理省力化へ 宮崎大学などアプリ開発へ2023年8月18日
宮崎大学は、宮崎県やJA宮崎経済連などと連携して、AIによる顔認証技術を活用してスマホをかざすだけで牛の病歴などの個体情報を確認できるシステムの研究開発に着手すると発表した。畜産現場で感染症リスクや農家の高齢化が課題となる中、迅速な防疫対策や労働の省力化につながることが期待される。
牛の顔領域を自動検出する様子(宮崎大学提供)
牛の個体識別は、2003年に導入された牛トレーサビリティ法で、10ケタの識別番号が記された耳標で行われているのが大半だが、体毛や汚れで番号が見づらかったり、耳標が脱落したりする課題があった。また、農家の高齢化や多頭飼育で生産現場の負担が重くなっているのに加え、海外の感染症の侵入リスクも高まっており、新たな対応が求められている。
こうした中、同大学では、椋木雅之教授(工学部工学科情報通信工学プログラム)が研究開発を進めている「牛個体識別AIアプリ」技術をベースに、宮崎県やJA宮崎経済連、株式会社デンサンと4者共同で、防疫対策の強化や省力化につながるシステムづくりを進めることになった。
研究期間は今年度から2025年度までの3年間で、椋木教授が開発した技術を高度化させ、子牛から成牛までを認識し、個体情報を蓄積できるアプリの開発を目指す。現状では牛の情報を確認する際、牛に近づいて耳標番号を確認する必要があるが、この技術によってスマホをかざすだけで個体情報を把握するとともに、画面上にその牛の病歴や家畜伝染病の検査履歴、生産成績が表示される。
この技術によってこれまで時間や労力がかかっていた防疫対策が迅速化されるとともに、牛の飼養衛生管理もDX化され、作業効率が大きく向上することが期待される。
研究期間を終える3年後には、牛の認証率を95%以上に高め、宮崎県内の牛の農場の約1割に当たる500農場の生産者にアプリを配布するとともに、「総合防疫管理システム」を構築し、宮崎県内の獣医師50人や500農場などで試験運用することを目指す。
同大学農学部獣医学科の関口敏准教授は「畜産分野は他の農業分野に比べてデジタル化が遅れています。この取り組みをきっかけに畜産分野のDX化が進み、飼育管理の省力化や効率化、疾病対策の強化が促進されることを期待しています」と話している。
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