養豚場の汚水処理や堆肥化が抗菌性物質の環境排出を低減 農研機構2024年2月1日
農研機構は、国内養豚場の汚水処理水や堆肥中の抗菌性物質の残存実態と動態を明らかにした。排出された抗菌性物質は環境中で細菌を耐性化し、結果としてヒトや家畜の薬剤耐性問題に関与するため、「ワンヘルス」の観点から重要な課題。汚水処理や堆肥化を行うことで抗菌性物質の残存濃度は減少するものの、その使用量や処理施設の運転状況により、処理水や堆肥中を介した環境排出リスクの度合いに差がみられた。同成果は、情報が断片的だった養豚場から環境への抗菌性物質の排出実態を解明し、環境中細菌の薬剤耐性化や生態系へのリスクを評価したもので、薬剤耐性問題に対し、関係機関が対策を考える際の基礎情報となる。
養豚場からの抗菌性物質の環境排出
ふんや尿を介して排出された抗菌性物質は汚水処理や堆肥化により除去され、
処理水や堆肥に残存する濃度は大きく低減 するが、その除去率は排せつ物処理施設の運転条件が影響。
抗菌性物質が、これまでに効果を示していた病原性細菌に効かなくなる薬剤耐性問題は、家畜やヒトの健康維持・治療だけでなく、環境中に排出された抗菌性物質や薬剤耐性菌などが環境中の病原菌を耐性化。結果として家畜やヒトに影響することから環境の健全性も含めた「ワンヘルス」の理念による課題解決が重要となっている。
この理念は、家畜(動物)とヒト、環境が生態系の中で相互に密接に繋がり強く影響し合うことから、それぞれの領域の境界がなく一つの世界であるという考え方に基づいている。畜産分野、特に養豚業では、抗菌性物質の慎重使用・適正使用に向けた様々な研究や対策がこれまでにも実施されてきた。一方、「ワンヘルス」の観点から考えた場合、養豚場から環境への抗菌性物質の排出を抑制することが重要となるが、その実態や制御方法に関する情報は断片的だった。
農研機構は、養豚場での豚排せつ物の処理に焦点を当て、国内養豚場で一般的に採用されている排せつ物の処理法の汚水処理と堆肥化を対象に、抗菌性物質の残存と環境排出の実態を把握するとともに、処理過程での動態を調査。この結果、汚水処理水(処理水)と堆肥に残存する抗菌性物質は処理前の排せつ物そのものより減少しており、処理することで環境排出リスクが低減されることが明らかになった。一方、養豚場における抗菌性物質の使用量や処理施設の運転条件など様々な要因により、環境排出リスクの度合いに差があることが示された。
同研究の成果は、養豚場から環境への抗菌性物質の排出実態と排せつ物処理過程における動態を包括的に明らかにしたもので、排出制御に向けた対策の基礎情報となる。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日