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地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日

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JA全農は11月20日、東京都内で全農酪農経営体験発表会を開いた。副題は「未来を創る『酪農のなかま』」。飼料価格の高騰や酪農家の減少、消費低迷など「酪農危機」が叫ばれるなか、全国各地の酪農家、畜産関係者ら約480人が参加。優れた事例の発表には参加者も励まされ、参考にもなった。併せて第18回全農学生「酪農の夢」コンクールの優秀作品の発表と表彰も行った。冒頭、主催者を代表してJA全農の由井琢也常務理事が「創意工夫と地域での連携による就農支援により環境が厳しくとも前向きな事例を紹介したい」とあいさつした。

全農酪農経営体験発表会1 主催者あいさつ

主催者あいさつ

酪農体験発表は、酪農全般に関する優良な取り組みを広く関係者に紹介し、酪農家および酪農業界の発展に資することを目的にしている。今回は42回目で、六つの取り組み事例が発表された。以下、要旨を紹介する。

全農酪農経営体験発表会2 発表者と審査員

発表者と審査員

牛飼いだからこそできる地域貢献
【有限会社はみんぐ・まむ(大分県)志賀拓馬さん】

2005年に父が経営してた志賀牧場と、同じ地域の太田牧場が共同で設立し、経産牛約150頭、未経産牛約75頭を保有している。たい肥を発酵後に自給飼料用の畑に活用する循環型農業を実施している。水田農家との契約でWCSを生産し、作業量を分散して自給飼料の収穫量が増加した。

牧野を活用した永年牧草の利用により地元の久住高原の景観も維持している。地域の廃棄物であるビール粕やウイスキー廃液も飼料に利用。耕作放棄地を放牧に活用し、育成預託費も削減している。

酪農教育ファームの開催や学校への出前授業を通じて、子どもたちに牛乳や酪農に親しみを抱いてもらう活動も続けている。ユーチューブでは酪農に関する情報を発信し、酪農関係者をゲストに招いたトーク形式の動画も投稿している。最終的な目標は久住高原の存続であり、そのうえで経営の確立が必要だ。

地域酪農の未来~新たな牧場経営を通じた地域活性化~
【株式会社北栄デーリィファーム(青森県)鳥谷部大地さん】

2019年に県内初の酪農協業法人として稼働し、三戸で共同経営している。地域のコントラクター組合と連携して飼料を確保し、近隣の農家と協力して生産組合を立ち上げて自給飼料基盤を強化している。

4機のロボット搾乳で240頭から搾乳し、給餌や餌寄せ、糞尿処理も機械化し、発情管理ではICT機器も活用して作業を省力化、脱属人化している。その効果もあり、出荷乳量など規模の拡大が進み、月7日休など福利厚生制度も整え、高い雇用定着率を実現している。
近隣の仲間の協力で大規模化を進められた。地域の酪農を守り、けん引する牧場にしていきたい。

地域の特性を活かし効率化を追い求めた酪農経営
【行木牧場(千葉県)行木達哉さん】

発酵TMRの利用による省力化で自給飼料生産を可能にした。また、フリーバーンでの自然交配とAIの併用により繁殖効率を向上するとともに費用も削減した。

農業事務所や全農家畜衛生研究所など関係機関のサポートにより、乳質改善や感染症の拡大防止にも効果が出ている。また、稲作農家や畑作農家との耕畜連携でSGS生産やもみ殻の活用、たい肥供給を実施している。

地域連携ではアイス工房を運営し、地域の教育機関や野菜・果物農家との協業商品の開発や販売も行っている。事業は広がっているが、作業を効率化することで、少人数でもワークライフバランスを充実させた酪農経営を実現している。今後も効率化を追い求め、一人でもできる酪農経営を実現したい。

サラリーマンからの転職 研究職で培ったチャレンジ
【大門牧場(栃木県)大門正英さん】

実家は酪農家だが、後継者になるつもりはなく大学院卒業後に企業で研究職に就いた。しかし、牛がいない生活に違和感を感じ、酪農経営に転じた。先入観がないからこそ、データを最大限活用した飼養管理の改善にチャレンジできた。

現在は夫婦で切磋琢磨しながら経営を行い、地域での耕畜連携を自ら切り開いている。経営改善では周産期病の劇的な減少や乳量の増加、確実な個体販売や育成管理などで成果を得ている。自由闊達で愉快なる理想牧場を目指している。

牛を大事に!大切に!
【株式会社メアリーファーム(滋賀県)葭谷健一さん(田中公平さんの代理)】

2018年に約70頭で株式会社化して設立。畜産クラスターを活用して20年に新牛舎を作って移転し、約300頭に規模を拡大した。従業員10人で1日7500キロの生乳を生産している。牛にとって最良の環境を作るため、全国の牧場を見学し、トンネル換気を取り入れた。ほかにも牛舎内のミスト、2重屋根など暑熱対策を施している。

県内屈指の規模で安定した乳量・乳質を維持し、生産基盤維持に貢献。たい肥処理では近隣の畜産農家・耕種農家と連携して地域貢献にも努めている。

株式会社Farm to-moを架け橋とした未来の友づくり
【JA北オホーツク(北海道)営農部部長・横内整さん、Farm to-mo場長・武藤元成さん】

人よりも牛の数が多い地域で、2012年にJAおうむとJAおこっぺが合併。魅力あふれる豊かでゆとりある地域農業を目指し、雇用と担い手確保の支援を強化し、JA北オホーツク出資型法人として株式会社Farm to-moを設立した。

管内では初の研修牧場として全国から新規就農希望者を受け入れている。最先端技術でオートメーション化を実現し、哺育から成牛まで一貫した飼育環境を学べる。研修棟や宿泊滞在施設も完備している。

研修の受け入れから2年余りで数十年ぶりの新規就農が1件、当法人も従業員が1人加わり就職希望者もいるなど少しずつ結果が出ている。就農だけでなくヘルパーや法人の従業員など選択肢は複数ある。

事例発表を受け、小澤壯行審査委員長(日本獣医生命科学大学教授)は「審査は事例の評価、課題、そして期待の三つの視点で行った」とし、各事例について詳しく講評を述べた。

「酪農の夢」コンクール表彰

「酪農の夢」入賞者「酪農の夢」入賞者

「酪農の夢」コンクールは高校生や大学生が酪農にかける夢を語ることで、日本の酪農に新たな息吹と活力を生み出す一翼を担ってもらうことを目的に実施されている。最優秀賞1人、優秀賞3人、優良賞5人に加え、今回から新たに創設された学校賞として2校が表彰された。今回は42校の学生から120の応募があり、このうち応募人数の多かった2校が学校賞に選ばれた。

▽最優秀賞=坂上凛(岡山県立高松農業高等学校)

▽優秀賞=冨岡来夏(日本獣医生命科学大学)、及川紀子(北海道帯広農業高等学校)、柿野るいか(同)

▽優良賞=宮地帝輔(北海道大学大学院農学院)、税所太一(国立大学法人宮崎大学)、三村彩(公益財団法人中国四国酪農大学校)、中井湧心(神奈川県立中央農業高等学校)、北村清香(三重県立松阪高等学校)

▽学校賞=北海道帯広農業高等学校、公益財団法人中国四国酪農大学校

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