畜産:元気な国内農業をつくるためにいま全農は
【畜産生産部】JA全農の畜産事業 アルゼンチン農協連合会と事業提携50周年2014年1月14日
・農協の挑戦、信頼で継続
・協同深めて事業を発展
・ネットワークで安定供給を実現
JA全農は、飼料原料の購買事業でアルゼンチン農協連合会(以下、ACA)との国際農協間長期穀物取引協定によって、アルゼンチン産の飼料原料を調達しているが、2013年にはこの協定が50周年を迎えた。これを記念して昨年12月にはアルゼンチンで記念式典も行われた。新興国の穀物需要が伸び続けるなど世界の穀物需給が不安定になるなか、飼料原料の調達のための産地多元化にいち早く取り組んだ海外事業として注目されるのはもちろん、アルゼンチンの生産者と日本の生産者を結ぶ国際的な協同組合運動の実践としても世界に例を見ない取り組みだ。今後の発展が期待されている。
国際協同組合間提携
さらに強化
◆農協の挑戦、信頼で継続
ACAとは1964年、当時の全購連が優先的に穀物などの購入が可能となる国際農協間長期穀物取引を締結。翌65年から日本に向けて船積みが始まり、初年度はマイロ、トウモロコシ、大豆で4万tあまりが輸入された。 この協定は毎年年次協定として双方が結んできた。50周年を迎えた昨年12月もACA本社で2014年度の取引目標数量などを合意して年次協定を締結した後、12月3日ブエノスアイレス市内で記念式典が行われた。
式典でACAのダニエル・ビガ会長は「50年前に私たちはアルゼンチンと日本の農協間の取引を発展させるためこの挑戦に取り組み始めた。この取引は協同組合間で生産者と需要者がお互い努力して原料の供給に取り組めば何が達成できるか示している。協同組合の精神は文化と言葉の壁を超えることができることの証明です」などとあいさつした(本文下参照)。
JA全農の中野吉實経営管理委員会会長は、この取り組みについて「農業協同組合連合間の国際取引としてアルゼンチンと日本の農家を結ぶ架け橋の役割を果たしてきた。世界に誇れるもの」などとあいさつし「今後も末永く取引を継続し、双方の関係がますます強固なものとなることを祈念する」と述べた(本文下参照)。
ACAは1922年の設立。アルゼンチン全土にわたる160の地域農協の連合会組織で8万人以上の農家組合員を擁する同国最大の農協組織である。穀倉地帯に所有するカントリーエレベーターとパラナ川沿いのリバーエレベーターで集荷し、サンロレンツォ港、ネコチア港にある輸出エレベーターで船積みし、日本などに輸出している。船積みされた穀物は日本へは喜望峰経由で40日から45日で到着する。
ACAの穀物等の取扱数量は年間1000万tを超え、アルゼンチン全体の生産量の14%のシェアを占める。
この50年の間には、たとえば1980年代初頭の米国の対ソ穀物禁輸政策の影響やフォークランド紛争などにより、ACAから購買できなかった年もあったが、最近では購買品目に大豆粕や大麦も加わり取引量は徐々に拡大、現在では40万t程度の購入を目標にしている。50年間の累計では目標数量に対して84%の達成率で、900万tを超える購買量になっている。
(写真)
上:両会長をはじめ関係者による懇談のようす
下:パラナ川にあるACAのリバーエレベーター
◆協同深めて事業を発展
ACAの会長や副会長らはJA全農と同じように地域農協の組合長を務めるなど、生産者であり農協の組合員だ。ダニエル・ビガ会長もコルドバ州の穀物農家で記念式典の翌日に中野会長らはビガ会長の自宅に招かれ、ほ場で“農家どうし”の意見交換をするなど、親交を深めた。
このような信頼関係をもとに、さらに双方の事業発展をめざしている。その例が2011年に香港に設立した合弁会社、全農ACA有限公司(ZAC)だ。
これは中国をはじめとするアジア向けの大豆販売をお互いに協力して行うことをめざすもの。全農は米国の全農グレインの集荷機能を活用して米国産大豆を中国に販売、一方、収穫期がずれる南半球のアルゼンチン産大豆をACAが販売することによって中国市場に通年供給できる。これによって双方の輸出施設の稼働率を向上させることができ、JA全農にとってはACAからの飼料原料調達の安定化にもつながる。また、ACAにとってはJA全農と連携してアジアへの販路拡大をはかることができる。この取り組みは2013年度に目標販売量の250万tを上回る成果を上げる見込みとなっている。
(写真)
ACAのビガ会長のほ場で懇談する中野会長(右)
◆ネットワークで安定供給を実現
50年に及ぶACAとの連携に代表されるようにJA全農の海外からの飼料原料の調達は協同組合間提携で世界にネットワークを広げてきている。 米国には子会社、全農グレインとCGB社を軸にして生産者からの集荷から輸出までの一貫体制が築かれているが、そのほかに西海岸からの調達を強化するため2011年にはCHS農協と事業提携をしている。また、豪州とはおもに大麦の調達を目的としてCBH農協と提携しているほか、昨年はブラジルのCOAMO農協とも取引を実現した。 こうした取り組みは産地多元化を通じて安定的に飼料原料を調達することにとどまらず、世界の農業者との協同によってそれぞれが国の農業を守り、国際的な生産と供給の安定を図る事業である。世界の穀物需給が不安定になる見通しのなか、協同組合間提携に期待が高まっている。
(写真)
ACAの会長室にはJA全農が全購連時代に贈った記念品が飾られている
「世界に誇れる架け橋の役割」
中野吉實・JA全農経営管理委員会会長のあいさつ(要旨)
全農の飼料原料の海外からの購買事業として1965年からACAとのアルゼンチン産マイロ、とうもろこし、大豆の取引が始まりました。その後、購買品目に大豆粕と大麦も加わり、これまでに約900万tのアルゼンチン産飼料原料を供給していただきました。
全農にとってACAとの関係は、個別の取引先としては最も長いお付き合いをさせていただいているだけではなく、農業協同組合連合間の国際取引としてアルゼンチンと日本の農家を結ぶ架け橋の役割を果たしてきたことは、世界に誇れるものだと思います。
昨年は米国の穀物産地が歴史的な干ばつとなり、またアジアを中心とした新興国の食糧需要が急増していることなどによって世界の穀物需給はひっ迫しました。今後も世界の穀物需要は伸び続けることが予想されており、穀物需要に対する構造的な変化が起こっています。 こうした状況下、全農が飼料原料穀物を安定的に確保し、日本の畜産農家に供給し続けるためには、ACAとの取引はますます重要なものとなってきています。今後も末永くACAからのアルゼンチン産穀物の取引を継続していくつもりであり、50周年の節目を迎え、双方の関係がますます強固なものとなると同時に、ACAのますますの発展を祈念します。
「協同組合の精神証明した50年」
ダニエル・ビガACA会長のあいさつ(要旨)
50年前に私たちはアルゼンチンと日本の農協間の取引を発展させるために、この挑戦に取り組み始めました。今日までこの取り組みが続いているのは、アルゼンチンが穀物の重要な生産および輸出国であり、日本が穀物の輸入を必要としているからです。
ACAと全農の関係は人が変わっても変わることなく、長い年月に渡って続いてきました。今日このお祝いの席には、長年に渡ってこの協定を支えてきた人もいますが、この関係を引き継いでいく若い世代も参加しています。
この取引は協同組合間で生産者と需要者がお互いに努力して原料の供給に取り組めば何が達成できるかを示してくれています。協同組合の精神は文化と言葉の壁を超えることができることの証明です。
この最初の50年で築き上げた友好関係に感謝するとともに、この取り組みを始めたみなさんと、この場に参加されていないすべての関係者のみなさんに心から感謝します。
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