【JA全農神出専務に聞く・全農改革】日本農業のために事業を改革(下) 2016年12月20日
スピード感をもって課題を解決
聞き手:石田正昭龍谷大学農学部教授
◆シンプルで筋肉質な事業に
――それを実行するためには、地域農協の理解が必要ですね。
5年先、10年先を考えて理解していただくことだと思います。
「魅力増す...」は、当然、しっかりやるのですが、購買事業のスタイルを抜本的にどう変えるのか、全農がリードしてその仕組みを作らなければいけないと考えています。29年度からの事業計画では、その方向性をだせればと思っています。
――全農だけではなく経済連も含めてですか。
全農が構造改革すれば、経済連もどうするかという話に当然なると思います。経済連ともこの課題を十分議論し、広域化による双方の機能統合や合理化・効率化の検討などをすすめていく必要があると思います。そのことで、スリムでシンプルな購買事業にしていく必要があります。スリムというとすぐに人員削減を連想しますが、そうではなく、今のJAグループの仕事のやり方には無駄もあるので、その無駄をそぎ落としてシンプルでかつ筋肉質な購買事業に変革することです。
これは全農の生き残りのためではないんです。農協組合員はもとより、すべての農業者の人たちにどういうサービス提供ができるかを考え、もっとも機能を発揮する形をつくっていこうということです。
農産物の販売事業も一緒です。本当にロットを確保して通年供給でき、輸入農産物と対抗するためには、産地がバラバラではできません。農産物の輸出においても同様です。
――買取販売といいますが、モノを右から左に流すだけなら予約相対でいいわけで、買取販売というなら加工部門がはいらなければ意味がありません。そういう機能を高めるのですか...。
間違いなく業務用・加工用需要は増えます。そうなると、必要になるカットしたり小分けしたりする一次加工施設を県域に設置して、隣接県と一緒に広域で利用することなどを積極的に展開していきます。業務・加工用であれば事前に値決めができているので、契約栽培・買取の仕組みは連動していきます。
米では回転寿司チェーン向けなどですでに、品種を決めて実行しています。米はいろいろな制度や仕組があり、価格もありますが、収穫から出荷までについてフレコン出荷できるようにして、労働の便利供与とかサービスとか、精算の早期化があります。
まず、生産者とJAが委託なのか買取がいいのか話し合ってもらう。そのうえで、JAに集まった米を全農が買取ったらいいのかどうか話し合う必要があります。場合によっては、時間がかかるけれど委託共計の方がいいというケースもあるので、何年かいろいろやってみることが大事です。
◆農業者が味方になる仕組みを
――これからの課題はタイムスケジュールも含めて、何だと考えていますか?
29年度からどういう仕組みをつくり、どのような発射台を用意するのか。そのたたき台を組織協議し理解を求める考えですが、どれだけスピード感をもってやれるのかが、最大の課題だと思っています。
今後はJAや農家組合員と議論を深めていきますが、私たちが農業者にアクセスするあるいは農業者から声をかけてもらう仕組みの充実が必要だと思っています。一つのアイディアですが、アンケートだけではなく、対面で話し合える場づくりが必要です。
いま、4Hクラブや全青協さらに日本農業法人協会の幹部の方々をメンバーとした資材事業研究会を立ち上げ、例えば肥料価格はこうやって決まっているとか、全農の事業や取り組みを説明し、理解してもらっていますが、今後は彼らの意見や要望も本会の事業に十分反映できるような仕組みづくりが必要です。
こうした取り組みを各県域にも広めていくことが大切です。つまりスピード感を持って課題解決に取組んでいくことと、上滑りな議論ではなくて、提案した事業方式に賛成してもらえるところから、実際に取り組んでいくことだと考えています。
――ありがとうございました。
◆インタビューを終えて:キーポイントは多段階制の解消
JA自らの意思で全農改革に取り組むことが重要だ。では、その時のキーポイントは何か。神出専務とのインタビューでは、組合員・利用者の立場に立った事業改革を進めるという観点から、多段階制の解消に取り組むことだと理解した。
とりわけ生産資材の購買は、全農・経済連・JAという多段階制のもとで手数料の上乗せ、アカウンタビリティ(説明責任)の低下が懸念される。できる限りショートカットで組合員・利用者にモノと情報を届けることが望ましい。このような仕組みをどう具体化するのか、異論も出るだろうが、JA・JAグループはスピード感をもって成案を得てほしいと思う。 (石田)
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