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組合員・地域とともに改革実践【座談会】2017年3月1日

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座談会挑戦!自己改革2017
「総合農協」の価値創造を
(出席者)
阿部雅良氏(JAみどりの代表理事専務)
高山拓郎氏(JA松本ハイランド代表理事専務理事)
馬場利彦氏(JA全中参事)

 昨年秋の農業競争力強化プログラム策定に向けた議論をふまえ、JAグループは「農業者の所得増大」、「農業生産の拡大」を最重点課題とした創造的自己改革を加速させることが求められている。現場での実践で重要なのが組合員とともに事業改革し事業を創りあげることだろう。総合農協としての役割を発揮して、組合員・地域住民から評価され支持される必要がある。改革実践に向け情勢認識と課題を共有するためJAトップ層に話し合ってもらった。

◆徹底的な話し合いを

阿部 雅良氏  (JAみどりの代表理事専務) 高山 拓郎氏  (JA松本ハイランド代表理事専務理事) 馬場 利彦氏  (JA全中参事) 馬場 第27回JA全国大会は平成27年に「創造的自己改革への挑戦」を決議しました。これは26年からの農協改革、農協法改正の議論をふまえたものです。
 改正農協法は28年4月に施行されましたが、最大の課題となったのが准組合員の利用規制問題です。改正農協法では5年間の事業利用の状況や農協改革の実施状況を調査のうえ規制を導入するかどうかを検討することになっています。
 つまり、この大会決議は准組合員利用規制問題を抱えたなかでの決議ということになります。政府はとくにJAが有利販売や生産資材の有利調達に取り組んで農家メリットを実現できていれば准組合員の利用で正組合員が阻害されていないと判断するとしており、言い換えれば、准組合員の利用規制の導入を阻止するには正組合員に対してJAがどう貢献するかということが背景にあります。
 したがって、大会決議は、その実践期間中に基本目標として掲げた「農業所得の増大」、「農業生産の拡大」、「地域の活性化」に貢献して、JAはなくてはならない存在だと言ってくれることをめざすということが基本認識にあります。
 そこで"創造的"とはどういうことかといえば、1つは組合員と一緒に創りあげるということだと思います。計画を作ってJAはこうしますと一方的に説明するのではなく、組合員とともに事業改革し、事業を創りあげていくということです。
 もう1つは他との連携です。他のJAや、産地リレーしていく全国のJA、あるいは取引先である量販店とのコラボなどです。そういう意味での外との連携のなかでの創造という意味を持っていると思います。
 そして最後は、総合農協としての価値を創造していくということだと思います。
 今回の大会決議の前提は組合員像が変化してきていることで、正組合員の2割で8割の生産額を占めるという状況になっています。もちろん多くは小規模農家など多様な担い手ですが、組合員が多様化しているという状況に合った事業方式を作っていくということが改革だろうということです。重点分野の一丁目一番地に担い手経営体のニーズに応える個別対応を挙げたのもそのためです。
 これを各JAには組合員との徹底的な話し合いに基づいて自己改革の工程表を策定してもらうことにしています。要は組合員との十分な話し合いのなかで課題と目標を共有して改革するということです。
 また組合員と、課題と目標を共有して、改革の取り組みを「見える化」する、JAがどういうことをやっているかを組合員にきちんと見せることも大事です。今日は、こうした創造的自己改革に現場ではどう取り組んでいるかお聞かせください。

◆所得増大へ独自支援

高山 拓郎 氏 高山 農業所得の増大と組合員との徹底した話し合い、それから多様な組合員に対するJAからのアクセスをどうしていくのか、3つの柱があると思っています。
 JA松本ハイランドの自己改革としては、いちばん大事なことは生産部会や青年部、集落などに対して農業所得の増大を見える化しなければいけないと考え28年から「農業元気づくり支援対策」をスタートさせました。1億7000万円ほどのJA独自の予算とさまざまなメニューを用意して、組合員に対して自分たちでやりたいことを選んでくださいと3年間支援していく事業です。
 具体的には生産資材や、苗木の助成、野菜栽培を拡大しようとする組合員への経営支援や農機具の助成などを行っています。1年目の支援は終わりましたが、野菜は面積が28ha増え、出荷量も前年比103%となりました。組合員からも評判が良く、これから成果が出てくるのがリンゴの高密植栽培やナシのジョイント栽培、あるいはモモの新品種への更新などです。
 一方、組合員との対話はいちばん悩みです。本当に3万2000人の組合員ととことん話し合って課題を詰めているのかと言われるとどうか。生産部会や青年部とは対話しており、これは重要なことですが、やはり基盤組織である農家組合、つまり集落で十分に対話ができているか、です。
 もちろん集落に対するいろいろな取り組みはここ10数年以上続けてきています。ただ、一生懸命やっても高齢化が進み、担い手に農地が集まっていき、その分、農地を貸した人はもう集落やJAのことは関係ないということになってしまう。だからそういう人たちとどう関係性をきちんと構築していくかが大事ですが、これは集落を通じてやるしかないです。
 その意味で集落活動というものを全国でもう一度討議してやり直さないと間に合わないかもしれないという危機感もあります。われわれのJAは比較的集落活動ができていると言われているけれども、そのわれわれでも危機感を持っているということです。

◆車座集会方式へ転換

 高山 いろいろな会議への出席率も低下しています。出席してもJAの役員が難しい話を長々するばかりで、それならもう出席しなくてもいいや、となってしまう。
 これはまずいということでわれわれのJAは一昨年から車座集会にしました。会議形式はやめませんかと提起して集落では車座集会にしています。格好よく言えば、集落のワークショップです。
 私は日本の農協の会議文化を変えなければいけないと思っています。アリバイ的な会議ばかりやっていますが、会議文化を変えれば会議の数も減る、時間も短くなる、中身は濃くなる、そうすると農協も変わると思い少しずつ変えてきました。
 本所での会議もワークショップ形式に変えたところ、組合員のみなさんはみんなにこにこして帰っていきました。自分がそこに参加して発言すれば自分が客体ではなくて主体になる。JAは組合員をお客様扱いをしていますが、お客には役割はありません。組合員だから役割があるわけです。組合員であるみなさんがやるんですよ、ということを言う人がいなければいけません。そんな難しいことではないと思います。

阿部 雅良 氏 阿部 JAみどりのでは人づくりを第一に考えています。一昨年から中堅管理職15~16名ほど、現場にいちばん近づく職員のスキルアップをしたいと考え半年間ほど経営論やマーケティングなどについての学習をしてきました。
 たとえば金融課の職員であれば地銀や郵便局に行っていろいろなもの見て来て、そのなかでJAの立ち位置をどう考えるかといった人材育成に力を入れています。そうしたJA内部の変革をしながら、新しい地域・組織・経営戦略をつくっています。
 その特徴は平等から公平へ、です。今、組合員には大規模農家からホビー農家までいろいろな人がいます。われわれのJAでは組合員をA、B、Cと類型に分けて対応するようにしています。たとえば、大規模農家には大規模農家のニーズがありますから、それに合った対応を営農指導員がするということです。
 先日も営農指導員の発表会を行いましたが、それには営農部の職員のほか、理事も全部集まって6つほどのテーマで発表してもらい、情報の共有化につとめました。
 情報の共有は非常に大事です。営農部のなかですら畜産、米穀、園芸、営農企画などの課ごとに縦割りです。そこで先日も強調したのは隣の課との壁を取り払ってどんどん話し合いをしようということです。
 集落座談会にいくといろいろな質問が出ますよね。私はJAマンというのは広く浅くでいいと思っています。深く答えなければならないときはその分野をよく知っている職員を派遣すればいい。要するにそのネットワークを職員が持っていればいいということです。
 担い手に対応する技術の普及も重要で、管内の水田は7000haありますが、そのうち400ha近くで直播栽培に挑戦する人も出てきています。こうした、コスト低減に向かっている担い手もいますが、これも現場に営農指導員が入って行って現場を変えていく力が出てきたということだと思っています。そういう意味で人づくりがいちばんだということです。
 いつも言っていることですが、JAグループも逆ピラミッドの組織であるべきです。今はやはり中央会、全農、共済連を含めて上意下達ですね。上からこうすべきだ、という話になる。
 たとえば単協が座談会をするときに中央会や全農、全共連の職員は来ませんが、国会議員は来て自分のやっていることをPRします。それを考えると農協組織は2段階制、3段階制への甘えがあるのではないか。
 現場に近づく組織にしようとするなら、逆ピラミッド制にして、もっと組合員目線で動いていくことが必要だと思います。現場を本当に知って全中や全農、全共連が変わっていかなければいけないのではないかと思います。
 そういう意味で職員一人ひとりの意識改革、そこを変えることが創造的自己改革だと私は思います。すべては人にかかっていると思います。

◆全農 もっと現場へ

 馬場 現場での実践から改革の重点を指摘いただきました。
 この改革の取り組みを進めるなかでJAグループは昨年9月に「魅力増す農業・農村の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」を打ち出しました。もともとTPP大筋合意を受けた関連政策大綱のなかで12項目の検討課題を昨年秋に取りまとめるという政府・与党の方針があり、そこでは生産資材価格の引き下げや流通・加工の業界構造の見直しなどが大きな課題とされました。
 こういう流れができあがっているなかで、われわれとしての基本スタンスをまず固め逆提案しようという思いも込めて、この提案を打ち出したわけです。ここではJAグループは総合事業をフル活用し1円でも多く生産者の手取りを確保し、1円でも安く良い資材を提供することを具体策も含めて提起しています。基本的考えは農業者の所得増大のため、営農指導を第一に強化し共同販売・共同購入を徹底するということを強調しました。これを現場ではどう見ていますか。

 高山 現場では農業資材を扱う業者からの売り込みもあって、まとめて買ってくれればこれだけ引き下げますというかたちで提示される。そうすると予約価格よりも安いということになって農協はどうするのか、という話にもなります。つまり、現場は業界再編など待っていられないわけです。
 懸念されるのは改革は必要ですが全農改革の動きと現場がさらされている動きがうまく噛み合うのかという点です。ただ、もちろん業界構造に問題があることはしっかり主張してもらう必要はあります。そこは発信してもらわないと、全農やJAが生産資材購買事業で儲けているというイメージだけになってしまう。

 阿部 まったく同感です。組合員は農協改革を進めているのだから、もう生産資材価格は安くなっているのだろうと思っています。JAとしてはそれに応えて地域のメーカーなどと動かなければなりません。そのときにやはり全農も現場に入ってきて、こうした動向を察知して対応し、全農が生産資材費をこのように引き下げていきますということを見せていかなければならないと思います。 目標は同じなのだから全農とJAでせめぎ合いながらも生産資材費を引き下げる仕組みをもっとつくらなければならないと思います。それも創造的自己改革です。

◆持続可能性の追求を

馬場 利彦 氏 馬場 一方で昨年秋は規制改革推進会議から全農改革にとどまらず、信用事業譲渡などJAの総合事業解体という本音も改めて出してきました。これは自主・自立の協同組合理念に反すると押し返しましたが、今後も政府等はこれを主張し続けると思われます。
 したがって、われわれは自己改革を徹底しながら総合農協として、その意義と役割と取り組みを組合員はもちろん国民に広く知らしめていかなければならないと思います。 とくに信用事業兼営の意義を改めて明確にし、農業所得増大のためにも兼営は必要だということを正組合員、准組合員に理解してもらうことが重要な取り組みになってきます。たとえば、JAの剰余金の一部は農業振興に活用しますと宣言するなどです。総合農協が組合員の暮らしを守る、そのためには地域も守るという意義を改めて明確にしながら、改革に取り組もうではないかということです。

 高山 総合農協でなければ地域農業も地域も成り立たないということだと思います。しかし、何から手をつけていけばいいか、現場で分かっているのかが問題です。
 一般論としてはやはり経営的にきちんとしたJAでなければなりません。持続可能な組織であることを組合員にはもちろん、地域にも社会全体に対しても存在感を持って示さなければいけません。
 つまり、われわれに突きつけられていることは、お前たちJAは大丈夫なのか、ということなのです。それはたとえば、公認会計士監査でなければだめだということにも表れていて、それに対する準備ができているかです。
 その意味でも営農経済事業をしっかり変えていかなければなりません。なかには拠点施設やガソリンスタンドなどの廃止や統合ということも組合員に提案していかなければならないこともあるかもしれません。しかし、JAの経営が改善すれば、これだけ地域農業振興支援に回すことができる、などと訴えていくことも必要でしょう。理念だけでJAはこうあるべきだ、という話ばかりしていては前に進まない。数字でしっかり示して評価を得るということです。

◆准組合員も巻き込め

 阿部 今回の金融、共済の分離論は基本的に郵政民営化の話と同じです。つまり、米国商工会議所などが要望しているように政治的な問題であって、そこは徹底的に反対し組合員にどんどん明確にして運動につなげていくべきです。
 総合JAの金融・共済事業は地域の経済を支えて地方創生にも貢献しています。ここを分離すれば地方創生にはならない。准組合員も農協を支えているのに利用規制すれば逆行する。総合農協が伸びていくことが地方創生にもつながります。

 馬場 食料・農業・農村基本法では農業者と農業者団体の責務として基本理念の実現に努めるものとすると書いてあります。その基本理念のひとつが農村振興です。それを果たせるのは総合農協です。組合員と国民を味方にして地方創生も農村振興も総合農協の役割だともっと発信していくべきでしょう。

 阿部 私が主張しているのはTLCです。チーム・フォア・ローカル・コーディネーターです。これは地域をつくる人材です。例えば、鹿児島県鹿屋市串良町の柳谷集落の取り組みです。リーダーがいて地域をつくっていますが原点は地域の農林業です。
 これを農協でやってしまえばいい。TLCを農協が作る。この地域づくりはワークショップです。地域を元気にするためにどうするかどんどん意見を出してそれを紙に書いていく。これに准組合員を巻き込んでやれば絶対に准組合員利用規制にはならない。運動のなかに入っているわけですから。

 高山 地域は家族がいなければ成り立ちません。逆にいえば農業は家族で成り立たせるものです。家族農業がとても大事で、それがあるから初めて地域がある。地域があるから地域社会全体が生き生きとしてくるわけで、それが国家を形成するのだと思います。ところが、それを欠落させた議論ばかりです。われわれサイドももっとそうした情報発信に努めなければなりません。
 まったく農協のことを知らない准組合員もいるわけですから、農協を認知して利用し、そして参加して参画するという取り組みもしていかなければなりません。販売、購買事業を改革して評価されることが大事なことに変わりありませんが、やはり農村社会のなかで何が大事なのかということを農協が語っていかなければなりません。そこは阿部専務が言われたように人づくりだと思います。職員もそうですが組合員のリーダーをどうつくっていくか。組合員が動き回る仕組みをどうつくるか。協同組合は思いです。思いを持った人をつくらければなりません。

 馬場 今回の改革では組合員と一緒に考えるということが大事で、そのためには役職員が総合農協の意義を自分の言葉で語らなければなりません。いずれにしても、なくてはならない存在だということを組合員から評価してもらうことがもっとも重要だということだと思います。ありがとうございました。
※高山拓郎氏の「高」の字は正式には異体字です。
(写真)高山 拓郎 氏、阿部 雅良 氏、馬場 利彦 氏

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