【クローズアップ・地域集落文産農場】新たな挑戦始まる 大分大山町農協2020年3月28日
大分県の大分大山町農協は3月24日、「地域集落文産農場」の竣工式を行った。
竣工式であいさつする矢羽田正豪組合長
この日、大山町中間地区で開催された竣工式には、広瀬勝貞大分県知事、原田啓介日田市長、河野哲郎大分県西部振興局長のほか行政関係者や地元住民らが出席した。新型コロナウイルス感染防止への配慮から規模を大幅に縮小したものの約50人が新規事業の開始を祝った。
矢羽田正豪組合長は、「今後は大山町内のそれぞれの集落にキノコ施設や食品加工場と連携した食品工房などの設置を推進していき、暮らしの豊かさを作り上げていきたい」とあいさつした。
また、広瀬大分県知事は「少子高齢化が進むなか、ものづくりと文化が一緒になった場所を農協が提供し、すばらしい事業展開に感服している。今後も益々発展して行ってほしい」と期待を込め祝意を述べた。
高設栽培でクレソンを栽培するハウスの内部
右から順に矢羽田組合長、広瀬勝貞大分県知事、河野哲郎大分県西部振興局長、原田啓介日田市長
今回竣工した文産農場には、ビニールハウス5棟があり、クレソンの高設栽培を行うほか、バジル、からし菜などの育苗ハウスもある。また、ハウスに隣接している木造平屋建ての休憩談話室(50平方m)では、余暇を楽しむ場として地域住民に活用してもらうことができる。
「文産農場」という名称は、「産業と文化が共に補完し支え合って発展することを願って」名付けられた。
この「地域集落文産農場」構想は、昨年の6月に矢羽田組合長が、毎月農協のWebサイトで発信している「組合長エッセイ」(令和元年6月号)の中で以下のように具体的に構想を明らかにしている。
「これから、もっともっと豊かで暮らしやすい農業・農村を興し発展させていくためには、新しい技術や資金、人材が必要です。私たちは従来の農協事業(金融・共済・購買・販売)を内需事業と位置付けここからは利益を得ず、今までとは異なる外需事業(食品加工・菌茸類栽培・直売所・農家レストラン・外商・里山公園等)で外貨収入を得て、農家組合員の所得の向上と生活基盤の安定へと推進していきます」。そしてその一つの方法として、「各地域集落にビニールハウス(約500坪)、農協本工場と連携した食品加工房、菌茸類栽培施設等を農協で建設します。そこは生産現場であり、働く人の休憩談話施設も併設してコミュニティ文化育成の場ともします。高齢者の方々でそこで働くことを希望すれば農協の契約職員として採用し給与をお支払いします。高齢者の方は年金プラス給料で安心して暮らせる老後の生活が保障されます」。
さらに翌7月号の「組合長エッセイ」では、「ビニールハウス内では働く人の軽労働、快適労働をはかり高床の栽培施設施設として、そこではスウィートバジリコ、ミント、チャービル、シャンサイなどのハーブ類やクレソン、トマト、木の花(このはな)ガルテン野菜などを栽培します。食品加工工房では農協の食品加工場から委託された加工や独自の梅干漬やジャム、菓子などの製造加工を行います。菌茸類の栽培施設ではエノキ、しめじ、マッシュルーム、キクラゲなど、きのこ類を栽培します。そしてそれらの施設は農業の生産現場であると共に、農村文化を育て享受し、また余暇を楽しむことができるように働く人の休憩談話施設も併設して、コミュニティ文化育成の場ともなります。(中略)無理な作業はせずに高齢者の体力に合わせた作業をしていただきます。そうなれば農家高齢者の方々も、給与プラス年金で安心して暮らせる老後の生活が保障されます」と、より具体的な構想を語っている。そして最後に、「夢が必要です。夢や希望がなければ意欲は湧きません。農協という組織を鍛え、人を育て、モノづくりの心を育て、子や孫の時代に豊かな農村を引き継いでいきましょう」と呼びかけている。
昭和36(1961)年に大山で「梅栗運動」が開始され、「田んぼに梅を植えましょう。畑に栗を植えましょう」との呼びかけが始まって60年近くになる。急峻な山に囲まれ、農家1戸当たりの耕作面積は、段々畑や棚田を20か所も30か所も合わせて、ようやく40アール。貧しさから一日も早く抜け出したいと、「農家・組合員が心と力をひとつにして『働き・学び・愛し合う』というNPCの思想理念のもとに物と心の豊かさを求め、常に『チョット無理かな』という実力以上のところに背伸びしながら挑戦を続けてきた」(「組合長エッセイ」令和2年2月号)。
今、大分大山町農協では、そうした"伝統"とともに、さらに新たな挑戦(背伸び)が始まった。
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