生分解性マルチ普及、段ボール規格集約進む JA全農耕種資材部 中澤秀樹次長に聞く-JA全農2020年10月29日
JA全農耕種資材部は肥料、農薬、JAグリーン、園芸資材、袋資材、段ボール資材、農業機械の7つのユニットで構成される。その中で園芸資材、袋資材、段ボール資材の3事業を担う中澤秀樹次長に、今年度重点実施策の進捗(しんちょく)状況と今後の取り組みについて聞いた。
JA全農耕種資材部 中澤秀樹次長
―園芸資材事業の今年度の重点実施策についてお話ください。
園芸資材事業では、生産基盤の維持拡大と労働力支援を重点実施策に掲げ、施設園芸の環境変化に対応した資材の安定供給、低コスト化、技術提案に取り組んでいます。
具体的には、農ポリマルチを一定規格で取りまとめ購入を行い、需要結集と計画購買による購買力の強化に努めています。需要結集マルチは3万本を目標とし、9月末の上期受注実績は約3万6000本となり、すでに今年度の目標を達成しています。
また、JA全農が開発した全農式トロ箱養液栽培システム「うぃずOne」の提案による生産拡大を図り、生産者の所得向上を目指しています。2013(平成25)年から取り扱いを開始した「うぃずOne」は栽培管理が容易になる発砲スチロール箱の栽培槽を用いた養液栽培システムです。育苗施設の空き期間や遊休ハウスなどの有効活用ができ、土壌病害虫対策や農業法人の年間雇用対策など、多岐に及ぶ目的で導入されています。これまで、栽培マニュアルの作成やJAと連携した研修会で普及を進め、累計導入実績は220カ所、約1300aとなっています。
全農式トロ箱養液栽培システム「うぃずOne」
また、来春には、既存の施設園芸・土耕栽培向けの潅水システム「うぃずOneソイル(養液土耕栽培)」の本格販売を予定しています。
生分解性マルチの普及拡大も進めています。生分解性マルチは使用後に土壌に鋤き込むことで自然に分解するため、使用済みプラスチック(廃プラスチック)が発生せず、地球の環境保全に貢献しています。また、収穫後のマルチ回収作業が不要なため、生産者の労力低減にもつながります。生分解性マルチの普及率は9%程度ですが、JA全農としては、ポリエチレンマルチからの転換を加速させるため、全農マークを付けた農業用生分解性マルチフィルム「きえ太郎Z」(サンテーラ社製、全8規格・無孔品のみ)のサンプル無償提供を全国300カ所を目標に実施しており、現在100カ所への提供を終えています。近年、廃プラスチックによる環境危害が問題視されている中で、「きえ太郎Z」は天然物系を主原料とした自然にやさしい農業用生分解性マルチで、最終的に水と二酸化炭素に分解されます。
JA全農としては、今後さらに生分解性マルチの普及を加速させていきたいと考えています。
展張直後の生分解性マルチと栽培終了後
また、これまでに環境への配慮とともに製品のサポートの充実も図ってきました。JA全農を通じてパイプハウスメーカーが施行・販売したパイプハウスについて、引渡後3年間を補償する「系統パイプハウス補償制度」を2010(平成22)年に始めたほか、2013(平成25)年からは、JAマーク品フィルムを対象に、購入後1年間の災害補償が受けられるフィルムの安心制度「まもるくん」を提案しています。
―段ボール資材ではどのような取り組みを進めていますか。
段ボール箱の規格集約による箱価格の引き下げの取り組みは、パレットサイズを基準とした全国標準規格段ボール箱への集約として、箱が変わってもスペーシングがしやすいタマネギ、サトイモ、ピーマンの3つを先行品目として進めました。令和元年度数量実績は317万1000ケースで、計画数量310万ケースを達成しました。規格数についても目標とした2016(平成28)年11月比で30%削減しました。直近のタマネギ、サトイモ、ピーマンの切替数量実績は今年9月末で178万1000ケースとなっています。
また、先行3品目に加え、2018(平成30)年度より一部地域のニンジン用から追加品目の取り組みを始め、現在は新たにニンジン、バレイショを加えた5品目で段ボール箱規格集約を進めています。追加2品目の今年9月末時点の取扱実績は380万9000ケースとなっています。追加2品目の現在の規格削減率は20.3%で先行3品目と同様に30%の削減を目標としています。
また、新適正包装提案活動による過剰包装の見直しでは、主にAKライナー180gのスペックを170gとする原紙構成の変更を進めています。このほか、ショートフラップ化や通気孔の廃止、低コスト原紙の利用拡大に取り組んでいます。
フレキシブルコンテナの取扱拡大では、安全な米麦用フレキシブルコンテナを生産・流通現場に導入するため、2014(平成26)年に営農・技術センターにフレキシブルコンテナの試験機を導入し、品質管理の徹底に取り組んでいます。これらの取り組みに加え、コンテナの供給だけでなく、現場で安全に使ってもらうためのマニュアルや標準規格の作成にも力を入れています。
また、フレキシブルコンテナについては全農が海外から直接輸入し、生産・流通現場への導入を進めています。
営農・技術センターに導入されたフレキシブルコンテナの試験機
―国産農畜産物の販売拡大支援に向けた取り組みはいかがでしょうか。
関係部署と連携して生産法人に対する生産から販売までのトータルサポートを推進しています。具体的には、NaPA(national paprika association、国産パプリカ協議会)の事務局をわれわれ耕種資材部が担当しており、茨城県や静岡県など、国内で大規模にパプリカを生産している生産者の約半数がNaPAの会合に参加しています。これまで生産者とは、栽培から出荷、販売に向けてこの4年間連携を深めてきました。今年は全農内部の園芸部や営業開発部と連携し、加工用で出荷する大玉規格のパプリカ栽培にチャレンジし始めました。このように耕種資材部では関係部署と連携し、NaPAを中心とした国産農畜産物の販売拡大支援に向けた取り組みを通じて、生産法人に対する生産から販売までのトータルサポートを継続していきます。
今後の物流変化に対応した包装形態、流通機器の検討では、レンタルパレットやプラスチック製通いコンテナ、鉄製コンテナの流通に向けたシステム機器や開発にも力を入れています。今上期は通いコンテナシステム改良によるレンタルパレット取り扱いスキームを検討しており、今後はこれらのスキーム構築に向けた試験を実施していきます。
また、JA農産物直売所の支援では、JAの店舗前で行われる産直フェアやイベントなどで活用できる段ボールの展示什器「マルシェキット」を段ボールメーカーのレンゴー(株)と共同開発しました。
「マルシェキット」は軽量で丈夫な上、組み立てや片付けが簡易で持ち運びにも優れているため、農産物のPRや即売などで広く活用され、現在約800台を販売しています。JA全農では、「マルシェキット」を通じて近年増加しているJAや生産者による農産物イベントの開催を支援していきます。
段ボールの展示什器「マルシェキット」を活用した店舗づくりの例
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