【クローズアップ:野菜産地 コロナ禍で苦戦】需要減で価格低迷、作付けに影響も2021年3月1日
コロナ禍による業務加工用野菜の需要が減少し、野菜の産地の不安が高まっている。もともと天候の影響で価格変動の大きい野菜だが、昨年の後半からキャベツ、ハクサイ、レタスなどの野菜価格は、下落傾向にあり、年明けも低迷が続いている。コロナ禍がさらに長引くと、春野菜の作付けにも影響が心配される。一方で、産地JAでは新たな需要開拓の取り組みを強めている。
東京都中央卸売市場の取引実績をみると、キャベツ、ハクサイ、レタスの秋冬ものは豊作気味で、昨年の秋から市況の低迷が続いている。東京市場の2020年の市況を見ると、東京都などで緊急事態宣言発令の4月以降、5、6月は入荷量が増えたこともあって市況は下がったが、8月には一時的に回復。秋になってキャベツ、ハクサイ、レタスとも入荷量が順調だったこともあって市況が大きく下落した。
その後、キャベツ、ハクサイはなべ物需要の時期にもかかわらず、年末になっても回復せしなかった。野菜の市況は入荷量に影響されるところが大きいが、秋以降も市況回復がみられなかったのは、コロナ禍による飲食業の営業自粛が続いたことによるところが大きいとみることができる。
年明け後も全般に低迷が続いており、2月の東京市場ではハクサイが、主力の茨城産で1ケース(15キロ・中値)300円前後と、前年同期に比べて半値ほどになっている。同じく東京市場で千葉産の寒キャベツは1ケース(10キロ・中値)で500~600円。ほぼ前年同期並みだが、昨年から続く市況低迷で販売高は前年を下回っている。
東京都を除き、2月一杯で緊急事態は解除になったが、3月になると春野菜の出荷が始まるが市況が回復するかどうかは不透明だ。産地で「30年近く、契約出荷を続けているが、コロナ禍は野菜の販売・流通にとって大きな変化の時だと感じる。とにかく今は先が読めない」(JAちばみどり販売部)という声が聞かれる。
コロナ禍の収束が見えないと、これからの作付けの見通しが難しくなる。主力の産地の多くは量販店や加工業者などとの契約出荷が多いが、「外食や加工需要の見通しが立たないと、契約量が決められず、作付面積が決められない」(JA常総ひかり園芸課)という実態にある。
全国トップの産地、出荷を待つ茨城県のハクサイ(八千代町で)
懸命の販促活動
全国的に需要が落ち込むなかで、静岡県のJAとぴあ浜松は昨年12月末の販売高で、前年比100.2%を達成した。販売高の大きい秋冬野菜の価格が、コロナ禍の影響で低迷し、厳しい情勢のなか、スーパーや仲卸など、既存の取引先に取引量を増やしてもらったり、新しい取引先を開拓したりして、量販店向けは、巣ごもり需要もあって、前年比130%を超えた。同JAは「コロナ禍で見つけた新たな需要を逃がすことなく、今後も契約を増やしていきたい」(特販課)という。
一方、インターネット販売サイトの「JAタウン」は順調だ。今年度は12月末で前年対比10倍まで売り上げを伸ばした。また同JAはいち早くウェブ商談を導入。商談中に畑や集荷場と中継。この機能を生かしてウェブ上で現地視察も行っている。
契約農家の畑を巡回してキャベツの生育を確認(JAとぴあ浜松提供)
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