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【クローズアップ:全農事業計画】基盤支援と販売強化を加速 来春は節目の創立50年2021年4月12日

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JA全農は2021年度事業計画で生産基盤支援と販売力強化を一段と加速する。来春には全農創立50周年と"節目"を迎える中で、環境激変を踏まえ全力結集で〈挑戦〉と〈未来を創る〉をキーワードに、攻めの事業展開も実施していく。

5重点施策を着実に実践

21年度事業計画は19年度からの3カ年事業の仕上げに当たる。合言葉である〈全力結集で挑戦し、未来を創る〉のもとで掲げた下記の五つの重点施策の着実な実践を進める。

・生産基盤の確立→労働力支援や担い手育成

・食トップブランド→提携通じ商品開発、需要創造

・元気な地域社会→くらし支援強化

・海外戦略展開→マーケットイン型輸出事業の確立

・地域JA支援→経済事業強化と手取り最大の水平展開

全農が1年前からの新型コロナウイルス禍に伴う農業現場と消費行動の変化としてとらえるのが、労働力不足、内食化、eコマース、宅配ニーズの拡大、衛生意識の高まりだ。

全農21年度事業計画

先の5重点と絡め、〈一丁目一番地〉は生産基盤の確立。地域農業生産が活性化しなければ、〈農〉起点の事業は成り立たない。

そこで、具体的な対応を加速している。農業労働力支援のブロック別広域協議会の立ち上げだ。九州、中四国、東北とブロック単位で動き出した。

4月に入り、全農は大手旅行会社・JTBと農業労働力支援に関する連携協定を結んだ。JTBが農作業受託事業を行い、全農、JAが農業者のニーズを取りまとめる仕組み。異業種であるJTBの宿泊・観光施設や大学など幅広いネットワークを生かす。

キーワードは〈提携〉

先のJTBもそうだが、今後の事業展開の大きなキーワードはアライアンス、連携だ。全農の持つ、産地力、農畜産物の集出荷力と、異業種の知恵、機能を生かし、補完しながら、国産農畜産物の販売、付加価値づくりに生かす手法を探る取り組みだ。

アライアンスは特に、食のトップブランドとしての地位確立への役割が大きい。「全農リポート2020」で、商品開発を担うMD(マーチャンダイジング)部会を通じて、多様な業界との連携による販売先である「出口」の見える国産農畜産物の付加価値づくり、商品化を着々と進めている仕組みを図解入りで説明した。

また、同レポートでは「アライアンス」の四つのパターンを、大手外食チェーン、総合商社、コンビニとの資本業提携、食品メーカーからの子会社株式取得などで具体的に挙げた。

アライアンスでは2021年、大手製粉・日清製粉との案件が大きい。業務提携の具体策を詰めていくが、国産小麦の安定的な需要確保と生産拡大につながる動きで、水田農業の確立にも結び付く。

園芸など施設取得250億円

21年度は施設取得に250億円を充てる。19年度実績対比で約8割増となる。生産振興、販売力強化、物流合理化に向け米穀農産、園芸関連の広域集出荷施設を整備。生産者手取り確保へ園芸関連の青果物パッケージセンターなどを計画している。

一方で外部出資計画は今のところ4億円。生産基盤強化へ外部出資や輸出拡大に向けた子会社への増資などを想定した。

冷食強化への戦略拠点整備

コロナ禍で顕在化した消費者ニーズをとらえ、国産農畜産物の販売拡大にどう結び付けていくか。首都圏など大消費地向けの販売拠点作りを加速する。いわば全農の今後を占う事業戦略拠点の位置づけだ。

具体的には冷凍、小分け機能などを備える物流・加工施設の整備を挙げた。「巣ごもり需要」に照準を合わせ、冷凍青果物の製造や実需者への共同配送機能を持つ大消費地販売に向けた事業拠点の整備を急ぐ。冷食は需要が堅調な半面、冷凍青果物は輸入品が多かった。それを国産に切り替えれば安定的な需要につながる。

コロナ禍で需要が伸びる無菌米飯や米加工品の商品開発や販売拡大にも力を入れる。米過剰が深刻で、需要拡大が急務の中での対応でもある。

有望なドラッグストア

MD部会などを通じ他企業連携の商品開発は20年度見込みが51商品、21年度は新規60商品とさらに拡大。国産農畜産物原料にこだわった商品提供のラインナップ充実を進め、販売先や消費者から選ばれる商品作りを充実する。

今後の販売手法としてeコマース、さらに有望視されるのがドラッグストアだ。かつてのドラッグストアは安売りのイメージが先行したが、現在は経営安定を目指し品揃え重視へ転じている。むしろ、集客の呼び水として、食品や青果物などを充実したいと考えているドラッグストアも増えてきた。その場合、全農との連携も選択肢の柱となる。店舗数も多くコンビニ代替の販売力を備える。21年度事業計画でも、ドラッグストアやeコマース事業へのパック肉の販売拡大を挙げた。

全農21年度事業計画

ファミマ効果どう生かす

大手コンビニ・ファミリーマートとの連携をどう強化していくのか。全農の山崎周二理事長はファミマとの連携は「様々な波及効果と可能性を持つ」と期待を示す。

4月以降、ファミマと全農の連携は具体的な形となって表れる。国産農畜産物の販路拡大はもちろんだが、先の全農MD部会を通じた新商品の提供や店舗づくり、地域特産物などローカル色のある商品展開へ期待が高まる。

いわば〈ファミマ効果〉を、重点施策の食のトップブランド構築、生産基盤強化にも波及させていく。

新たな課題SDGsとESG

持続可能な農業、地域づくりは全農の事業展開でも大きな命題だ。農業での国連の持続可能な開発目標SDGs対応も問われる。そこで全農は、各事業施策とSDGsの17の目標との関連を整理し今後、具体的な対応を進めていく方針だ。

例えば生産では、環境に優しい土地づくりの実践など環境保全型農業の推進、生分解性マルチなど環境配慮の生産資材の普及など。販売・消費では耕畜連携による地域循環農業、食品ロス対策、輸送負荷対応。地域の視点では、農福連携、移動購買車導入など地域での生活インフラ維持、再生可能エネルギーの活用・普及、食農教育、子ども食堂への食材提供など。

既にこれまで行ってきたものが大半だが、SDGsの世界的潮流、菅政権の脱炭素社会構築、農水省みどりの食料システム戦略展開に伴い、対応の加速が問われる。特に農薬、肥料など生産資材の削減、有機農業の拡大などは、これまでの農法そのものの見直しの可能性もある。

ESGつまり環境(エンブロイメント)・社会(ソーシャル)・統治(ガバメント)を表わす英三文字は、企業存続のキーワードになりつつある。銀行融資基準や企業の格付けなども左右する時代だ。全農も一層のSDGs、ESG対応が課題となる。

「次の50年」も見据え

全農の広報誌「JA全農ウィークリー」4月5日号は21年度事業計画を特集した。冒頭、山崎理事長は「環境変化を乗り越え、未来を創造するために『なくてはならない全農』として挑戦続ける」と決意を述べた。

この中で、来年・22年3月の全農創立50年にも触れた。全農は1972年4月に購買事業を担う全購連、販売事業の全販連が合併して誕生した。その後、第2ステージとして約20年前に経済連との統合連合の組成を経て現在に至る。

来年は全農誕生半世紀の一つの"節目"と22年度からの新中期計画もスタートする。21年度事業計画の着実な実施、全農改革の加速化は「次の50年」を見据えた位置づけでもある。

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